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1984

Pompとは?
この80年代のプログレリヴァイヴァルを、英国の一部メディアはポンプ・ロックと呼んだ。 Pomp とは「華麗、威風堂々」といった意味だが、「虚飾」という裏の意味も含んでいる。「中身の無い、形だけのプログレの模倣」ということなのだろうか? 如何にも英国のプレスらしい痛烈な皮肉が込められたネーミングだ。そんなこともあって、この時代のバンドが、自らを「ポンプ」と名乗ることは、ほとんど無かったようだ。(^^;


FLY HIGH, FALL FAR ( PENDRAGON ) 1984

キャメル、あるいは北欧のジャズロックを思わせるような透明感あるサウンドで録音された デモ・テープが好評を博したペンドラゴンは、いきなりEMI系列のレーヴェルから ミニアルバムでデビュー。ポンプが注目される中、思い切りハッタリを聴かせたタイトル曲が なかなか元気だ。90年代になって流麗なシンフォニックロックを演奏するようになり、 多くのプログレファンに注目されている。90年代のペンドラゴンから聴き始めた人が80年代の音を聴くと、 「なんだあ、このポップで軽薄な音は?」とビックリするようだが、 私はむしろこの古い時代のペンドラゴンの方が好きだ。理由はインディーズの「勢い」のようなものをを感じるから。 90年代の作品のような完成度とか緻密さはないが、荒削りながらも時代を 走っている生きた音って感じがする。実はそれがネオ・プログレの醍醐味なのだ。


FUGAZI ( MARILLION ) 1984

1stアルバムと基本的な志向は変わらないが、ドラムが元トレース、ダリル・ウェイ&ウルフの 大ベテラン Ian Mosley に変わり、リズムセクションが明らかに増強された。 今までのドラマーが可哀想に思えるくらい徹底的してパワフルでオカズの多い太鼓が入り、 人によっては眠くなりそうだった1stアルバムの耽美的な雰囲気と比べると サウンド自体はかなりアクティヴに変化している。ジャケット写真は1stアルバムと同様、 フィッシュ自身を思わせるような男が自室に横たわっている光景。 部屋に散乱するレコードは全作はピンク・フロイドだったが、今回はピーター・ハミルの フールズ・メイトとオーヴァー。プログレをリヴァイバルさせようとする意図がアリアリなのが 判ってとても面白い。


LIVE AND LET LIVE ( TWELFTH NIGHT ) 1984

個性的なヴォーカリスト、Geoff Mann の脱退コンサートの模様を収録したライブ。 最初の曲、The Ceiling Speaks はメチャ、カッコイイ。カッコだけでテクも 中身も弱いと非難されることの多いポンプだが、これだけカッコ良ければ、 私の場合は大満足。正にポンプ、威風堂々としている。 「そんじゃ、メタルでも聴けば?」と云われそうだが、 やっぱりシンフォニック・ロックとメタルでは違うのさ〜。(^^;  また、Fact and Fiction で聴かれる観客との掛け合いやコーラスも、 当時のライブハウスの熱い雰囲気が伝わってきてとても良い。  彼等は、Music for Nations というヘヴィメタル系のレーヴェルと契約を交わし、 音もこの時期からハードポップな方向に変化していく。


ART AND ILLUSION ( TWELFTH NIGHT ) 1984

同じ年にリリースされた、新ヴォーカリスト、Andy Sears による新作がこの作品。 曲がハードポップ的に判りやすくなり、いよいよアイドルバンドに転身か? という くらい親しみ易いロックだ。Andy Revell のトコロテンのようなギターも健在。 パンク、ニューウェイブを思わせるような強力なビートと、シンフォニックなキーボードが混在し、 哀愁をおびた歌が始まる・・・。King And Queens や First New Day は名曲かも? プログレの深い世界を探求されている皆さんには、あまりにミーハーな音楽なのかも 知れないが、みなぎる汗、血潮。正にプログレ甲子園。とても元気で良い。 こういうロックを聴いてしまうと、いろんな楽器を使ってオドロオドロシクやってる プログレだけを有り難がるのはどうかなあ〜と思ってしまう。


THE SENTINEL ( PALLAS ) 1984

ぷろぐれ明朗盤でも紹介しているパラスのメジャーデビュー作。 マリリオンのブレイクのお陰で、パラスもなんとEMIハーヴェストという プログレ界の超名門レーヴェルから、ELP、イエスなど数々のプログレの 名作に携わったエンジニアをプロデュサー、エディオフォードを迎えて デビューアルバムを作ることになってしまった。 もの凄いチカラの入れようだが、音の方もチカラが入っていて、 重厚で盛り上げ放題のプログレメタルサウンドに仕上げている。 気合いの入り過ぎで、アンサンブルの良さが音圧に圧倒されて しまっているところが、ちょっとプログレファンには辛いところだが、 メタルも聴くような人ならば平気だろう。 エディオフォードではなく、デヴィッド・ヘンツェルあたりにプロデュースさせたら どんな音になったかな〜と私個人は考えることもある。


JURNEY TO THE EAST ( CASTANARC ) 1984

ポンプブームの真最中の登場したオリエンタルな雰囲気を醸しだす謎の新人バンド。 いわゆるジェネシスクローンだが、他のポンプ勢と比べるとかなり本格的にプログレ風な出来だ。 時流に合わせたポンプタイプの曲もあるが、ブームに合わせて作ったとはいえ、 あくまでもプログレ愛好者向けに作っているなと思わせるシンフォニック・ロックだ。 この作品はポンプブームが終わった後もシンフォニックロックファンから注目を集め、 88年に全曲リミックス、追加曲1曲、曲順、ジャケット変更で再リリースされ、 さらに91年にCD化もされた。永らくこのアルバム以外の作品は無いと思われていたが、 89年に "Rude politics" というアルバムがRCAから出ていたことが判明。 他にも "Burent Offerring"('89) というカセットがある他、 つい最近になって "Little Gods"('98) というCDも発表している。


CRAFT( CARFT ) 1984

エニドの残党達が、ブームに乗じてリリースしたポンプ風エニド。何か勘違いしている。(^^;  音はマジでポンプ風エニド。やや軽く元気に闊歩するお手軽なエニド。 昨今は軽い物が好きな私自身はエニドより聴きやすいが、あまりにシーンに迎合的で 笑ってしまう。こんなパターンまで出て来てしまったということは、 ポンプムーヴメントは一般の音楽界に対してはささやか動きでしか無かったけれども、 シンフォニックな人々にとってはかなり大きな出来事だったのかも知れない??  70年代にBJHやエニドといったシンフォニックオーケストラがあったのだから、 リヴァイヴァルの中にもひとつくらいオーケストラなバンドがあってもいいか??


SILENT DANCE ( SOLSTICE ) 1984

SOLSTICE の1st。私が一番好きなバンドだ。ルネッサンス風の女性ヴォーカルが愛と平和 を唱いあげている。そしてヴァイオリンが入りカーブドエア化? ジェネシス風キーボード、 そして初期イエスのように跳ね回るリズムセクション。 本格的かつ良質なシンフォニックロックだ。 どことなく頼りない感じが残るポンプ勢の中で、ソルスティスのサウンドだけはとても力強い。 70年代初期のプログレバンドが持っていたようなリアリティのようなものすら感じられる。 80年代中頃のインディース作品ゆえ、プロダクションはやや荒削りだが、  唄心もあり、そんでもってイエスの3rdとかイット・バイツの2ndのように無駄の少ない音で 全体がビシっとタイトにキマッっているところが非凡というか凄い。 ルネッサンスの好きな方、これは聴かなきゃ損だよ〜。(^^)


C'EST LA VIE ( HAZE ) 1984

"C'EST LA VIE" と云っても、Greg Lake ではない。(笑) そういう曲を やっている訳でもない。Haze は Paul Chisnell( Dr. Perr. Vo.) Chis McMahon( Bass, Kyd.) Paul MaCmahon ( Vo. G ) の3人によるバンドで、 81年頃からカセットなどを発表している。ジェネシスクローンではなく、 そこはかとなくVDGGの影響を感じる。しかし、単音シンセがブヨヨ〜んと鳴って 重厚なキーボード群のその後をついてくるあたりは、70年代のフレンチプログレに よくあったのようなパターンかも? フランス語で歌ったらたぶんそのまんまになるような気が する。(^^) 特にその傾向が強いのが、このアルバムでの一番の聴かせどころと思いわれる The Load 。 なかなかドラマチックな大作だ。自主制作のこのアルバム、ジャケットがデスクカレンダーに 使われているような素材のビニール製の袋、裏が透明で厚紙で出来たインナースリーブの内容が 読めるような構造になっている。レコードの時代は変な装幀がたくさんあって面白かった。



GRATUITOUS FLASH ( ABEL GANZ ) 1984

パラスのヴォーカリスト Alan Reed が加入していた英国のシンフォニック・ロック・バンドの 84年のテープ作。唄がとてもよくアレンジもかなり手慣れていてびっくりする。 ジェネシスクローンとしてはかなりのレヴェルだ。 ギターやキーボードなかなか頑張っていてかななり聴ける音。 ただし、リズムセクションがやや弱く、そこが如何にもポンプだ? (^^;  そんな中、ヴォーカルの表情が豊かなので救われる。 これだけ歌えればパラスに引っ張られるのも当然だ。  これだけの作品が当初カセットテープでしか出ていなかったのにも驚く。 ポンプ・ムーヴメントがもっと長く続いていれば必ずメジャーになっていたことだろう。


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