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昭和は遠くなりにけり

この夏、ようやくDVDをコ※ー出来る環境を整えた。以降、借りたレンタルソフトはゆうに200枚を超えた。最初のうちは古い(5~60年代の)洋画を観ていたのだが、最近は同時期の邦画にハマッている。私が映画を見る目的はおおきく分けて二つ。まずは女優、綺麗なおねえさんにうっとりする至福のひととき。もうひとつはタイムマシン効果、映画を見ている時だけ、昔に戻った気分になれるのが面白い。映画の出来は一応気にはなるが、綺麗な女優が出ていて昔の日本がたくさん映っていれば、最後までそれが良くって観てしまう。正直そういう観方をすることが多い。例えば木下恵介監督の「風花」には昭和33年の長野市がふんだんに写しこまれている。小坂家や雄大な飯綱山、千曲川にかかる長い木橋(関崎橋)やその周辺の桑畑、自分の幼少期の微かな記憶が甦る。同監督の「喜びも悲しみも幾年月」は燈台守夫婦を描いた作品で全編海ばかりの映画だが唯一妻の里帰り先として内陸の長野が登場する。生まれた子供のお宮参りのシーンは西尾張部の八幡神社だ。もちろん若宮の信号の北側にいまでもある。現在は周囲は家だらけで神社も塀で囲まれているが、映画に映るそこは鳥居と神社と大きな木と未舗装の道路以外何もない。そこにボンネットバスがフレームイン。悶絶ものだ。この映画に登場する女優は高峰秀子。演技は完璧。木下組は長野ロケの際、藤屋旅館を定宿としていたそうだが、昭和35年、「笛吹川」のロケで長野に来ていた際に安保反対統一行動日(6月4日)となり、木下恵介、高峰秀子、田村高広ら20人ほどが県庁前の集会に「安保に反対する映画演劇人の会」として飛び入り参加。その後、権堂あたりまでデモの先頭を歩いたり、ビラ配りなどをして長野の人々を感激させたという逸話もある。国産初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」も浅間山麓が舞台、動く草軽軽便鉄道も映っている。そのくらい木下監督は信州を愛してくれた。木下恵介監督は数年前に他界したが、高峰秀子は健在だ。50歳で女優業は引退したものの、その後は優れたエッセイストとして活躍している。この人の文章は本当に面白い。ズケスケと他人のことを書いているのだが、まったく嫌味がない。読めば読むほど80歳のおばあさんの世界に引き込まれてしまう。さて、60年代の信州が映った映画を他にもいくつか紹介しよう。上田でロケをした映画はかなり多いが、戦前のロケや戦後でも「けんかえれじい」のように時代設定が戦中戦前のものが多い。普通に古い町並みが残っていたからだろう。生の60年代日本が映っている映画といえば、志賀高原を舞台にした石原裕次郎、北原三枝の「白銀城の対決」が完璧。今はもうない上林の山ノ内シャンツェや完成したばかりのロープウェーも登場。県スキー連盟の許可を得た上で実際のジャンプ長野県選手権で出場選手に撮影用のウェアを着させて映画撮影したら、他の大会関係者からアマチュア規定に触れると異論が出てしまい、結局その選手はその直後にあった国体への出場を辞退することになってしまったなどいう今では考えられないような事件も起きた。同じ日活の「若草物語」にも冬の熊の湯や丸池周辺が登場する。芦川いづみ、浅丘ルリ子、吉永小百合、和泉雅子が四姉妹という豪華な60年代版トレンディードラマ。浅丘ルリ子、吉永小百合や浜田光夫が志賀高原にスキーに来るという設定で、熊の湯ゲレンデなどで怪しい滑りを披露している。吉永小百合の著書によるとその後もプライヴェートで志賀高原でスキーに来ることが多かったようだ。映画ではないが「七曲署」って警察署名は石原裕次郎が骨折したゲレンデに由来しているとの話もある。日活系の俳優さんと志賀高原とのつながりは深い。吉永小百合といえば青春映画「美しい暦」がオール松本ロケだってことも忘れてはならない。松本城やその裏の松本神社で吉永小百合は芦川いづみ扮する先生と語らう。松本城の西側にあった遊園地の巨大な回転遊具も背景に映ってる。乗ったことがある人は懐かしいだろう。主人公の家は女鳥羽川沿いの旧商工会議所にセットを組んだと思われる質屋、通う高校は松商学園。映画を観ながらロケ地がどこなのか判定するのに骨が折れるが、それを探すのが存外に面白い。蛇足だが、個人的には吉永小百合よりも先生役の芦川いづみに萌え~だったりもする。高峰秀子80歳、芦川いづみ69歳、吉永小百合59歳・・・。チト愕然とした。昭和は遠くなりにけり。みなさん御健在のうちに昔の映画を楽しみたいと、最近かなり焦っている。