旧世界のオオコウモリ科はみな植物食です。新世界では小コウモリしかいませんが、ヘラコウモリ科の一部が植物食です。ヘラコウモリ科は植物しか食べないわけではなく、多少は虫を捕りますので、もともとは食虫コウモリだったことが想像されます。収斂進化(要するに他人のそら似)なのでしょう。
さらに細かく見ていくとオオコウモリ科には花蜜と花粉だけを食べ、体が小さくてハチドリのように花の前でホバリングをし、長い鼻面と長い舌を持ち、歯の数が少ないシタナガフルーツコウモリ亜科というのがいます。ヘラコウモリ科でも同じく花蜜と花粉だけを食べるシタナガコウモリ亜科は同様の特徴を持ちます。旧世界と新世界で、それぞれ同じ生態的地位を占めるわけですね。
しかしすべてが平行に進化したわけではありません。オオコウモリはどちらかというと体が大きめで、アスペクト比の大きい(長くて幅の狭い)翼を持ち、翼面荷重が大きいので、早くて効率の良い飛翔ができます。また顎の構造はあまり特定の餌だけに特殊化していないものがほとんどです。これはオオコウモリの棲む旧世界はどちらかというと植物の種類が少なく、局地的に爆発的開花をしたり結実することが多いので、餌を探してねぐらから50km以上も通うことがあり、そのため、非選択的採餌の傾向が強いからでしょう。
ヘラコウモリ科はそれに対して、体は比較的小型で、アスペクト比も翼面荷重も小さく、ゆっくりと巧みな飛翔を見せます。果実食か花蜜食に専門化したものが多く、顎の構造もそれにあわせて特殊化しています。これはヘラコウモリ科が棲む新世界が、植物がより多様で豊かなため、ねぐらから10km以内の近距離で採餌できるからです。