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ただちに健康に影響はない話

fukushima東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故が深刻だ。地震と同時に自動停止したまでは良かったが、想定以上の規模の津波を受け、炉心や使用済核燃料を冷却するシステムが破壊されてしまった。使用後の核燃料は核反応は止まっているものの熱をおび放射性物質を発散させている。それを流水になんと3年間漬けて温度が100度C以下になったところでガラス固化し保管している。期間は数万年。原子力発電所が「トイレのないマンション」といわれる所以だ。東京消防庁や自衛隊が放水し、さらなる水素爆発を防いでいるが、放水したからといって温度が100度C以下になるわけではない。放射性物資の拡散を抑えている間に恒久的な冷却システムを構築する必要がある。地震から10日ほどを経ち既に放射性物質は各地に広がっている。メディアはレントゲン検査の数値を出しては問題のないレベルと報じているが、それは外部被曝の対応としてはたぶん正しい。避難指示の範囲も適切だ。官房長官の「ただちに健康に影響はない」という言葉も嘘ではない。嘘ではないが実は決して真実ではない。なぜ「ただちに」を付けるのか。北関東産のホウレンソウから規制値の10倍を超える放射線量を検出したという情報もあるが、これについても厚生労働省は「ただちに健康に影響を与えるというものではない」と云っている。律儀に「ただちに」を付けてるところが何とも怖い。なぜなのか。そのココロは内部被曝だ。内部被曝とは体内に放射性物質が入ること。放射線も電波と同じ広義でいうところの電磁波。電磁波は距離の二乗に比例して強くなるというのを物理の時間に学習しただろう。放射能も同じ。マイクロシーベルトと云っているうちは大丈夫と思っている人も多いと思うが、そういう微弱な放射線を出す放射性物質が体内、たとえば肺に入り、ずっと粘膜に張り付いたとしたらどうなる。距離は限りなくゼロに近い。放射線は距離の二乗に比例して強くなる。近いということは微量でも強いと考えてよい。だたし、放射性物質は拡散すると薄まる。福島原発から離れてばそれだけ安全であるのだが、その濃度は一定ではない。風向きにより濃度が薄い場所、高い場所が発生する。濃度が高い場所で放射性物質を吸い込んでしまった場合が不幸だ。ヨウ素の半減期は8日間ほど、セシウムは30年。今回は検出されていないがプルトニウムの半減期は2万年、ウランは24億年だ。放射線の強さはレントゲン検査程度というが、5年も10年もレントゲン検査の機械に抱きついている人はいない。レントゲン検査程度の放射線を微弱とはいえ5年も10年も特定の粘膜に照射し続けたとしたら、細胞はどうなる。生物の細胞も物質だ。原子核があってその周りを電子が回っている。そこに隣接して別の物質、ヨウ素やセシウムからに強力な放射線が入り込めば、人間の細胞を形成する物質の原子構造が崩壊する可能性が高い。タールのような化学物質が貼りつくことでも同様のことが起きると言われているが、こうしたしくみが癌の発生原因ではないかと推測されているのだ。もちろん、放射性物質を浴びたら必ずそうなるわけでもない。いつどこで何がどこに張り付いていつ癌化したかなんて追跡調査も病理学的に困難だ。ただし、かつて大気圏内核実験が行なわれていた場所周辺の5~10年後の癌の発生率が他の地域に比べて圧倒的に多いという歴史的なデータは残っている。そのデータを信じるかは人それぞれ。断定的なことは言えない。さらに深刻なのは放射性物資は、他の有害化学物質と同じように食物連鎖による濃縮も行なわれること。ホウレンソウを直接食べた程度では特に問題はないと思われるが、野生に生きる動物の肉から放射線を検出されたとしたら深刻度はやや高い。人間は食物連鎖の頂点に君臨していることを忘れてはならない。我が家から福島第一原子力発電所までは300Km弱。「ただちに健康に影響はない」程度の放射線は検出されている。生活があるからこの場を離れるのは難しい。杉花粉の季節、鼻の粘膜や目に花粉が付着し花粉症の私は痒くて仕方がない日々が続いている。同様に放射性物質が付着していなければよいのだが。

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