年間ベストブック 1998年
インターネット2年目です。WWW上にある感想をもとに本を選ぶことも多くなりました。
皆川博子、篠田節子、恩田陸を発見し、本格ミステリにもちょいと手を伸ばした年でした。
守備範囲の幻想文学、SF、ミステリ、児童文学からまんべんなく、一作家一作品という基準で選びました。
- ベスト10
- ・シルヴァーバーグ(ロバート)『夜の翼』→コメント
- ・篠田節子『神鳥(イビス)』→コメント
- ・上遠野浩平『ブキーポップは笑わない』→コメント
- ・森博嗣『今はもうない』→コメント
- ・恩田陸『光の帝国』→コメント
- ・ウィングフィールド 『フロスト日和』
- ・キイズ(J.グレゴリィ)『水の都の王女』/『神住む森の勇者』
- ・笠井潔『天啓の器』
- ・梨木香歩『西の魔女が死んだ』
- ・赤木かん子『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 パート2』
- ・篠田節子『神鳥(イビス)』→コメント
- 次点
- ・皆川博子 『死の泉』
- ・ジョーンズ(デイアナ・ウィン) 『魔女集会通り26番地』
- ・高野史緒 『架空の王国』
- ・大原まり子『タイムリーパー』
- ・京極夏彦『塗仏の宴 宴の支度』
- ・篠田節子『聖域』
- ・恩田陸『三月は深き紅の淵を』
- ・恩田陸『六番目の小夜子』
- ・コリンズ(ナンシー・A.)『ブラック・ローズ』
- ・トライオン(トマス)『悪を呼ぶ少年』
- ・妹尾ゆふ子『風の名前』
- ・ホルト(トム)『疾風魔法大戦』
- ・ジョーンズ(デイアナ・ウィン) 『魔女集会通り26番地』
コメント
シルヴァーバーグ(ロバート)『夜の翼』(ハヤカワ文庫SF)
読了日 4/14
待ちに待った復刊でやっと読む事ができました。
<翔人>の少女が舞い上がるシーンの美しさといったら……。
実を言えば長篇版のラストより、寂しさの残る中編版(前半部分ですね)のラストの方が好きだったりします。
追放された王と共に旅をするシーンで、萩尾望都の「偽王」を思い出してしまいました。
篠田節子『神鳥(イビス)』 (集英社)
読了日 4/29
何十年も前に自殺した女流日本画家の謎を追ううちに奇怪な体験をすることになるイラストレータと作家。
鳥たちが、とっても怖い。
女主人公の(精神的な)強さ逞しさが印象的。
文庫も出ていますが、できればハードカバーを読んだ方がよいです。買うのが無理なら装丁を見るだけでも。
読み終わってから、表紙や扉を見ると……。ぞぉぉぉっとしました。
上遠野浩平『ブキーポップは笑わない』(電撃文庫)
読了日 11/26
続編の『ブキーポップ・リターンズ VSイマジネーター Part1』『ブキーポップ・リターンズ VSイマジネーター Part2』『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ』全部まとめてランクイン。
1位と2位は98年に出た本ではないので、実質的にはこれがベスト1ですね。
どこが良かったのかと言われれば、「若さゆえの切なさ」(なんか変な言葉〜)ですね。
森博嗣『今はもうない』(講談社ノベルス)
読了日 04/27
ミステリ部門ではこれが一番。ものの見事に、「やられた〜!」。
内容的には『夏のレプリカ』の方が評判がいいのかなぁという気もしますが、私はハッピーエンド(?)のこちらが好き。
ちょっとクリスティのトミーとタッペンスもの(『秘密組織』とか)を思わせますね。
いやぁ、犀川ファンとしてはドキドキしたものです。
さて、この小説の最大の謎は、なぜ冴えない中年男(?)の彼が西之園嬢の心を射止めることができたか、そしてそれはいつの時点か?
でしょうが、答えはやっぱり彼が彼女が一番必要としていた言葉を言ったからだと思います。(254ページですね。)
相手が一番言って欲しい言葉を言ってやれば、女の子をオトすことなんて簡単です。結婚サギ師がやっているのは結局そういうことですもんね。
恩田陸『光の帝国』(集英社)
読了日 5/09
恩田陸は3冊とも残って、迷った末にこれにしました。
好きなのは「大きな引き出し」とツル先生の出てくる「手紙」と「光の帝国」。
「光の帝国」は、なぜか大原まり子の「ほうけ頭」を思い出してしまいました。「分校」から連想したのでしょうか。
この本の表題の他、『六番目の小夜子』にも出てくるのですが、 恩田陸の”帝国”という言葉の使い方はちょっと変っていると思います。 私がこの言葉から連想するのは、”大日本帝国”や”ローマ帝国”で、どうしても”武力行使””領土拡大”といったイメージがまとわりつくのですが、 恩田陸のイメージする”帝国”は、どうやら小さく閉じているものらしいですね。 「光の帝国」での使われかたを見ると、”millennium 千年王国”に近いイメージなんじゃないかという気もします。