記事一覧

新しい朝は来るか?

BBBBase Ball Bearのアルバム「新呼吸」を聴いている。ふだんは聴かないような若いバンドの新作だ。数年前にシンコーミュージックが出版したプログレシッシブロックのムックにこのバンドのベーシスト関根史織さんのインタビューが掲載されていた。24歳(当時)の彼女が、ツアーで廻る地方都市のレコード店でマイナーなプログレ作品を漁っているという内容にとても驚き、どのような音楽をバンドでやってるのかと、YouTube で確認することにした。当然というか想像通りプログレではなかったのだが、それはとても小気味のよい青春ギターロックだった。XTCあるいはモノクロームセット、ヘアカット100あたりのようなギターポップのビートをもっと強くした音。30年前に英国のニューウェイブと云われた音楽は、パフュームのようなテクノポップで今に聴くこともできるが、ギターロックとなると昨今の日本ではメジャーなバンドで聴くことはあまりなかったように思う。ソニックユースのようなオルタネティブっぽい音が、今でもインディーズシーンの定番として残ってはいるものの、だいたいそういうロックを聴く若者そのものが減っている。メジャーになる道は険しい。いわゆるファンの人々の Base Ball Bear の聴き方ってのも、曲を書いている小出祐介くんの描く青春世界に浸ってるみたいなものだ。それじゃまるで吉田拓郎じゃねえか! いや、そういうものなのかと。湯浅将平くんのギターが小出くん歌の邪魔をしてると嘆く人がいるに至っては、こりゃ最近のロックバンドも大変なんだなあと思ってしまう。私は湯浅くんのギターはとても良いと思う。運指が早いとか正確だとかということではなくて、過去のいろいろなロックを聴き、アルバム毎にアレンジのパターンを増やしてきてるのがよくわかるからだ。邪道と馬鹿にする人もいるのだろうが、私はプログレファンなので、エフェクター(ギターシンセかな?)を使いギターで単音シンセやハモンドオルガンのような音を出してるのを聴くのはとても楽しい。東海大学工学部中退だそうだからギズモやロックマンみたいなのを極めるのもどうか。カッティングに拘る小出くんの隣で、エフェクターの展示会のようなギター弾きまくるってのも面白いではないか。ドラムの堀之内大介くん、この人は年を追うごとに上手になっている。ポリスのスチュワートコープランドみたいなこともやっいてギターバンドのドラマーにしておくのは勿体ない。将来が楽しみ。最新アルバム「新呼吸」は、ビートが強靭になり、音色が多彩になっている。過去のアルバムと異なり大人の鑑賞にも耐えるものになっているように思う。古い言葉で恐縮だがコンセプトアルバムにしてあるのもロック的で良い。そろそろ青春を歌うもの辛くなる歳だ。XTCやポリスをリアルタイムで聴いた世代を納得させられれば所得が高くCDを買ってくれる新しいファンが増えるだろう。最後に関根史織さん。Base Ball Bear にプログレは期待しないが、ポリスやポリス期のラッシュの線はありだ。ライブで観衆も踊れる。ところでプログレおやじはみな関根さんが好きだと思う。軽薄短小が喜ばれた80年代にプログレおたくはキモイというレッテルを貼られてしまったが、もともとプログレは70年代のコンテンポラリーな音楽だ。ちょっと偏差値の高い高校にいくと必ずキースエマーソンやグレックレイクの写真を学生鞄の中に忍ばせている女子高生がいたりしたものなのだ。おやじ達は関根さんにその面影を見ているのではないか。なんて書くとエロ目線と勘違いされてしまうが、そうではなくそれは女子高生も聴くほどにメジャーなポップだったことを再確認したいという願望のようなものなのだと思う。それともうひとつ、アタマの固い堅物オヤジには理解できないかも知れないが、実は Base Ball Bear の「C」から「新呼吸」までの進化は実はプログレ。ささやかだが70年代的進歩観を体現してる。それが理解できると音楽は愉しい。

トラックバック一覧

コメント一覧