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1989

90年代の幕開け
80年代も後半になると、まったく新しい動きが始まる。CDはレコードよりも低コストで再発が可能なため、各レコード会社がかつてのプログレのマイナー盤を続々とCDで再発するようになったのだ。また、インデーズレーヴェルにとってもCD化がコスト面で追い風となり、世界各国にプログレインディーズのディストリビューターが発足、プログレのインディーズCDが広く流通し始めたのだ。 先進国各国には大なり小なりインディーズ・レーヴェルが存在し、やがてそれらのいくつは連携し、世界的なシンジケートを形成するようになる。さらに90年代後半にはそれらの活動はインターネットを通じて誰もが把握できる状態にまで進化する。一方、"DREAM THEATER" の登場により、ヘヴィメタルサイドからのメロディックロックへのアタックも始まり、現在では、再発物も含め、個人ではすべてが聴ききれないほどのシンフォニック・ロックCDがリリースされるようになっている。


EAT ME IN ST.LUIS ( IT BITES ) 1989

It Bites がヘヴィに変貌。プログレファンがヌカ喜びするような佳作をいくら作ってもセールスに 結びつかないということなのか? ヘヴイメタルファンを視野に入れた作りに変わっている。 2ndは各パートのコンビネーションが聴き所だったが、 営業的な要請なのかこのアルバムでは、Francis Dunnery のギターが思い切り前面に出るようになり、 "Still too Young to Remember" のようなエモーショナルで御機嫌なハードロックも 誕生している。キーボードがやや遠慮気味になっているものの、テクニカルな作りは相変わらず。 「シンフォニックなプログレを演れ」と云われれば、相当な作品を作れるだけの実力と素養を 持っているような気もするのだが、残念ながら彼等が目指したのはプログレの再生ではなく、 ブリティッシュ・ロックの再生だったようだ。往時の英プログレ、ELPやYESも プログレ云々する前にロックスターとしても一流だったよな・・・。 これも重要なことかも知れない。(^^;


ARE YOU SITTING COMFORTABLY? ( IQ ) 1989

ジャケットのロボットを見て、IQが近未来サウンドになったのかと思ったら、 1曲目からトーキングドラムのような音が出てきて意外な展開。 ソロになってからのピーター・ガブリエルような唄。でもやっぱりキーボードがSF風。 なんかとてもいい雰囲気。「これは私の好みな音作りだなあ」 と思ったら、プロデューサーが Terry Brown 。Rush と別れた彼はこんなところで 仕事をしてたんだ・・・。"Drive on" あたりはポンプの雰囲気を残しつつもパワーセットな ドラムがアクティブな感じを出していてとても良い。これもたぶんプロデューサーの趣味だろう。 実にけっこう。個人的にはIQのフェイバリットアルバム。


THE LORELI ( QUASER ) 1989

ポンプ草創期から活動してた Quaser の実に6年ぶりのアルバム。当然、インディーズ。 このアルバムには、toshi という日本人ギタリストが参加しているが、実は私。(もちろん嘘!) Toshi Tsuchiya というギタリストのクレジットがある。 Tracy Hichings というややヘヴィな声質の女性ヴォーカリストがとても良い。 このアルバムは彼女がのびのびとした声で各曲を歌い上げることで感動的なシンフォニックロックのアルバムになっている。 この女性ヴォーカリスト、90年代になると、ペンドラゴンの Clive Nolan と組み、 あちこちのシンフォニック・ロック・バンドでパワフルな歌声を披露している。

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