カサブランカ 1994.11.15

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朝、ホテルをチェックアウトする。5晩も泊まったので、フロントの人が、「T/C?カード?現金?」と聞いてくる。もちろん、いつもにこにこ現金払い。計算して手持ちを揃えていたので、清算分の紙幣を渡す。すると名刺をくれて、わざわざ自分の名前まで書き込んでくれた。「空港までは、タクシーで行くの?それともバス?」と聞くので、「電車!」と答える。ウードとバックパックと本の鞄を抱えてCasa Port駅まで歩いていく。通りに並んだカフェの人々がこちらを見ている。空港駅には地下から入るようになっており、そこのカフェで最後のお金を使い果たそうとしてみる。少し残ってしまったのだけれど。最後の新聞を買う。

空港は混雑していた。カウンターにはそれぞれ列ができていて、アエロフロートも見つかったのだけれど、遅く着きすぎたのかもしれないと不安になる。搭乗予約確認が効いているのか、それともキャンセルになっていやしないか気になって、カウンターのところで聞いてみたのだが、フランス語で気ぜわしく話しているので通じない。どうしよう。あわてふためいていると、そばにいた女の人が、英語で話しかけてきた。同じ便に乗るのだという。良かったぁ。フィンランドの人で、モロッコ人の彼と結婚するのだそうだが、いったん国に帰って手続きをするのだという。空港の喫茶店で一休みをすることになり、その彼氏のほうが全員分の支払いを代わってくれて、たずねる。「どこの街が一番良かった?」「メクネス、と、カサブランカ!」「嫌いなのは?」「フェズ!」「俺、フェズ出身なんだけど」知ったこっちゃない、と私は知らんぷりしている。搭乗手続きのゲートでは、前を行くカップルに係員が微笑ましげに応対をしている。私の順番になると。事務的な応対に戻る。

機内食は鶏肉の煮物にえんどうまめのような煮付けだったが、何もしなくても食事が出る、というだけでも豪勢だった。

途中経由のマルタ島では、モロッコの人でフィンランド語が話せる人を見付けたらしく、空港の休憩所へ向かう送迎車の中で、フィンランドを使って話をしているのを耳をそばだてて聞いている。青いジュラバを着て、額や腕に模様を染み込ませているところを見ると、新婚の人なのだろう。



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