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1982

Marillion の登場
パンクブームが去り、NWBHM(ヘヴィメタル再興)も一段落した80年代初頭、時代の雰囲気が変化が見られるようになった。ニューウェイヴと呼ばれたその時代の主流の音楽の中にも、軽薄短小などとは云えない重厚かつ沈鬱な雰囲気を持つものが登場し始め、プログレだけが暗くて重い音楽ではないという状況となると、プログレを敵視するような論調もあまり見られなくなってきたのだ。 そして、1982年。遂にプログレ系の新人バンドのシングルがケラング誌のチャートの3位に飛び込んでくる。それが"MARILLIION" の "MARKET SQUARE HEROES"だった 。マリリオンの活躍は同傾向のバンドへの関心を呼び起こし、プログレの再興を願っていた人々や一部メタルファンの支持をも獲得し、その手のバンドの一群がささやかなシーンを形成。それを英国のプレスは「ネオ・プログレッシブ・ロック」あるいは「ポンプ・ロック」と呼び、プログレシーンに再び注目が集まり始める。

MARKET SQUARE HEROES ( MARILLIION ) 1982

パンク・ニューウェイヴ全盛の時代を経て、プログレがほぼ死滅していた80年代初頭の英国で、 彗星の如く現れたバンドがマリリオンだった。自主制作カセット完売>レディングフェスティバル で大成功>EMIと契約>チャートイン。彼等は絵に描いたような成功を納めている。 "MARKET SQUARE HEROES" はマリリオン最初のシングル。いかにもチャートを狙った という感じのごく普通のポップソングなのだが、実はこの12吋シングル、 ポイントはB面に納められた17分40秒にも及ぶ大曲 "GRENDEL"にあったのだった。 ガブリエルのジェネシスが完全復活したようなこの曲に多くの人が驚いた。 往年のプログレと比べると演奏面でやや頼りない面もあるが、 ファンタジックな音楽に根強い人気のある英国では、時の流行に逆らう形で支持されたように思う。 そして、こういう音楽が久々にチャートインしたことで俄然元気が出てしまった人が、 あちらこちらにに現れてくることになる。


FACT AND FICTION ( TWELFTH NIGHT ) 1982

トゥウェルフス・ナイトは、70年代からギターとシンセが絡む独特な シンフォニック・ロックを自主制作していたが、この時期のトゥウェルフス・ナイトは 時流を考えたのか?ニュー・ウェイヴ・ライクなヴォーカリストGEOFF MANN が加わり、 かなり個性的な音楽を作っていた。その状況にマリリオンが大ブレイク。 プログレ風の音楽をやっている彼等のところにも陽があたり始め、 彼らが出演する日のマーキークラブはいつも満員の盛況となったそうだ。 そして MUSIC FOR NATIONS というメタル系のレーヴェルと契約し、 シーンの熱さが伝わるようなアルバムを何枚か発表したが、残念なことに 彼等の音源が日本で発売されることは無かった。 ところがなぜか、彼等のマーキーでのライヴを収録したビデオが1本、 日本の大メジャー会社ビクターから発売されている。 音源の発売がないのにビデオが出る。なんとも不思議なマーケティングだが、 これも熱心な少数派に支えられたシーン故の出来事だろう。 そこに写っている彼等はファッション的には若くて元気な普通のロックバンド。 しかし、演奏してる音楽は、個性的でキャッチーなヴォーカルに ハイテクニックなギタリスト、さらに薄っぺらとは云えキーボードが加わると・・・。 それは紛れもなくシンフォニック・ロックだったのだ。



SEEING YOURSELF AS YOU REALLY ARE ( THIRD QUADRANT ) 1982

ホームレコーディングによる自主制作盤。A面B面の表示もない。(^^;  音は劣悪でまるで隣の家のステレオの音を聴いているようだが、内容は 紛れもなくネオ・プログレ。アルバムは如何にもポンプらしいキャッチーな曲で始まり、 次第に混沌としてきてジェネシスをSF風にしたサウンドにブルージーなギターが 虚ろに響きながら展開していく。このアブナイ雰囲気がマニアには受けたのか あるいはSFマンガ風のジャケットがカッコ良かったからなのか、 英国ではレア盤扱いになっているそうだ。結局、彼等はオーバーシーンに浮上することなく 謎のまま消えていったのだが、10年後の1993年、イタリアの MELLOW が 突如、"LAYERD" という作品をデストリビュートする。 1988年頃制作された新しいマテリアルだが、かの自主制作盤の雰囲気そのままに THIRD QUADRANT が音が良くなって甦っておりこちらもなかなか良い。



PARADISE MOVES ( AIR BRIDGE ) 1982

正体不明。基本的にはギターバンド。2名のギタリストとベース、ドラムという 編成で、ギタリストがキーボードを兼ねている。スペイシーなギターや キーボードが入るが、決め所ではやっぱりブルースギター。 70年代の生き残りのような人達だ。(笑)  オーバーグラウンドではプログレが死滅していた時期だというのに 地下に潜ればこうゆうバンドがウヨウヨしてたところがやっぱり英国。 そういう素地があるから、マリリオンのブレイクと同時に二匹目のドジョウを 狙うバンドが次々に供給され、シーンが形成されたのだろう。


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