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フランシーヌの場合

86d77895.jpgフランシーヌの場合 1969年

■作詞 いまいずみあきら
■作曲 郷五郎
■歌 新谷のり子

1969年に80万枚を売った大ヒット曲。当時、小学生だった私も歌った記憶があるが、この歌の背景を知ったのは後年のことだ。フランシーヌとはベトナム戦争とビアフラ飢餓に抗議して焼身自殺したフランス人女性の名前。"Francine Lecomte" でネット検索すれば情報はかなり出てくる。が、肝心のフランスのサイトで検索しても全くページがヒットしない。それは歌のヒットが無ければ忘れ去られていた出来事だったということを物語ってはいまいか。フランシーヌのいう女性が1969年3月30日にパリで焼身自殺したことは事実で、AFP電として日本の新聞でも報道された。報道機関ってのは自殺を報道する際、故人からのよほど明確なメッセージが無い限り自殺の原因を断定することはない。ネット上で朝日新聞のベタ記事を読んだが、この記事でも現場がパリ会談(ベトナム戦争打開のための米、南北ベトナム、解放戦線の4者による拡大会談)の会場の近くだったことや、女性がビアフラ飢餓の記事の切り抜きを持っていたり、ウ・タント国連事務総長(当時)宛に手紙を書いていたりしたことを伝えてはいるものの、精神科にかかっていたという家族の話も付け加え、原因の断定はしていない。報道されていない別の自殺動機もあったとの噂も当時からあったらしいがその真偽は程はわからない。ただ、この歌を作った人達は彼女の自殺を戦争や飢餓への抗議(これも断定している訳ではないが)と受けとったようで、歌を聴いた多く人も反戦歌と思ったようだ。そして新谷のりこさんは今でも反戦平和の願いをこめてこの歌を歌い続けている。だから自殺の動機はどうであれ歌は歌で良いのではないかとは思う。それよりも現在の国際状況が35年前のそれと「役者と舞台が変わっているだけで本質的に何も変わっていない。」ことに驚く。ソ連邦が崩壊しベルリンの壁が無くなった時はそれまで常識が崩れ去ったと思ったものだが、変わったのは役者だけだった。米国は相変わらず世界の富を奪取独占するために武力を行使し、日本はそれに乗って経済的繁栄を維持しようとしている。その恩恵に預かってぬくぬくと生活している者が反戦を唱えても残念ながら説得力はない。ホントのことを云ったらオリコウになれない時代にすっかりなってしまったということか。

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