5章 恋の季節
   2 お熱いのがお好き

  熱帯のコウモリはいろいろな繁殖パターンが見られます。単発情周期のものもいますが、多発情周期型といって年に2−3回発情サイクルが見られるものも多いです。また熱帯・亜熱帯の多くのコウモリは交尾後の排卵・受精・着床・胚発生が中断せずに進行するものが多いですが餌とする虫の出現パターンによって胚発生の遅延が起こる種もあります。つまり特定の季節に多く発生する昆虫を餌とするコウモリは、餌の多い季節に一斉に出産するわけです。
 ところでコウモリは熱帯で進化して、温帯に進出していったと考えられていますがこのように冬眠をしない熱帯のコウモリでも胚発生の遅延が見られたり、精子貯蔵をするものもいるので、それが結果として温帯へ進出する際の前適応となったと考えられます。

 一方血液食のナミチスイコウモリなどは、年二回各個体がバラバラに出産します。近縁の種でも、時には同じ種でも餌や生息環境によって繁殖パターンに違いがあることがあり、繁殖パターンは食物の供給と密接かかわっているのがわかります。

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