ラバト 1994.11.14
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12:10の電車で、ラバトへと向かう。今日はいろいろと片づけることがある。
旧市街手前のタクシー乗り場で、適当なタクシーを拾って、書き留めてくれたアラビア語の住所を見せて行き先を頼む。「はいよっと、そらきた!まかせな!」タクシーの人は、概して気風がいい。快く引き受けて飛ばしてくれた。
広報省にて
5分ほど乗って行くと、白い建物の前についた。玄関からすぐ右手のドアをノックして入る。中は普通の簡素な事務所だった。スチールの机が中央に置いてあって、資料がスチールラックに整理されて山積みになっている。国際書籍見本市で名前と行き先を書いてくださった方にお願いすると、まず、モロッコ全般の紹介が記されている小冊子を頂いた。それから、11月1日のカサブランカ会議の国王演説のアラビア語原稿をプリントアウトしたものを頂くことができた。フランス語の原稿もついでに頂くことにした。担当の方が両手を広げて「他には?他には?」と聞いてくる。本当は憲法の条文もほしかったのだけれど、気後れがしたので、「ない!ないです!もういいです!ありがとう!」と私の方も目一杯大袈裟な身振りで感謝の念を伝える。やけになっている。訪問者名簿に名前を記入して退出してきた。
ラバトの、上着を置き忘れてきたホテルに寄る。覚えておいてくれていたらしくて、きちんと別室に保管してあって、返してくれた。洗濯してアイロンもかけて、袋に包んでとっておいてあった。感動。
旧市街で、鞄を探す。もう勝手知ったる通りをぐるぐると歩き回るが、革の飾りなどのついたいい鞄ばかりで、重さに耐えるくらい底が頑丈でそこそこ見た目がさっぱりしていてとにかく持ち帰るだけできればいいやというものが見つからない。しかし、一軒の店には、ビニールの鞄が置いてあるのが見えたので、入ってみることにした。半月形の、丸い縁取りのしてある花模様の鞄が底も二重だし良さそうである。二つあるので、見比べて縫い取りのしっかりしている方を選ぶ。しかし埃が多少かぶっている。「こちらの方もありますよ」と少し高めの鞄を出してくるので、「本を入れるつもりなんです」と言うと、埃をぬぐってくれた。
看板広告で見かけていた、ハリーラのレトルトがほしかったのだけれども、見つからなかった。諦めることにする。
16:12発の電車で、カサブランカへ戻る。部屋へ帰って、荷造り。
夜、ここは毎日街路を歩き回って結局見つかるけれども次の日になるところっと在処を忘れてまた歩き回って見つかるという雑貨屋に出かけて、日用品の仕入れに行く。高いところのものを指し示すと、はしごを出してきて、取ってくれる。昨日はお釣の端数をチップとしてあげたので今日も残りの50サンチーム(1DHの半分)硬貨を差し出すと、受け取らずに右手を胸に当ててお辞儀をした。それ以上押し付けずに黙って出てくる。必要なものを必要な対価で取り引きする、という均衡。後で教授にその身振りの意味を聞くと、感謝をこめた別れの挨拶、ということだった。
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