4章 冬眠不覚暁 
   10 コウモリの年間予定

 コウモリは秋になると体重が増えます。これは採餌時間が増えるというよりトーパーの時間を増やすことによって消費エネルギーを減らして、脂肪を蓄積しているようです。従って秋が深まると洞窟のなかでも低温の場所を選んでねぐらをとるようになります。

 日本のユビナガコウモリの研究では、10月下旬から11月には皮下白色脂肪量が急に増えます。更に寒い地方のものほどこの体重増加は著しいということです。ナミエヒナコウモリの体重を調べたところ、ある成獣のメスは冬眠前の11月には体重が29gもあったのに、冬眠開けの3、4月には16gになっています。しかしすごい体重増減ですね。重くて飛びにくいのではないかしら。

 このような体重の季節変化は実験室下で光周期と温度と餌の供給を一定にしても生じますので内因的な概年時計(カレンダーのようなもの)があるものと思われます。しかしコウモリの概年時計の周期は平均して300日ということで、これまた光周期や温度によって調整しているのでしょう。季節が巡ればコウモリは冬眠の用意をちゃんとし、夏の間は飛翔に余分な負担をかける無駄な脂肪は落としているわけです。

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