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Senn (Margret Eir) 2004

Magaret"Senn"とはきっと"Soon"のこと。何故ならこの曲は、Yes の The Gates Of Delirium のエンディングに Jon Anderson が感動的に歌い上げる"Soon"のカヴァーだから。ドラマティックかつ緻密に構成された組曲の最終章を飾る名曲を、女性ヴォーカリストが歌うとこれまた味わい深い。これはなかなかよく出来たカヴァーだ。タイトルの"Senn"。これはきっとアイスランド語。Margret Eirはアイスランド人なのだ。歌そのものもアイスランド語で歌われてると思われる。プロフィールによると Margret Eirって人は1972年生まれ、子供の頃からレイキャビク・ミュージック・アカデミーに通い、その後、ニューヨークに留学して音楽を学び、1990年頃からプロ活動を始め Eurovision Song Contest にもチャレンジしたという。90年代の彼女の活動はアイスランドのテレビに出たりライブで歌ったりと、いわゆる普通の女性歌手然としたものだったが、Margrt Eir名義で2000年以降に4枚リリースされているアルバムの中にはこの"senn"以外にも、"Heiðin há"(Wuthering Heights-Kate Bush)、I naturhumi(Moonlight Shadow-Mike Oldfield) というような気になるカヴァーが存在する。どうやらこのオバサンはプログレが好きだったらしい。アイスランドといえばビョーク(Bjork)、こちらは世界的な名声を博している今やアイスランドを代表する歌手だ。こんな風に書くとアイスランドの音楽シーンが如何に優れているかってことになるのだが、その前にアイスランドの基本情報を確認する必要がある。何故なら、アイスランドの人口はたったの28万人だから。28万人っていったら日本の地方都市に等しい。ビョークの幻のファーストアルバムはかつてアイスランドで大ヒットしたそうだが、その数は7千枚だという。そして話は大胆に逸れる。これは如何にローカリズムが文化を育むかの見本なのだ。28万人でも大統領がいて近代議会の元祖と云われる議会があって、テレビもラジオもあって、ブロードバンドの普及率は世界一、火山と温泉に恵まれ、漁業が盛ん。かつて米ソ首脳会談まで行われたのだ。日本と国力を比較しても意味はないと思うだろう。しかし、その差が1億人vs28万人の差と云えるほど大きいものなのかな?と考えると淋しくなりはしまいか。今日本は効率化を旗印に文化的に意味不明な線引きで道州制を画策している。権限を移譲し地方の力を高めるためなどとも云われているが、グローバル化の進展で金太郎飴のようになりつつある現在の日本の国土を道州単位で区切るのは危険だ。効率は良くなるが中身はない。つまり「不毛」なのだ。文化の無いところに経済は育たない。競争力を高めるための効率化と引き換えに、多様性が失われたらお終い。さて、Margret Eir はニューヨークにいた頃、Jesus Christ Superstar の Mary を演じたとプロフィールに書かれていたが、やぱあれは女性歌手の基本だよな~と思いつつ Yvonne Elliman や Sarah Brightman に "Soon" を歌ったらどんなに素晴らしいだろうかとも期待してしまった。Sarah Brightman なら Kansas や Peter Gabriel の曲を歌っているくらいだからやってくれそうな気もするが・・・。

Senn(MargrétEir) Sample

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