堀口和彦 著、光和堂 発行 「風邪がなかなか治らない。咳が出だすと止まらない。」「夜ベッドに入ると咳 が出て眠れない。」これらは、気管支炎や喘息のサインです。風邪によって誘発さ れますが、アレルギー体質と気管の拡張と収縮を調節する自律神経が関与して起こ る病気です。身近な病気ですが、慢性化すると気道が腫れ狭くなり、呼吸困難を起 こしますので、早めに対処をしましょう。
私たちは、細菌やウイルスなどの病原体から身体を守る免疫機能を持っています。
病原菌が侵入すると、抗体やリンパ球をミサイルや戦車のように駆使し退治します。
これは攻撃的防衛策であり、内戦やクーデター、さらに過剰攻撃などを引き起こす
可能性を秘めています。つまり、反応しなくていいものに反応したり、過剰に反応
し過ぎたり、秩序が乱れることがあるのです。これがアレルギー反応です。免疫機
能のもう一つの戦略は、外敵を記憶することです。一度戦った相手のデータを収集
して、しっかりと保存して次の攻撃に備えているのです。優れた作戦ですが、これ
がアレルギー反応に適応されると、急速に激しいアレルギー反応が出現します。こ
れがいわゆるアナフィラキシーといわれるもので、ハチ刺されや食物摂取の直後に
発症します。重篤の場合は呼吸困難や意識障害を起こし大変危険です。
温度や湿度など外部環境が変化しても、私たちの身体をすばやく適応させてくれ
るのは、自律神経の働きによります。寝ていても心臓が休まず働き、食べると胃が
動き消化するのも、自律神経が自動的に働いているからです。この働きのバランス
を取るために、交感神経と副交感神経が二律背反に作用しています。一般にリラッ
クスした状態では副交感神経が優位になり、逆に興奮した状態では交感神経が先頭
にたって働きます。また、仰臥は副交感優位で、うつ伏せは交感神経優位となりま
す。気管は副交感神経が優位な状態で狭くなるので、仰向けで心身ともにリラック
スした時に、喘息発作が起こりやすいのです。 呼吸は、生命に欠くことのできないものです。普段無意識に行っているのですが、 ストレスや精神的な疲れが続くと、知らぬ間に浅い呼吸になります。貝原益軒は 「養生訓」で、呼吸の大切さと理想的な呼吸法を述べています。 |
「胸中に気をあつめずして、丹田に気をあつむべし。」胸ではなく下腹(丹田)で
する呼吸、いわゆる腹式呼吸です。腹式呼吸をすると、背筋が伸び胸が張って、横
隔膜が大きく動き、肺にたくさんの空気が入ります。これを実践すれば、酸素を豊
富に含んだよい血液が全身にめぐり、筋肉の緊張や凝りがほぐれます。さらに腹式
呼吸は呼吸のリズムと深さから、自律神経へ働きかけ、交感神経と副交感神経のバ
ランスを整える作用があります。
もう一つ是非実践したい対処術は、乾布摩擦です。皮膚を刺激することは、皮膚 呼吸や末梢血行を促進し、自律神経に働きかけることができます。さらに肩背部に は、気管や肺に関連するツボがあり、特にこの部分を温めるような気持ちで擦って ください。皮膚が少し赤くなるまで続けます。発作予防には就寝前と起床時におこ なってください。また、発作時も効果的です。小児喘息では親子のスキンシップに もなります。是非実践してください。
喘息を根本から治すには、アレルギー体質の改善と自律神経の働きを正常にする
必要があります。体質改善には生活習慣が大切です。 喘息などのアレルギーで、気管などの粘膜や皮膚に痒みや腫れを引起す原因物質 は、ヒスタミンやロイコトリエンなどです。食べ物によってはヒスタミンを含むも のや、ロイコトリエンの原料になるものがあるのです。このようなものを、アレル ギー症状が出ている時に多食すると、痒みや腫れ、喘息などが悪化し、いつまでも 治らない状態を作ります。このような食べ物を仮性アレルゲンやアレルギー誘発食 品と呼びます。食物アレルギーではないので、これらは抗原となるのではなく、直 接ヒスタミンなどアレルギー症状の原因物質を増やすのです。注意しましょう。
×肉類(牛肉・鶏肉など特に鮮度の低いもの)
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