病気対処術《アレルギー(気管)編》2006.10.17
堀口和彦 著、光和堂 発行

◆ 気管支炎と喘息

 「風邪がなかなか治らない。咳が出だすと止まらない。」「夜ベッドに入ると咳 が出て眠れない。」これらは、気管支炎や喘息のサインです。風邪によって誘発さ れますが、アレルギー体質と気管の拡張と収縮を調節する自律神経が関与して起こ る病気です。身近な病気ですが、慢性化すると気道が腫れ狭くなり、呼吸困難を起 こしますので、早めに対処をしましょう。

◆ アレルギーと気管

 私たちは、細菌やウイルスなどの病原体から身体を守る免疫機能を持っています。 病原菌が侵入すると、抗体やリンパ球をミサイルや戦車のように駆使し退治します。 これは攻撃的防衛策であり、内戦やクーデター、さらに過剰攻撃などを引き起こす 可能性を秘めています。つまり、反応しなくていいものに反応したり、過剰に反応 し過ぎたり、秩序が乱れることがあるのです。これがアレルギー反応です。免疫機 能のもう一つの戦略は、外敵を記憶することです。一度戦った相手のデータを収集 して、しっかりと保存して次の攻撃に備えているのです。優れた作戦ですが、これ がアレルギー反応に適応されると、急速に激しいアレルギー反応が出現します。こ れがいわゆるアナフィラキシーといわれるもので、ハチ刺されや食物摂取の直後に 発症します。重篤の場合は呼吸困難や意識障害を起こし大変危険です。
 喘息の場合、気管でアレルギー反応が起こり、炎症し腫れて気管が狭くなります。 肺に空気が入らないと人は生存できないので、気管を拡げ痰を排出しようと中枢が 指令を出します。その自己防衛の結果が咳なのです。しかしその咳があまりに激し く連続すると胸部の筋肉痛や肋間神経痛、時にその勢いから肋骨骨折を起こす人も います。また、嘔吐や尿失禁などを誘発することもあります。

◆ 自律神経と気管

 温度や湿度など外部環境が変化しても、私たちの身体をすばやく適応させてくれ るのは、自律神経の働きによります。寝ていても心臓が休まず働き、食べると胃が 動き消化するのも、自律神経が自動的に働いているからです。この働きのバランス を取るために、交感神経と副交感神経が二律背反に作用しています。一般にリラッ クスした状態では副交感神経が優位になり、逆に興奮した状態では交感神経が先頭 にたって働きます。また、仰臥は副交感優位で、うつ伏せは交感神経優位となりま す。気管は副交感神経が優位な状態で狭くなるので、仰向けで心身ともにリラック スした時に、喘息発作が起こりやすいのです。
 夜間睡眠の邪魔をする喘息発作は、肉体的な疲労と精神の緊張を増幅させ、病の 悪循環を引き起こします。しかし、発作を心配し常に身体を強ばらせ緊張していた のでは、横隔膜の動きが悪くなり、肺が閉がり、深呼吸ができません。そこで、お 腹を使った腹式呼吸を実践しましょう。

◆ やっぱり腹式呼吸が大切!

 呼吸は、生命に欠くことのできないものです。普段無意識に行っているのですが、 ストレスや精神的な疲れが続くと、知らぬ間に浅い呼吸になります。貝原益軒は 「養生訓」で、呼吸の大切さと理想的な呼吸法を述べています。「胸中に気をあつ めずして、丹田に気をあつむべし。」胸ではなく下腹(丹田)でする呼吸、いわゆ る腹式呼吸です。

腹式呼吸をすると、背筋が伸び胸が張って、横隔膜が大きく動き、肺にたくさんの 空気が入ります。これを実践すれば、酸素を豊富に含んだよい血液が全身にめぐり、 筋肉の緊張や凝りがほぐれます。さらに腹式呼吸は呼吸のリズムと深さから、自律 神経へ働きかけ、交感神経と副交感神経のバランスを整える作用があります。

◆ 喘息に乾布摩擦

 もう一つ是非実践したい対処術は、乾布摩擦です。皮膚を刺激することは、皮膚 呼吸や末梢血行を促進し、自律神経に働きかけることができます。さらに肩背部に は、気管や肺に関連するツボがあり、特にこの部分を温めるような気持ちで擦って ください。皮膚が少し赤くなるまで続けます。発作予防には就寝前と起床時におこ なってください。また、発作時も効果的です。小児喘息では親子のスキンシップに もなります。是非実践してください。

◆ 体質改善は生活習慣改善だ!

 喘息を根本から治すには、アレルギー体質の改善と自律神経の働きを正常にする 必要があります。体質改善には生活習慣が大切です。
 中でも食生活は要です。遺伝を設計図に例えれば、食べ物は身体を作る材料です。 設計図がよくても材料が悪ければ、よい家はできません。その逆に、設計図が多少 悪くてもよい材料を使えば、作り方次第でよい家ができるものです。
 自律神経の働きをスムースにするためには、規則正しい生活を実践することです。 早寝早起きと食事の時間、排便と排尿など、生活時間のリズムを崩さないことです。 例えは深夜に食べてすぐ寝ると、胃腸は就寝中にもかかわらず働かなければなりま せん。この消化作業のために自律神経も起きて監視していなければならないのです。 二交代制で働いている自律神経は、基本的に昼は交感神経が主導で、夜は副交感神 経。この交代のタイミングを狂わせないことです。

◆ 食生活とアレルギー

 喘息などのアレルギーで、気管などの粘膜や皮膚に痒みや腫れを引起す原因物質 は、ヒスタミンやロイコトリエンなどです。食べ物によってはヒスタミンを含むも のや、ロイコトリエンの原料になるものがあるのです。このようなものを、アレル ギー症状が出ている時に多食すると、痒みや腫れ、喘息などが悪化し、いつまでも 治らない状態を作ります。このような食べ物を仮性アレルゲンやアレルギー誘発食 品と呼びます。食物アレルギーではないので、これらは抗原となるのではなく、直 接ヒスタミンなどアレルギー症状の原因物質を増やすのです。注意しましょう。

◎ アレルギー誘発食品

×肉類(牛肉・鶏肉など特に鮮度の低いもの)
×魚介類(サバ・カツオなど青魚やエビ・カニ・イカ・タコなどで鮮度低いもの)
×生野菜(ホウレンソウ・ナス・トマト・イモ類など、しかし生でなく湯通しや、あ く抜きすれば心配なし)
×ナッツ類(ピーナッツ・アーモンドなど)
×油脂類(ラード・スナック菓子などリノール酸もだめ)
×果物(パイナップル・アボガドなど)
×その他(チョコレート・香辛料・アルコール)


病気対処術《アレルギー(気管)編》2006.10.17
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