4章 冬眠不覚暁 
   4 トーパーの生理学

 さて、再三出てきたトーパーとは、具体的にはどのような状態なのでしょう。
 ちょっと前に「ネズミの時間、ゾウの時間」という本が評判になりました。大学の推薦入試のテーマにもなったとか。この間図書館で絵本バージョンも見つけました。この中でも出てきたように、小さな動物は心拍も呼吸も速く、多くのコウモリの休息時の心拍数は、一分間に250-450回、飛翔中はなんと800回にもなります。ところが冬眠中の心拍数は一分間に10-16回(アカコウモリ)から42-62回(オオクビワコウモリ)と、かなり低下します。脳や心臓など生命の維持に必要な最低限の器官だけに血液を送り、手足へは、ほとんど行きません。呼吸も遅く不規則になり、60-90分も息をしないことがあるとか。ということで、トビイロホオヒゲコウモリの測定では、エネルギー消費速度は活動時の140分の1になります、一般的に、コウモリは冬眠前に体重の20-30%脂肪を蓄えていますが、冬眠中に覚醒しなければ、理論的にはこれで2年も持つそうです。実際は冬眠中も時々目覚めて水を飲んだりしているので、そんなに長持ちはしませんが。

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