カレンダー

  • «
  • 2004.11/
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • »

記事一覧

小さな恋のメロディ

42874ef0.jpg小さな恋のメロディ 1971年 カラー 106分

■監督:ワリス・フセイン
■原作/脚本:アラン・パーカー    
■音楽:ビージーズ、CSN&Y
■出演:マーク・レスター/トレーシー・ハイド/ジャック・ワイルド   

ようやくDVDが発売される。ある年代の者にとっては特別な感慨のある映画だが、実はヒットしたのは日本だけ。英国本国や米国では大きな話題にはならなかった。DVDの発売が今頃になったのも英米でDVD化がなされていなかったからだろう。いい歳をしたオトコがこの映画について語るのは今でも少々気恥ずかしい気もするが、実は私の場合、映画より先に当時ラジオで頻繁に流されていたタイトル曲「メロディ・フェア(ビージーズ)」が気に入り、それが目的で初回のテレビ放映を観たら、音楽以上にトレーシー・ハイドにすっかり夢中になってしまったという恥ずかしい過去がある。ビデオの無い時代だ。2度目のテレビ放映の時はカセットテープに音を録り「蝋燭の光でも撮る」ヤシカ・エレクトロ35で画面を撮影してたほどだからかなりのイカレ様だった。メロディのバレエシーンを射止めたテレビ再撮写真の出来が秀逸で、同級生のために何枚も焼き増ししたことなども今となっては懐かしい。ローティーンの恋愛を映画にすることは当時まだ珍しく、同年代の少年少女にとっておもいきり羨ましいストーリーだったことや、ブリテッシュロックの流れをくむビージーズ(オーストラリアだけど)の音楽が映像と溶け合っていたことなど、ハマった理由は他にもあった。なぜこの映画が日本でこんなにヒットしたのだろうと考えると、やはり70年代前半の日本の社会状況ってのもあったのかなと思う。71年の公開だがその頃英米ではもっと近未来的で過激な映画や音楽がもてはやされていた。それからするとこの映画は音楽も60年代後半風でやや古臭い。英米でヒットしなかったのもまあうなずける。ところがその頃の日本はといえば高度経済成長が一段落し、ブルジョワ階級だけでなくようやく国民全体が衣食住以外の贅沢に関心が向き始めた時代だった。よく言われることだが、日本にはビートルズ世代なんてのは存在しない。ビートルズが来日し大騒ぎになってた頃、彼らに夢中になってたのは時代に敏感な一握りの若者たちで、大多数の若者たちは「グループサウンズは不良である」ってな感じで年輩者共々、黄色い歓声を上げる少女たちを馬鹿にしていた。実際、60年代の中頃はまだ集団就職の時代なのだ。そんなものに現を抜かしてはいられない若者も多かったのだと思う。ところが70年を過ぎると風向きが変わってくる。シングル盤しか買えなかった人々がLPレコードを買うようになり、エレキを持ってフォークをやってる若者を不良という人はいなくなった。親はマイカーを持つようになり、子供部屋にはラジオだけでなく、テレビやカセットテープレコーダー、ときにステレオセットまでが置かれるようになった。その部屋にしっくりきたのが、ビートルズのポスターと赤ベスト、青ベスト。レコードや関連グッズの売り上げで見れば日本のビートルズブームはビートルズの解散と共に始まったと言ってもいい。物質的な豊かさが頂点に到達し、ようやっと米英の贅沢で、ある種モラトリアム的な若者文化を日本人も受け入れられる態勢になったのだ。だから、英米ではやや時代遅れとされた映画が日本で大ヒットした。そんな気がする。淡い初恋の映画に日本経済云々ってのも変な話だが...。