病気対処術《アレルギー(鼻)編》2006.03.17
堀口和彦 著、光和堂 発行

◆ 花粉症・アレルギー性鼻炎

 季節の変わり目である春と秋。中でも二月の節分 から桜の花が散る頃までは、一番のアレルギーの季 節です。まだ、寒さは続きますが、木は芽吹き、地中では虫が動き 始めます。生物も一年の始まりです。自然界は、静から動へ、内か ら外へと移り変わる時です。身体も自然の一部です。発汗や充血が 起こりやすくなり、新陳代謝が高まり、皮膚や粘膜の働きが活発に なります。さらに、春の陽気は上から身体を温め、のぼせを起こし、 鼻や頭に症状を出しやすくします。そこに、多量の杉花粉が飛来し ます。充血しやすくなった鼻や眼の粘膜は、たちまち反応して、鼻 水やくしゃみが出て、眼が痒くなるのです。

◆ アレルギー疾患は様々な原因が複合している

 身体を外敵から守る免疫機能の乱れ、反応しなくてもいいものに 反応することがアレルギーです。では、どうしてアレルギーになっ てしまうのでしょうか? 環境の変化は、体に様々な影響を及ぼし ます。中でもアレルギー疾患は、最も機敏にその変化の影響を受け ます。例えばアレルギー性鼻炎では、暖かい部屋の中から急に冷た い外の空気に当たるだけでクシヤミが出ることがあります。このよ うに環境の変化が鼻炎を引き起こすのです。花粉症でも杉花粉だけ でなく、ディーゼル車からの排気ガスも関与していることが判って きました。さらに、私たちの身体そのものも変化しています。それ は、体を作る材料である食べ物が大きく変わってきたことです。ま た、衛生設備の向上により感染症が減少するとアレルギー疾患が増 加するという報告もあり、発展途上国での罹患 状況からも肯けます。
 このようにアレルギーは様々な原因が複合 して起こる病気です。アレルギー疾患のように 問題が複雑に絡み合っている時は、まずできる ことから確実に改善することです。そこで、自 分の力でできることはなんでしょうか?

◆ まず食生活の改善を!

 体質は、遺伝と生活習慣で作られます。遺伝子治療が研究されて いますが、まだ実用化はかなり先です。そこで、今できることは生 活習慣を改善することです。その中でも、やはり食事は大きなウエ イトを占めています。糖分・脂肪分・コレステロールを少なめにす ることは、生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)の予防に も大切です。コーヒーやココアは体によい面もありますが、粘膜を 充血させるため、鼻や目、のどや気管などの粘膜が敏感なアレルギ ー体質の方にはよくありません。さらに、唐辛子は最近ダイエット によいと話題になっていますが、これも粘膜の弱い人には(痔にも) 禁物です。これらは経験的な注意点です。
 現代科学では実験的に、アレルギー反応を誘発し、アレルギー疾 患全般を慢性化させ、悪化させる食物が判明しています。粘膜や皮 膚での炎症や痒みを引起すヒスタミンやロイコトリエンを含むもの や、これらの原料になるものがあるのです。まず、牛肉や鶏肉など の肉類や、サバやカツオなど青魚やエビ・カニ・イカ・タコなど魚介類 で、いずれも鮮度が低いもの程アレルギーを誘発します。さらに、 ホウレン草や山菜など灰汁抜きが必要な野菜や、ピーナッツやアー モンドなどのナッツ類、ラードやスナック菓子などで酸化した油脂 を含むもの、アルコール類もよくありません。

◆ やはり食養生が大切!

 貝原益軒は、養生訓で「飲食の養いなければ、元気うゑて命をた もちがたし。元気は生命の本也。飲食は生命の養也。飲食は人の大 欲にして、口腹の好む処也。其このめるにまかせ、ほしゐまゝにす れば、節に過て必ず牌胃をやぶり、諸病を生じ、命を失なふ」と記 し、嗜好や食欲にまかせてはいけないと云っています。では、どの ような物を食べ、また、どのようなものを食べてはいけないのか。
 さらに養生訓には、「凡ての食、淡薄なる物を好むべし。肥濃油脈 の物多く食ふべからず。」や「辛きもの過れば、気上りて気へり、瘡 を生じ、眼あしゝ」とあり、油脂の多いものを控えることや、辛い ものは皮膚病を生じ眼に悪いなどと書かれています。さらに、「食す くなければ、牌胃の中に空処ありて、元気めぐりやすく、食消化し やすくして、飲食する物、皆身の養となる。是を以病すくなくして 身つよくなる。」とあるように、食べ過ぎを戒めて、腹八分目の実践 を謳っています。

◆ 鼻づまり(蓄膿症/副鼻腔炎)もアレルギー

 鼻づまりは風邪を引いた時など、だれもが一度は経験のあるもの です。口で息をしなければならないので、日ごろ息苦しく、夜は寝 苦しく、朝にのどが腫れたり、仕事や勉強中は思考や集中力が低下 します。この鼻づまりの症状が慢性的あるいは季節の変わり目にな ると毎年起こるような場合を蓄膿症あるいは鼻閉症と呼びまず。ま た、一般に子供は鼻内の空間が狭く、特に副鼻腔というところで炎 症が起こり、鼻づまりを発症します。これを副鼻腔炎と呼びます。 花粉症やアレルギー性鼻炎の方は、蓄膿症に移行する場合がよくあ ります。
 花粉症あるいは風邪でも初期は、一般に水っぽい鼻水が多く、中 期から後期になると、鼻水は濃く粘りが強くなります。この時、鼻 づまりを感じます。しかし、これは粘い鼻水がつまっているだけで なく、むしろ鼻の奥の粘膜が腫れ膨らんで、鼻の中が狭くなってい るのです。こんな時に強く鼻をかむと鼻内の圧力が上がり、その圧 力が目や耳に伝わります。すると、病原菌や炎症が目や耳に広がり、 結膜炎や目の充血、耳閉や耳なり、中耳炎などを起こすことかあり ますので注意しましょう。

◆ 体質改善を応援する漢方薬・鍼灸

 食生活の改善や食養生の大切さは理解しても、それを実践し続け ることは至難の業です。養生訓が書かれた背景を察すると、実践し ていない人が多いからこそ、貝原益軒はこの書を記したはずです。 そこで、漢方薬や鍼灸の力を借りて一緒に体質改善に取り組みまし ょう。
 漢方薬は、アレルギー体質をより速く確実に改善するためにその 力を発揮します。体質改善を邪魔する便秘・生理不順・血行不良・ 肝機能低下や消化不良などの問題を解決し、体全体をスムーズに改 善に向けます。
 鼻炎や鼻づまりは頭痛や頭重感を伴うことが多く、この場合は首 や後頭部の凝りが関与しています。また、頚椎のずれが鼻づまりや 頭痛を引き起こすこともあります。このような場合は、鍼灸や指圧 による治療を併用すると治りがぐっと早くなります。凝りや張りを 去り血行を良くし、体に溜まったストレスも解消し ます。さらに、近年の研究で、鍼灸はアレルギーに 関係する免疫機能や自律神経に働くことが判って きました。
 このように歪みや滞りのない身体を作ることが、 結果的に体質改善につながるのです。


病気対処術《アレルギー(鼻)編》2006.03.17
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