4章 冬眠不覚暁 
   2 恒温性?異温性?

 内温性の動物の大部分は、恒温性すなわち外温や自己の活動に関係なく体温を一定に保ちます。これは温帯や寒帯の小さな動物にとっては、4-1に書いたようになかなか厳しいものがありますから、鳥のように渡りをしたり齧歯類のように食物を貯蔵したりして冬を乗り切る必要があります。そうでなければ、異温性といって、体温を活動時よりも下げてトーパーと呼ばれる休眠状態に入ってエネルギーを節約します。これが冬の間続くと冬眠です。

 コウモリが昼間、翼をうちわのようにしてパタパタ仰いでいるのを見ることがありますが、あまり暑くなるとこういった余分なエネルギーが必要となります。またあまり気温が低いと代謝を通常より活発にしたり、筋肉の震えで熱をたくさん生産する必要が出てくるので、これまた余分なエネルギーが必要です。ということで生物にはそれぞれ代謝量が最小になる温度の範囲があって、熱的中性域といいます。異温性動物は体温を低い温度に設定し直すことによって、熱的中性域をより低くして、寒くても余分なエネルギーがかからないようにしているわけです。
 異温性は温帯の小型哺乳類と、ハチドリの仲間で見つかっています。コウモリでは温帯性のヒナコウモリ科やキクガシラコウモリ科が異温性を使いますが、これはあくまで自分の体温変化を自分でコントロールするもので、いわゆる変温動物とは違って気温が下がったら自動的に体温が下がるわけではありません。オプション機能ですね。
つまり異温性というのは恒温性から特殊化したものです。

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