2章 翼の王国 
   7 巨大コウモリ&微コウモリ

 体重が重ければ揚力を得るために大きな翼を持つ必要があります。しかし実際には翼を支える肩や筋肉に負担がかかりますから限度があります。揚力を得るためには速くはばたかなくてはならないのに、大きな翼ほどそれがむずかしくなってきます。鳥の場合は、この限度は15kgくらいだそうです。コンドル、アホウドリ、ノガン、コウノトリ、ハクチョウ、ツルあたりが鳥界の重量級でしょう。
 ところが最大のジャワオオコウモリは体重1.5kgで、その10分の1の体重しかありません。なぜでしょう。特に小コウモリ類は小型なものが多いです。

 体が大きくなるとスピードに乗って飛ぶ必要がありますし、慣性が大きくなるので敏捷な動きができにくくなります。少なくとも食虫性のコウモリにとってはこれは致命的です。後ほどエコーロケーションのところで出てきますが、超音波は減衰率が大きいのであまり遠い範囲の虫は認識できません。ということは虫を見つけたらすぐに反応しなければならず方向転換など敏捷に行える必要があります。また、ほとんどの小コウモリは前に書いたように、エコーロケーションパルスの発射を翼のはばたきと連動させています。体が大きくてはばたきがゆっくりとなるとパルスの発射間隔が長くなりすぎて、虫の動きを正確に捉えるのが困難になってきます。そんなわけで、食虫性で大きいコウモリというのはいないのでしょう。
 じゃあ果実食のオオコウモリは??小コウモリほどではないですがやはり森の茂みの中を飛んだりして餌をとりますから、あまり体が大きくて不器用では困るのでしょうね。ハクチョウが森の木々の間をぬって飛んだり、止まって枝先の果実をとろうとしているところを想像してみてください(ボキッ)

 じゃあ小さければ小さいほどいいのかというと、翼が小さいと揚力を得るために速くはばたく必要がありますが、筋肉の収縮反応には限度があります。また後ほど冬眠のところで出てきますが、小さくなればなるほど体積あたりの体表面積は相対的に大きくなって、体温を奪われてエネルギーを消費するので、体の割にたくさん食べなければならなくなります。ということは極端な話、睡眠時間も削って食べ続けなけらばならなくなりますから、これまた限度があるはずです。鳥で一番軽いのは体重1.5gのマメハチドリ、コウモリで一番小さいのはやはり体重1.5gのキティブタバナコウモリです。小さい方は鳥と一致しましたね。 

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