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特集・80年代ブリティッシュ・ネオ・プログレの軌跡

80年代の英国ネオ・プログレを年代順に追ってみた。

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【1981】

復活前夜
70年代前半にピークを迎えたプログレシッブ・ロック人気も、パンク、ニューウェイヴが 台頭するようになると、プレスから旧勢力のレッテルを貼られ、急速に衰退してしまった。 軽薄短小が喜ばれた時代に、重厚長大なプログレは苦戦どころか瀕死の状態に陥ってしまう。 メジャーなプログレバンドは次々に時流に合わせた軽量なサウンドに変貌、それ以外の バンドはメジャーレーヴェルから見放され、インディーズシーンで細々と活動を続けていくことになる。

LIVE AT THE TARGET ( TWELFTH NIGHT ) 1981
VICTIME ( GIZMO ) 1981


【1982】

Marillion の登場
パンクブームが去り、NWBHM(ヘヴィメタル再興)も一段落した80年代初頭、 時代の雰囲気が変化が見られるようになった。ニューウェイヴと呼ばれた その時代の主流の音楽の中にも、軽薄短小などとは云えない重厚かつ沈鬱な雰囲気を持つものが 登場し始め、プログレだけが暗くて重い音楽ではないという状況となると、 プログレを敵視するような論調もあまり見られなくなってきたのだ。  そして、1982年。遂にプログレ系の新人バンドのシングルがケラング誌のチャートの3位に 飛び込んでくる。それが"MARILLIION" の "MARKET SQUARE HEROES"だった 。 マリリオンの活躍は同傾向のバンドへの関心を呼び起こし、プログレの再興を願っていた人々や 一部メタルファンの支持をも獲得し、その手のバンドの一群がささやかなシーンを形成。 それを英国のプレスは「ネオ・プログレッシブ・ロック」あるいは「ポンプ・ロック」と呼び、 プログレシーンに再び注目が集まり始める。

MARKET SQUARE HEROES ( MARILLIION ) 1982
FACT AND FICTION ( TWELFTH NIGHT ) 1982
SEEING YOURSELF AS YOU REALLY ARE ( THIRD QUADRANT ) 1982
PARADISE MOVES ( AIR BRIDGE ) 1982


【1983】

プログレの復活(ポンプ5バンド)
ネオ・プログレ・シーンの中心になっていたのは、"MARILLION" "PALLAS" "IQ" "PENDRAGON" "TWELFTH NIGHIT" の5バンド。彼等が出演するマーキークラブはいつも満員だったらしい。 ほどなくこの5バンドは、かつてプログレの名門と呼ばれたレーヴェルからそれぞれアルバムデビュー。 そしてそれら5バンドの後に続いたのが、"SOLSTICE" "QUESAR" だった。

SCRIPT FOR A JESTER'S TEAR ( MARILLIION ) 1983
TARES FROM THE LUSH ATTIC ( IQ ) 1983
ARRIVE ALIVE ( PALLAS ) 1983
FIRE IN THE SKY ( QUASAR ) 1983
RED ( RED ) 1983
TENANTS OF THE LATIICE-WORK ( MAINFRAME ) 1983


【1984】

Pompとは?
この80年代のプログレリヴァイヴァルを、英国の一部メディアはポンプ・ロックと呼んだ。 Pomp とは「華麗、威風堂々」といった意味だが、「虚飾」という裏の意味も含んでいる。 「中身の無い、形だけのプログレの模倣」ということなのだろうか? 如何にも英国のプレスらしい 痛烈な皮肉が込められたネーミングだ。そんなこともあって、この時代のバンドが、 自らを「ポンプ」と名乗ることは、ほとんど無かったようだ。(^^;

FLY HIGH, FALL FAR ( PENDRAGON ) 1984
FUGAZI ( MARILLION ) 1984
LIVE AND LET LIVE( TWELFTH NIGHT ) 1984
ART AND ILLUSION ( TWELFTH NIGHT ) 1984
THE SENTINEL ( PALLAS ) 1984
JURNEY TO THE EAST ( CASTANARC ) 1984
CRAFT( CARFT ) 1984
SILENT DANCE ( SOLSTICE ) 1984
C'EST LA VIE ( HAZE ) 1984
GRATUITOUS FLASH ( ABEL GANZ ) 1984


【1985】

音楽的には未完成??(^^;
この時期のバンドは70年代のプログレと比べるとかなり軽量なサウンドであることは否めない。 産業ロックプログレと云われたボストンやカンサスの水準にも到底達してない・・・。それも事実だろう。(^^; しかし、当時の時代状況からすると、仮に彼らの音楽が本格的なプログレファンが納得するような重量級サウンドだったとしたら、 チャートを上昇したり、シーンが形成されるようなことはまずなかったのではないかと思う。 一般には「打ち込み系」のスカスカな音楽がカッコイイと思われていた時代だ。 私などはアルバム内容はともあれ、プログレ系の音がチャートインしただけでも嬉しかったような記憶がある。

MISPIACED CHILDHOOD ( MARILLION ) 1985
THE KNIGHTMMOVES ( PALLASS ) 1985
THE WAKE ( IQ ) 1985
THE JEWEL( PENDRAGON ) 1985
GULLIBLE'S TRAVELS( ABEL GANZ ) 1985
EAST-WEST ( MULTI STORY ) 1985
FIRE IN HARMONEY ( OMNIBUS ) 1985


【1986】

セールスが伸びず試行錯誤するサウンド
シーンの構築者であるマリリオンはバンドとしての人気も安定し、来日公演も行われるほどに なったが、続く4バンドのアルバムは思ったようにセールスが伸びず、 その試行錯誤が音楽に表れるようになる。重厚なプログレハードでデビューしたパラスは、 いつの間にかニューウェイブ風の軽快なサウンドに転身。 他のバンドもそれぞれ売らんかなのポップ路線に走り、逆にシーンは冷めてしまう。 メジャーレーヴェルに残れたのは、結局"MARILLION" だけだった。

THE BIG LAD IN THE WINDMILL ( IT BITES ) 1986
LIVING PROOF( IQ ) 1986
THE WEDGE ( PALLAS ) 1986
9:15 LIVE ( PENDRAGON ) 1986
X ( TWELFTH NIGHT ) 1986


【1987】

シーンの消滅
87年ぐらいになると、シーンはすっかり消滅し、"MARILLION" 以外のバンドは再び インディーズに戻ってしまった。そのような中、ヴァージン・レーヴェルから IT BITES が登場。 シーンは消滅したものの、これら二つのバンドはアルバムを出す毎に成長してくのだった。

CLUTHING AT STRAWS ( MARILLION ) 1987
NAMZAMO ( IQ ) 1987


【1988】

It Bites の登場
ネオ・プログレのブームは完全に消滅したものの、英国では、It Bites が注目を集めた。 テクニック的にはポンプ勢を上回り、プログレファン以外にもアピールする骨太な音楽は、 プログレの・・というより、往時のブリティシュロックを好む人々におおいに歓迎されたようだ。

ONCE AROUND THE WORLD ( IT BITES ) 1988
KOWTOW ( PENDRAGON ) 1988


【1989】

90年代の幕開け
80年代も後半になると、まったく新しい動きが始まる。 CDはレコードよりも低コストで再発が可能なため、各レコード会社がかつての プログレのマイナー盤を続々とCDで再発するようになったのだ。 また、インデーズレーヴェルにとってもCD化がコスト面で追い風となり、 世界各国にプログレインディーズのディストリビューターが発足、 プログレのインディーズCDが広く流通し始めたのだ。  先進国各国には大なり小なりインディーズ・レーヴェルが存在し、 やがてそれらのいくつは連携し、世界的なシンジケートを形成するようになる。 さらに90年代後半にはそれらの活動はインターネットを通じて誰もが把握できる状態にまで進化する。 一方、"DREAM THEATER" の登場により、ヘヴィメタルサイドからのメロディックロックへのアタックも始まり、 現在では、再発物も含め、個人ではすべてが聴ききれないほどのシンフォニック・ロックCDがリリースされるようになっている。

EAT ME IN ST.LUIS ( IT BITES ) 1989
ARE YOU SITTING COMFORTABLY? ( IQ ) 1989
THE LORELI ( QUASER ) 1989

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