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真正オケカス登場

TarcusY「タルカス ~クラシック meets ロック」アトム・ハーツ・クラブな吉松隆氏が遂にタルカスをオケ版に編曲してしまった。3月にコンサートが行なわれたのは、その告知がされた時点から知っていたが、悲しきかな地方在住者にとっては遠い出来事だった。生活を仕事に追われて過ごす私はこのコンサートがNHK-FMで放送されたことも後から知り、CDも発売日にその存在を初めて知った。「聴く気があんのか?」ってな対応だが、そうでないと?十年もプログレと付き合うことはできないものだ。さて、本題。時間とお金に余裕があれば行きたかった演奏会。どんな内容だったのかと期待してCDを再生して驚いた。東京フィルハーモニー交響楽団ともあろう人々がよくもまあこんなに下品な演奏をしたものだと。がはは。下品というのは賛辞だよ、賛辞。お間違えのないように。でも、正直なところ下品に聴こえた。金管重視でクラシックではあまり使わない和音が炸裂するさまは、ぶっ壊れた映画ベンハーのサントラみたいで、演奏会当日も正装して訪れた東フィルの会員には耐えられない人もいたのではないか。でもこれはロックだ。上品である必要は元々無い。そう思えばこのパワーは特筆もの。「噴火」や「アクアタルカス」の激しさは、その下品さにおいて前衛だと思われる。指揮者藤岡幸夫氏が最後に嗚咽のような叫びをあげるところなどは最高。コンサートマスターはモルゴーア・カルテットの荒井英治氏。嬉々として跳ねまくるヴァイオリンが楽しい。パーカッションが大健闘している。クラシックの演奏会なのに時々ビートを感じた。最近は中学校の吹奏楽あたりでもパーカッションがグルーヴしてたりすることがある。生まれたときからビートのある音楽が巷に溢れる時代に育った若者は凄い。バンド演奏と比べるとオーケストラのリズムのキレの悪さは致命的だ。今回、それをあまり感じさせなかったのはパーカッションの頑張りがあったからだろう。ちょっと残念だったのは「ストーン・オブ・イヤーズ」あたりか。原曲にあるブルージーさをもっと表現して欲しかった。マイルス・ディビスのようなトランペット。弦がベースになっていればジャズにはならないだろうと。管楽器が苦労しているのが素人にもわかってしまうし、テンポが一定な「ストーン・オブ・イヤーズ」なんてツマラナイ。自分に酔って唄うグレックにキースとカールがアイコンタクトでテンポを合わせていくところが良いのだ。そこまでいくとクラシックではないとかオーケストラではないのかも知れないが、いわゆる西洋音楽としてのクラシックが20世紀で終わってしまったのは現代音楽を上品で進歩的な音楽としてもてはやしたからだろうと考える。それらは20世紀後半にはエレクトロニクスやメディアの進歩によりロックやロックから派生した音楽にすっかり飲み込まれてしまったではないか。ストラビンスキーやショスタコビッチ、あるいはバルトークあたりががやり始めたことを継続し、現代人の感覚に合うよう強化すれば、逆に伝統的な音楽が既に進歩を停止したジャズやロックを飲み込むことも不可能ではないような気がする。再びクラシックの時代が来るかも知れない。んなわけないか。

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