5章 恋の季節
   3 マタニティ・コウモリ

  妊娠とは一般的に哺乳類が母体との胎盤を形成して発生を進めることをいいますが、コウモリは5-1で述べたように胚の発育停止を行うことがあるので、妊娠期間を考えるのはなかなか難しいものがあります。冬眠中の発育停止期間を除いた、受精卵の着床から出生までを実質的な妊娠期間として考えてみましょう。(何しろ着床遅延もあることだし)

 一般的に哺乳類は、体重の重いものほど妊娠期間が長くなります。ハムスターの妊娠期間は16日、ヒトは約270日+くらい、アフリカゾウはは22ヶ月になります。コウモリでは大翼手亜目のハイガシラオオコウモリ(体重580g)は5−6ヶ月、デマレルーセットオオコウモリ(体重80g前後)は4ヶ月、体重50gくらいの小翼手類は2−4ヶ月、体重5-8gの小翼手類は40-50日と、やはり同様の傾向が見られます。しかし、同じく体重が5-8gのネズミやトガリネズミの妊娠期間は20-30日ですから、それて比べると発育は遅いと言えます。

 食虫性コウモリの場合は寒くて餌がとれないと、妊娠中でもトーバーになることがあるので、実際に生まれるまでにかかる期間というのは、年によりばらつきが出てきます。

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