5章 恋の季節 
   1 年間出産計画

 4章の最後には、冬眠を中心としたコウモリの年間予定を述べましたが、今度は繁殖を中心に考えてみましょう。

 温帯のコウモリはみな単発情周期型といって、年に一回発情・妊娠・子育てをします。温帯の食虫性コウモリは、虫の多い短い夏の間に合わせて子育てをして冬眠に備えなければなりません。そのために、春に交尾行動から始めていると間に合わないので、秋か冬眠中の覚醒しているときに交尾を行ないます。 多くのコウモリはこの時期には排卵は起こらないので、精子が冬の間中、卵管か子宮の中でずっと保存されます。冬の終わりから春のはじめにかけてメスが冬眠から目覚めるときに初めて、排卵と受精が行われます。つまり気候が温暖になったらすぐ胎児が発育を始められると言うわけです。
 あるいは秋に交尾したときに排卵して受精するけれど、受精卵は初期の卵割を何回か行ったまま発育が止まって春まで着床しないという種もあります。
 また種によっては着床した後、発生が休止してしまうものもいます。
 出産は初夏です。温帯のコウモリは妊娠と授乳期間中はねぐらで群れをつくり、体温調節に使うエネルギーを節約するものが多いです。

 熱帯のコウモリにも、このような単発情型のものが多く見られます。オオコウモリの大部分は単発情型です。熱帯の場合は、出産は餌の豊富な雨期になるように調整しています。

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