私の父、浜野誠一は去る９月２９日に亡くなりました。生前、皆様より賜りましたご厚情に感謝申し上げます。

父の生涯を振り返りますと、「憎まれっ子何とやら」で、言いたいことを言い、幸せな人生でありました。 それを煙たがる方もいれば、噛めば噛むほど味が出るスルメのようだと評した方もいました。

とても多趣味な人で、マージャン、囲碁、奇術（マジック）、俳句、ドライブ、日食ツアーなど、それぞれ相当に凝りましたが、 それらに一貫していたのは、（例えば、勝負事でも勝ち負けなどではなく）「隣人と共に楽しむ」ということであったと思います。

奇術に関しては、柴田直光さんの薫陶を受け、同氏の紹介で若き日の高木重朗氏と出会い、その後昭和34年に仲間と共にマジック・マニアズ・サークル（ＭＭＣ） を設立。以降、高木会長の下、長く幹事役として「来る者は拒まず、去る者は追わず」の自然体で会を支えました。 ＭＭＣの会則で言いたかったのは「本会の目的は奇術を人生の伴侶とし隣人と共にその憩いを楽しむ事にある」という一文だと語っていました。

ＭＭＣの発表会では、当然のように道具を改良・自作し、例えばステージ上をハンカチが飛び回る「ダンシングハンカチ」では、 事務所の応接テーブルに大穴をあけ、一抱えもあるフラスコを（これも細工して）取り付けていたのが思い出されます。 石膏で巨大な卵を作り、クライマックスでこれを出現させ、かなづちで割って見せて、中から犬のおもちゃが出てくる・・・という 突拍子もないものもありました（で、何のマジックだったっけ？）

そんな父が病床で最後に手振りで残したメッセージは「みんなを愛している」ということでした。 これは、人生で出会った皆さんへの敬愛の念であったと思います。 楽しい人生を送らせていただきましたことを、皆様に厚くお礼申し上げます

（2005.10.7 浜野明千宏）

ハートのA　ある喫茶店で

年表

• 大正12(1923).7.11　東京小石川竹早町にて出生、日本橋槫正町在
• 昭和5(‘30) 東京市日本橋区立坂本小学校へ幼稚園一年を経て入学　亀島町在（現、茅場町）
• 昭11('36) 東京府立第一中学校へ入学（現、日本橋高校）　＜昭12.7日支事変＞
• 昭15('40) 赤痢にて神田三輪病院へ入院
• 昭16('41) 横浜高等工業学校電気化学科入学（現、横浜国大）、横浜の伯父宅下宿
• 昭16.6〜8 東京高等商船練習船大成丸乗船、基隆,厚門,大連,青島へ＜昭16.12.大東亜戦争勃発＞
• 昭18('43) 徴兵検査にて戊種翌年廻し、肺浸潤で休学
• 昭19('44) 仙台東北帝大附属金属材料研究所（金研）に研究生として勤務、仙台に下宿
• 昭20('45) 東京工業大学金属材料科へ推薦入学、高円寺に下宿　＜昭20.8　終戦＞
• 昭20.8〜 東京神田予防会にて気胸治療
• 昭21('46) 柿ノ木坂に下宿
• 昭23('48).1 清瀬国立病院にて左胸膜癒着剥離手術 なお気胸治療（鎌倉在）
• 昭24('49) 東京工業大学卒業、就職を焦りつつ（金研は全焼）、鎌倉にて遊ぶ
• 昭25('50) 品川大崎園池製作所へ入社、鉛ガスにより肺悪化、翌年退社
• 昭26('51).8　東葉商工へ勤務（一年間）
• 昭26秋 気胸治療８年ぶりに終了
• 昭27('52).10 肺が再び悪化、休職し化学療法に移る（昭28.3再勤）
• 昭28('53),昭29('54) 2度にわたり喀血、鎌倉鈴木病院へ入院
• 昭30('55) ２回にわたり成形手術、退院
• 昭31('56) 結婚
• 昭31.9　 鎌倉から東京都中央区茅場町へ転居
• 昭32('57) 長男（明千宏）誕生
• 昭34('59) 奇術同好会「マジックマニアズサークル」設立
• 昭36('61) 東村山市の大和関工範に招かれ、技術指導　
• 昭38('63).11 父半三郎、国鉄鶴見事故にて急死、家業（三集商会・コークス販売）に戻る
• 昭48('73) 隣家前川氏と共同で「協同開発ビル」を建てる。（高木重朗氏夫妻入居）
• 昭62('87)12 妻倫子と死別
• 昭63('88) 長男結婚
• 平成2('90) 十二指腸穿孔で緊急入院・手術、3日後に孫誕生
• 平4('92).4 母時子死去
• 平9('97)　 横浜に隠遁、後に港区高輪に転居。以降、日食ツアー等で頻繁に海外旅行
• 平17(2005).9.29 慢性肺疾患により没（享年82）

  辞世　　矮星（ほし）伴れて 千々七彩や シャボン玉　　　鬼市