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ポストプロダクション革命

f1e324d9.jpg誰も読まないようなこのブログを私が続けているのは、情報のギブ&テイクというネットマナーの基本を愚直に守りたいからだったりする。日頃ネットから様々な情報を得て勉強させてもらっている。貰うだけは申し訳ないので、一応は自分も情報を発信しておくということ。役に立つかどうかは利用する人次第。まあ、世の中いろんな人がいるので、ネット検索で私のブログを引っ掛けて役に立ったと思う人も数百万人に一人位はいるのではないか。インターネットとはそういうもの。今回の投稿についていえば、たぶんビデオ映像を作成したい人にとってはかなり役に立つ情報だ。関心のある人は最後まで読んだ方がいい。この10年、ビデオ編集はパソコンのスペックの向上と共に飛躍的な進化を遂げている。テレビ番組で見らるような派手なビデオエフェクト(例えば映像が球体になって飛んでいったり、本をめくるように画面が変わったりする効果)は、一昔前まではテレビ局やビデオ編集専門のスタジオに設置された総額で億を超えるような映像機器を揃えないと実現できなかった。それが今では手持ちノートパソコンでも出来るようになっている(笑)。もちろんそれなりの学習は必要になるが、家電品販売店に並ぶAVCHD方式のビデオカメラとノートパソコンと編集ソフトがあれば、30万円以内でスーパーインポース(字幕)や特殊効果を駆使したハイビジョン作品を制作することが可能だ。最近発売された編集ソフトに面白いものがあった。トムソン・カノープスのエディウス。なぜ面白いかは後述するとして、まずはパソコンで行う編集ソフトの変遷を書いてみたい。少しパソコンに詳しい人ならば、映像編集ソフトとしてアドビのプレミアの名前を知っていることだろう。ウィンドウズ95や98がOSだった頃から販売されていて、イラストを描いたり、静止画をデザインしたり、動画に効果を加えたりソフトでもアドビが圧倒的なシェアを誇っていたこともあり、主に芸術系の映像制作者から絶大な支持を得ていた。その頃の初心者向けのソフトといえばユーリードのビデオスタジオ。ビデオキャプチャボードの添付ソフトとなっていることが多く、使い方もプレミアに比べると格段に判りやすく簡単で、ホームビデオの編集によく使われた。プロの世界で注目されていたのは米国メディア100社のメディア100。映像編集に特化したハードとのセット売りで、プロ用として実用になる最初の製品だった。2000年以降は大手放送機器メーカーがノンリニア編集システム構築に本腰を入れ始める。パナソニックはDVCプロという放送用のカメラシステムと連動したノンリニア編集機、ソニーはXpriというノンリニア編集システムを発表する。しかし、パナソニックについてはDVCプロを導入していない制作現場への導入は進まず、ソニーに関してはソニー信者の多いテレビ局への一定の導入は進んだものの、価格の割には融通の効かない操作性に疑問点が多く、逆にアンチソニーを増やしてしまったとの噂もある。そんな中、使い易いと評価を高めていたのが、アビッド。専用機を使い、実際に編集する者にとって痒いところに手が届く操作性に、現在でも評価するプロが多い。一方、プレミアで映像編集を始めた業界関係者に評価されているのがアップルのファイナルカットプロ。マックOS特有の操作の親しみ易さから非技術系の現場での人気が高い。そうした現況の中、近年急速にシェアを伸ばしてきたのがトムソンカノープスだ。元来、ビデオキャプチャボードで人気を博したパソコンの周辺機器メーカーだが、テレビのデジタル化に伴うコピー制限の影響を受け、そのビジネスモデルが崩壊してしまった。その結果、放送機器を扱うフランスの電気メーカー、トムソンに買収され、現在はプロ向け製品にシフトした事業展開をしている。エディウスという編集ソフトもタイムライン編集の容易さで一定の評価を得ていたが、初期のヴァージョンはプロ用として使うにはエフェクトが少なく、GUIのデザインからして情けない程度のものだったが、ヴァージョン4.6で格段の進歩を遂げる。劣化の極めて少ないコーデックをなんと自社開発、各社の放送用ビデオデッキとの連携調整を行い、ハイビジョン編集にも完全対応、弱点だったエフェクトの数の少なさをサードパーティのプラグインを利用することで克服し、デザインや操作性もプロ用として十分に使えるレヴェルにまで引き上げた。それで価格はたったの7万円。最初に30万円でと書いたが、実はソニーやパナソニックの10万円程のAVCHDビデオカメラ+7万円のエディウス5+10万円程度のデュアルコア&4MBメモリ搭載のノートパソコンによる合計が30万円ってのを想定してのこと。映像はファイルで渡すからキャプチャボードなど不要だ。編集済の作品はDVDに焼く。あるいはちょっと投資してブレーレイディスクに焼けばよい。そしてさらに、この長い文章をここまで読んでくれた方のために、ここでとっておきのTipsを披露する。もし、あなたの会社にカノープスのHDWSやREXCEEDといった業務用のシステムが導入されていたら、そのプロジェクトファイル(フォルダ)をUSB経由で携帯用HDDにコピーし、それを前述した自分の30万円セットのパソコンに入ったエディウスで開いてみるといい。「キャプチャーしたボードが無いので出力できないぞ!」と叱られるものの、コピーしたプロジェクトを自分のパソコンで自由に編集できてしまうことに驚くはずだ。HD-CAMで撮影された映像もレンダリング時間が増えるもののさほど大きなストレスを感じることなく編集可能だ。編集済のプロジェクトは再び会社のシステムに戻し、HD-CAMテープに出力すれば、何事も無かったかのように仕事が終わるはず。さらにもっと驚いてしまうのはエディウスNeoという2万8千円のコンシューマ向けの編集ソフトでも同じプロジェクトファイルが使えたこと。もちろん、プロに搭載されネオにない機能は反映されないが、元々あった編集内容は変更しなければそのまま引き継がれ元に戻るのだ。どうやら機能のあるなしはあってもプロジェクトファイルの仕様自体は同じらしい。エラーの問題(RAID対応がない)もあれば、動作保障や保守の問題もあるので、メーカーは一切了解していない使い方なのだが、最高のクオリティを追求するレヴェルで無ければ問題なく運用出来てしまう。互換で問題が起きたらプロジェクトでのやりとりを諦め、キャプチャファイルそのものをコピーして再度編集する方法もある。また、どうしても編集済を持ち出しだければカノープスHQコーデックの最高画質でファイルに書き出して持ち出す分には見て判るほどの劣化は起きない。コピーする外付けのHDDは容量が500GBもあれば十分。ハイビジョンでおよそ1分1GB。最大で500分だが実際に使うのはその半分程度にしておいた方が快適。それでも250分。外付けのHDDをそのまま編集用に使いたければ、EXPRSSカード搭載のノートパソコンにeSATA接続で繋ぐ必要がある。HDD(7千円程度)、eSATA対応HDDケース(4千円程度)、eSATAインタフェースEXPRESSカード(4千円程度のものもある)、これら全部揃えても2万円は超えない。これも入れて30万円ポッキリだ。(笑) この話、放送業界の人々が聞いたらきっと驚愕することだろう。いったんフルスペックのシステムで映像をキャプチャしデータ化すれば、放送用レヴェルのハイビジョン編集作業が、10万円以下のノートパソコンで出来てしまうのだ。会社の事務机の上で、自宅のコタツの上で、出先のビジネスホテルで、移動の新幹線の中でとりあえず出来てしまう。マックな人はプレミアやファイナルカットプロを志向し、ノンリニアオタクはアビッドにこだわり、お金持ちのテレビ局はきっとソニーのXpriNSをドカンと購入する中、エディウスのポジションはやや微妙だった。しかし、この未公認運用法は、そんな些細なこだわりを吹き飛ばすどころか、ある分野のプロ用放送機器市場や放送技術者の業務を壊滅に追い込むほどの威力があるような気がしてならない。かつては高額な機材を駆使してきたテレビ業界だが、不況で収支が赤字だとか、下請け会社の従業員がワーキングプア化しているとの情報もある。安価で効果的なシステムが見つかれば雪崩をうつようにそちらに流れることだろう。遠い昔、家庭用のテレビ録画機として売られていた放送機器としては不完全なUマチックVTRが、メーカーの想定を超えていつの間にか電気ジャーナリズム最大の武器になってしまった時のように。