(長文・ネタバレ注意)
神奈「主が来てから幾日になるかの。そろそろこの社殿の様子も分かってきたであろう。装束だけはこのように尤もらしいが、実際は牢獄と変わらぬ」
柳也「翼人と言えば、神の使いだろう。飢饉や疫病に臨んでは、霊力をもって加持祈祷を成し、神々と直接語らうことの出来る存在だ。もう少し良い暮らしをしていると思ったが」
- 翼人である神奈備命の社殿に入った柳也。神奈は姫としての身なりと待遇を受けてはいたものの、社殿の中から出ることが出来ない状態におかれている様子。
- …あれ? 前回柳也とぶつかった時は社殿の外でしたが、外に出ることを許される時があったんですか? しばしば住まいを移しているということなので、移動の途中、ということなのかもしれないけど。(追記:庭、という解釈らしい)
- 翼人は神の使いとして加持祈祷を成し、神と直接語らうことの出来る存在。その割には、行動の自由を奪ってしうというのは何故?
柳也「いや、良い形をしておったから」
神奈「お主は良い形をしておったら、一々触って確かめるのか。この益体無しが」
- 神奈の翼は普段はしまい隠しているとのこと。それで背中の様子を探っているのかと思ったら、柳也は神奈のお尻触っていたんですか! このスケベ。そんな柳也の背後に音もなく現れたのは女官の裏葉。喜久子さんですか。^^;;;
- 彼女の言葉によれば、神奈は柳也のことがお気に入りということらしい。神奈は無礼者に礼儀を教えているだけ、と言いますが、赤くなっているその表情は誤魔化せません。今回、この神奈の頬を赤く染める表情が何度も出て可愛らしいったら。こういう萌え描写、AIRでは少ないですね。そう言えば。それと、神奈の心が揺れ動く度になっているように思える鈴の音が印象的です。
裏葉「神奈様、これを。先程酒殿のの奥の蔵でかよう物を見いだしました。もう夏も盛りというのに、氷とは不思議なこと。ご報告せねばと思い、こうして持参致しました」
- …ともっともらしいことを言いながら、氷を持って来た裏葉。要するに、氷室から氷を盗んで来たということで。尤も、裏葉だけで無く神奈もそのことは知っていて、グルということらしい。閉じ込められていれば、そんな悪戯もしたくなりますよね。
裏葉「こうして三人で氷を頂いておりますと」
柳也「寒空に蓄えもなく、軒下の雪で飢えを凌ぐ、死にかけた家族のようだな」
裏葉「大層楽しげな例えでございますね」
- 今回を通じて柳也の例え、必ずダークな方向に行きますね。^^;;;; 家族とはどういうものだと神奈が尋ねると、裏葉は、ぴと、と神奈にくっつく。暑いのに張り付くで無いと怒られると、いじける裏葉。いじけたのを気にして近う寄れというと、再び密着。再びいじける…。くっつくことを拒絶されたのがそれだけ悲しいのかと思ったら、今度は柳也までくっついて来たのには爆笑。神奈の反応を見て、からかいがいがあると思って二人してまぁ。
裏葉「家族とは、身を寄せ合って暮らすもの」
- 神奈が何時からこんな暮らしをしているのか尋ねた柳也。裏葉によれば、神奈がこれ程明るくなったのは、柳也が来てからということらしい。とてもそうは見えないのですが、翼人である神奈に間近に接しようとする者が居なかったという事なんでしょうか。神奈は物心ついた時には閉じ込められ、話し相手も無く住処も転々と移っていたということらしい。
同僚「翼人を忌み嫌う者、恐れる者も多いと聞きます。早う普通の勤めるに戻りたいものです」
- 夜。警護の番をしていた柳也。交代で来た同僚は、神奈備に近づけば神罰が下るのではと恐れている様子。直接話したことが無いと、そんなものか。
神奈「昔の夢だ。丁度このような暗闇に、幼き日の余が座っている。何も見えぬ。この身があるのかさえ判らぬ。恐ろしくて寂しくて、それでも泣く訳には行かぬ。そのような日々だ。一つだけ、暖かい光をみることがある。人の影だ。だが追いかけようとすると消えてしまう。一度だけではなく、幾度も同じような夢を見る。柳也殿には、誰か判るか?」
柳也「お前の母君だろう」
神奈「余は母のことなど覚えておらぬぞ」
柳也「夢って言うのは、どこかで見た景色を思い出しているんだ。だから覚えてはいなくても見ることはある」
神奈「我が身が覚えているのか。ならば、悪い夢という訳では無いの」
- 満月の夜。月を見ている神奈に声をかけた柳也。過去編でもヒロインは夢を見るんですね。尤も夢は変化せず、同じ夢が続いてるようなので、それで死んでしまうということは無いんでしょうけど。柳也の話を聞き、神奈は母に会いたいと願うようになります。
柳也「俺や裏葉と離れ離れになっても良いのかと聞いている」
神奈「先でも変わり者はおろう」
柳也「俺と裏葉は居ない」
神奈「うぬぼれるで無い! それ程余が弱く見えるか」
柳也「…」
神奈「お主がおらずとも、余は生きていける。これまでだってそうして一人で生きて来たのだ」
柳也「寂しかったんじゃ無いのか。母君にだって会いたいんじゃないのか」
神奈「望んでも会えぬものは、詮無いものと申しておるのだ」
柳也「お前の母君は、死んだのか」
神奈「死んでなどおらぬ。死んでなどおらぬは。母上は、必ずどこかで余のことを」
- ある日、神奈備命が五穀豊穣の願を唱えるために北の社に所を移すことが告げられる。柳也達はそれに同行せず、この地で開墾の指示に従ずることも告げられ、柳也の同僚達はほっとした様子を見せる。神奈は毎年この時期にはそのようなことがあると、気にもしない風に言う。神奈は柳也や裏葉と別れても大丈夫なふりをするが、実際にはやはり母にも会うことが出来ずに寂しい思いをしていて…。
裏葉「見ればお判りでしょう。旅支度でございます」
- 夜。裏葉に神奈のことで相談しようとした柳也。すると、裏葉は旅支度の最中。取り込み中でございます! との裏葉の叫び声を聞いて、てっきり着替えでもしているのかと。^^;;;; 裏葉は神奈が移されるまえにここから連れだそうとしていた。
柳也「聞いて良いか。何故それ程まで神奈を案ずる」
裏葉「同じ事を私も柳也様に聞きとうございます」
柳也「そうだな。強いて言うなら、あいつ程からかいがいのある相手は居ない」
裏葉「で、ございますよね」
- 何となく、夫婦同然という感じになって来ています。この二人は。劇場版AIRを見ると大分違う印象ですが。
- 夜。寝ていた神奈を起こした柳也。くせ者と勘違いしそうになった神奈の口を塞ぎ、柳也は母君に会いたくないかと尋ねる。「おはよう」と起こした時の柳也の顔、面白すぎ。あれでは誰しもくせ者と思いますよねぇ。
柳也「俺は役目柄、神奈備命の命令には絶対に逆らえぬ。だからお前が母君に会わせろと言えば、俺はそのために命をかける。主としての命を俺に与えるか?」
神奈「そなた、それで良いのか?」
柳也「選ぶのはお前だ」
神奈「う…。では、余はそなたに命ずる。母上の元まで余を案内せよ」
柳也「正八位下。左右衛門の大佐官柳也。神奈備命が命、違えぬ事を誓約致し候」
- このシーンでも神奈は頬を赤らめています。神奈は意を決して、柳也に母君の元まで案内するように命じます。
それに対して誓いを立てる柳也がそれまでの柳也とは別人の如く格好良いです。
神奈「今更ながら、思い切ったことをしでかしたものよの」
- 神奈を連れ社殿を抜け出した柳也、裏葉は雨の道を走る。未だ気付かれてはいないとは言え、事態が発覚するば大騒ぎ。先を急ごうとする柳也だが、裏葉が社殿が炎上していることに気付く。何が起こったのかは不明ながら、一刻も早くここを離れようとした柳也達。しかし、既に柳也達は何者かによって囲まれていた。
- 柳也達に襲いかかって来た追っ手を捕らえ、刀を捨てさせた柳也。追っ手は東者の侍だが、頭領に命じられたというばかりで誰の命で動いているのかは知らなかった。用済みとなった侍を蹴り倒した柳也。止めを刺そうしていると見た神奈はそれを止める。その隙に刀を手にした侍を峰打ちで気絶させた柳也。神奈は命を奪うつもりだったのかと問いつめ、平気で人を殺める者に守られとう無いと言う。そして。
神奈「余はお主に命ずる。余を主とする限り、今後一切の殺生を許さぬ。そう心得よ」
柳也「承知仕りました。…だが、一人も殺さずにこの先に切り抜けられると思うか?」
裏葉「柳也様でしたら、容易いように思えます」
- 神奈の気持ちは判るけれど、絶対にそのことで後悔するような気がする。
- 社殿での姫君としての衣装から、洗濯物を拝借して民草の着物に着替えた神奈達。
裏葉「神奈作ったらおかしいんですよ。着替えの間、似合いもせぬ衣装は龍也様に見せられぬ、などと仰って」
神奈「馬鹿! それは申すで無い!」
- もう、そんなことを気にされる程、柳也にべた惚れ状態となっていたんですか。裏葉にはその想いを打ち明けていたんですね。ただ、柳也の方はあまり気にしていない様子ですが。
- 川辺で干し飯を食べる神奈達。普段はもっと良い物を食べているのか、干し飯は美味しく無さそう。
裏葉「こうして三人で干し飯など食べおりますと、まるで…」
柳也「僻地に左遷され、悔し涙で飯をしめらせているどこぞの公家様みたいだな」
裏葉「大層風雅な例えでございますね」
- 柳也のたとえ話その2。この話、どこかで聞いた気がするので調べてみると、伊勢物語の一節かな?「乾飯の上に涙おとしてほとびにけり」…という一節があり、左遷では無く恋に破れ東国に行く最中の話みたいです。取りあえず、柳也はそれなりに教養のある人物らしい、ということで。
柳也「しかし、布で出来ているのは珍しいな」
裏葉「普通は石を使いますが、お子が怪我をせぬようにとの、心遣いでございましょう」
神奈「余にも出来るか?」
裏葉「少しばかり習えば、必ずお上手になりますとも」
- 着物の中に入っていたお手玉をしてみせる裏葉。今の物と同じ風に見えますが、当時は布で出来ているのは珍しくて、普通は石というものらしい。この辺り、原作でもきちんと調べていたということなのかな。お手玉にチャレンジする神奈…空高く、放り投げてしまいました。裏葉が色々と助言しますが、どうにも力任せに投げてしまうようです。こんな不器用な姫だったとは…。
- 一行の目的地は、神奈の母が囚われていると聞き及ぶ紀州の霊山。ああ、それで本作の舞台とされている場所は、和歌山県なのか。
- 追っ手を避けるため、山伝いに歩いて行く柳也達。でも、裏葉ですら知っているということは、神奈の追っ手もそこで待ち伏せしている…とは考えないんでしょうね。焼き魚を食べて熱がる神奈。御殿育ちだけにやはり、猫舌? そして一月が経過しても、お手玉が未だに上手く出来ない神奈。とことん、不器用です。
裏葉「このように山辺で炎を囲んでおりますと」
柳也「姫君を浚ったは良いが、あまりの世間知らず振りに、遣るんじゃなかったと後悔している、どこぞの色男みたいだな」
裏葉「大層野趣溢れる例えでございますね」
- これも元ネタが…と思ったら、自分達のことを言っているらしい。
- 村人達が炎を囲み踊っている祭りを目撃した神奈達。何故楽しそうなのだと言う神奈に、羽目を外せば浮き世の憂さも晴れると柳也。この言葉からすると、庶民の辛い暮らしぶりを判っているという感じですね。
柳也「ああして羽目を外せば、浮き世の憂さも晴れるってことさ」
裏葉「それだけではございません。皆、信じているのでございます。願いは必ず天に届くと」
- この祭りが何の祭りであるのか、作中では明言されていませんが、天に何か祈る祭りだったりするのかな? 裏葉の言葉を聞き、誰が天に届けるのかと言う神奈。
神奈「余は翼は持っておるが、空は飛べぬ。幼い頃より何度も試みた。天に届くどころか木の葉程も浮かぬ。益体無しの翼だ」
- 現在で「飛べない翼に、意味があるのでしょうか」と美凪が言ってましたね。そう言えば。彼女が翼人の話を知っていたかと定かではありませんが。
柳也「願いを心に思えばそれだけで良い。お前の願いはきっと叶う。そうだろ裏葉」
裏葉「…そうでございますとも!」
- そう言い、神奈を抱きしめる裏葉でした。
- 紀州の霊山にたどり着いた神奈達。裏葉は結界が張られていることに気付き、進みべき道を示す。まさか、裏葉にそんな能力があったなんて。
- 結界が張られているらしいしめ縄の下を潜り抜けると、神奈達の前に武者法師達が現れる。ここは女人禁制という法師達。女人禁制ってことは高野山?武者法師達と戦う柳也。三人を峰打ちで倒したものの、刀で袖を貫かれ、反撃しようとした所を神奈の以前の命、「今後一切の殺生を許さぬ」を守ったがために、背中を斬りつけられてしまいます。
僧兵「うぬら、何を企んでおる。八百比丘尼には、会わせまいぞ…」
- 深傷を負った柳也は翌日、洞窟の中で目覚める。傷の手当てはされており、既に結界を超えたため法師達も追っては来られない。そう言えば先の戦闘シーンで、法師達が結界を超えられたら追いかけられないと言ってましたっけ。どうして追いかけられないのかは判りませんが、そんな事言わなければ判らなかいのに余計なことを言っちゃいましたね。
神奈「余は、柳也殿に誰も殺めるなと申したが、今思えばあれは余の…」
柳也「俺は忠臣だからな。神奈の命であれば何でも守るぞ。例えば、お前が死ぬなと命じれば、俺は絶対死なない」
神奈「う…う…では、余はお主に命ずる。いや、これは命では無く、余の願いである。柳也殿、死なないで欲しい」
柳也「ああ。約束する」
- 柳也に出した命令の所為で怪我をしていた事を気にする神奈。そんな神奈を気遣い、今度は死なないと約束する柳也。ここで命令では無く願いだと言うのですが、何か嫌な予感。先の祭りのシーンで願えばきっと叶うと柳也が言っていて、ここで神奈が願ったけれど、結局その願いが叶わないような気がして。
- 固く扉に閉ざされた洞窟の前。裏葉は何かを感じるという。恐らく、ここに神奈の母が囚われているのだ。柳也が封印を破り扉を開くと、洞窟の奥には牢が作られていて、その中に八百比丘尼の姿が。
八百比丘尼「わらわを戦に駆り立てるなら、生きてここを出られぬと知りなさい」
- どうやら、八百比丘尼の力を戦に利用しようとした輩が居るらしい。従わなかったので、ここに閉じ込められたということかな。ただ、生きてここを出られぬという言葉からすると、簡単に殺すことも出来ない存在のようで。
柳也「私は神奈備命が随身、柳也という者です。恐れながら、神奈備命が母君と推察致しますが」
- 神奈は母の前に進み出て、裏葉が着物を脱がせます。その背中からは白い羽根が…。ああっ。光が邪魔です(それだけかい)。柳也が目を瞑ったのは見ないようにと感心したのですが、後でばっちり見ていますね。ガキの裸には興味が無いということでしょうか。
神奈「余の翼だ。羽ばたくことも飛ぶことも出来ぬが。もし、これと同じものを持っておられるなら」
- 神奈の翼を見た八百比丘尼。感動の親子の再会…と思ったら、八百比丘尼は神奈を連れて山を下るようにと柳也に言います。…と、気になるところで次回へと続きます。
八百比丘尼「わらわをどうするつもりですか」
裏葉「ここより出て頂きます。その後神奈様と末永く幸せに暮らして頂きます」
神奈「母上」
裏葉「どこか静かな土地に小さな庵を構えましょう」
神奈「夢は辛い夢ばかりではない。楽しかったぞ」
柳也「神奈! う…」
神奈「何故…何故に皆余だけを残して…」
- …どう聞いてもバッドエンドになるとしか思えません(泣)。