全120首の内、4首を取り上げましたが、その他の句も現代に通じるありがた
いお言葉ばかりです。貝原益軒の「養生訓」の100年以上前に、このような書が
存在していたことに真に驚きです。
◆ 脚気と膝の痛み
明治時代以降は、脚気は栄養障害(ビタミンB不足)が原因の歩行障害や心臓病
に発展する病気と定着しますが、それ以前では脚の病として膝関節症なども脚気に
含まれます。曲直瀬道三の「師語録」では、脚気は腫れ痛む膝の病と総称としてお
り、その病が腹から胸に入ることがあるので早めに治療しなさいと記載されていま
す。いわゆる脚気衝心といわれる心不全を引き起こすことも述べています。いずれ
にしても膝関節症は当時の脚気に分類されていました。
◆ 骨変性のない膝関節炎
骨変性がまだ起こっていない膝関節炎は、関節周辺部の炎症です。膝蓋靭帯、十
字靭帯、副側靭帯や筋腱が、過度な運動や運動不足時の急な運動、あるいはリウマ
チなど免疫学的な病気によって炎症を生じ、痛みや腫れを起こします。一般に膝関
節症の初期の段階であり、60歳代に多く的確な治療をすれば治ります。しかし、
この段階で原因をきちんと認識して改善しないと、再発や悪化を引き起こし軟骨や
骨の変性に進行します。
◆ 膝水腫と滑液包炎
膝に水が溜まり腫脹した状態です。膝水腫では、関節内の滑膜で被われた関節腔
に関節液が余分に溜まります。この関節液は、動きをスムーズにする潤滑油と軟骨
を養う大切な役割を担っているのですが、使い過ぎやホルモンや免疫の異常によっ
て、大量に分泌されるのです。更年期ごろの50歳代女性に多いようです。
滑液包は、膝のまわりに15個程あり、靭帯や腱の摩擦を防ぎ、さらに衝撃を吸
収するエアバックのような役目をしています。使い過ぎや外傷などにより、滑液包
が炎症を起こし、膨張し腫脹を引き起こします。腫れがひどい場合は、整形外科で
膝に穿刺し溜まった水を抜いてもらいましょう。この時に患部の炎症と腫れを取る
ために、ステロイド剤を注入することがありますが、ステロイド剤の頻用は骨を脆
くすることがあるので注意が必要です。いずれにしても、この時点で腫れた原因を
よく見出して、その原因を改善するように努めましょう。さもないと骨の変形とい
う不可逆的な状態に陥ってしまいます。
◆ 膝の声を聞く
関節の腫れは、生体の防御反応の現れです。関節面にある軟骨や靭帯を衝撃から
守るために一生懸命働いた結果が炎症や腫れなのです。まず膝を休め、いたわりま
しょう。患部の熱感が強い場合は冷やします。痛風やリウマチなど血液やリンパに
起因する場合も同様です。そして熱感が引いたら、徐々に血液やリンパの流れを促
進させて、患部の炎症と腫れを取り除いていきます。腫れと痛みが強い時期には、
火に油を注がないように無理しないことです。