1章 ア・ラ・コウモリ 
   2 他人のそら似か?

オオコウモリと小コウモリは果たして近縁なのでしょうか。たしかに姿形は似ています。でもこんな違いも・・・

1 小コウモリはすべて超音波を使ったエコーロケーション能力を持っています。オオコウモリはルーセットオオコウモリ属以外はエコーロケーションできないし、かつてエコーロケーションできたという痕跡がいっさい見られません。クジラやヘビにも足の骨の痕跡があるというのに。

2 コウモリの翼はわれわれで言うと手の指の第二指(人差し指)から第五指(小指)が長く伸びて間に膜を張った構造をしています。ちょっと自分の手を眺めてみてください。手のひら部分にも指の骨がありますよね。ここを中指骨といいます。指の部分もいくつかの骨から出来ていますが、一番掌よりが第一指骨です。第3指と第4指の中指骨と第一指骨の長さの比率を測定すると、オオコウモリと小コウモリの数値は全然重なりが見られないのです。つまりどの骨が特に伸びて翼になったかが、オオコウモリと小コウモリでは違うということです。

3 ちょっと難しいかもしれませんが・・・・
皮翼類(ヒヨケザル)とオオコウモリ類と霊長類は、中脳上丘右側からの神経は両目につながっているが実際には左側半分の視野を認識し、中脳上丘左側の神経は同じく両目を通じて右側半分の視野を認識しています。その他のすべての哺乳類(もちろん小コウモリも)は中脳上丘右側の神経は左目の網膜と結ばれており、反対の中脳上丘左側の神経は右目の網膜とつながっています。

ちなみに、1-1であげた5000年前の化石は小コウモリです。一番古いオオコウモリの化石は3500万年前のArchaeopteropus transiensです。ということは小コウモリが先に現れてオオコウモリは後から出現した可能性が高いわけです。(もちろん化石が見つからないだけかもしれませんが)エコーロケーションは、たとえオオコウモリが視覚が発達して夜でも見えるようになったとしても、跡形もなくなくのでしょうか。骨の構造や神経のつながり方のような特徴が進化の過程でそんなに変わるものなのでしょうか。なぜオオコウモリは霊長類と同じ特徴をもつのでしょうか。

こんな進化のストーリーを考えてみました。ただしこれが絶対に正しいというわけではありません。
まず最初に小コウモリがこの地球上に現れます。オオコウモリはそれとは別に霊長類の系統から早い時期に分岐して進化します。ということは哺乳類は2回飛翔能力を進化させたことになります。でも滑空も含めると魚、爬虫類、鳥、昆虫と空を飛ぶ生き物はかなりいろいろいます。哺乳類で飛翔が2回進化してもおかしくないかもしれません。そうするとオオコウモリと小コウモリが似ているのは、単に両方とも空を飛ぶからでしょうか。確かにイルカとマグロはどちらも流線型の体型をしていますが、決して近縁ではありません。

ただし、オオコウモリと小コウモリは近縁であると思えるような現象もいろいろあります。

結局どうなんでしょうね?

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