4章 冬眠不覚暁 
   3 トーパーの必要なわけ

 体が大きい動物ほど、その体を維持するためにエネルギーをたくさん消費します。しかし単純に体重に比例してエネルギー消費が増えるわけではありません。

 動物が熱的中性域で絶食・安静状態のときのエネルギー消費量を、基礎代謝量と言います。恒温性の哺乳類の場合、この値は体重が増えるとその3/4乗に比例して増えます。つまり体重が2倍になっても標準代謝量は1.68倍に、体重が100倍になっても標準代謝量は32倍にしか増えないので、大きい動物ほど大きい割にはエネルギーを消費しないし、小さい動物は小さい割にはエネルギーを消費する、つまり代謝速度が速いということです。これは前にも言ったように、体が小さくなると、熱を生産する体積に対して、熱を失う表面積の割合が大きいからです。

 更にコウモリは翼から熱を失うせいか、他の哺乳類よりもエネルギー消失の度合いが高いという研究もあるくらいです。異温性のオプション機能は、厳しい気象条件に生き延びるために理にかなった進化であったわけです。
 
 トーパーは冬眠の時だけではありません。夏でも昼間ねぐらで過ごしているときは、体温を下げてトーパーになり、省エネしていることもめずらしくありません。フリルホオヒゲコウモリは、気温が20℃の時昼間ねぐらで休憩するときにトーパーになれば、1日に15%エネルギーを節約できるという研究があります。

 コウモリはいつ異温性になるべきか、どのくらい体温を下げるべきかを自分で調節しながらこのオプション機能を十分に生かしています。

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