カザブランカ 1994.11.13
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今日もブックフェアーに出かけて、一日中入り浸っていた。アル=ムンジドを見つける。やったぁ!これは、中東の大学生によく使われていると聞いたので、ぜひ欲しかったもの。図表と写真を取り入れ、前半部は国語辞典、後半部は百科事典となっている。共に、アラビア語で記述されている。ちなみに、外大の図書館には、1972年のものしかない。改訂されたばかりのその辞書を六角形にやぐらになるように組み上げておいたものが、午後に行くと、半分くらいに減っている。ここで買う人も多いのだろう。他にも、フランス語−アラビア語辞典とか、技術的な専門用語辞典などがあって迷ったが、担いで帰ることを考えると、アル=ムンジド一冊に絞ることにした。隣でお母さんと子供が辞書を見ている。混み合う人込みの中ですれ違う人も、アラビア語で「失礼!」と言いつつを通り過ぎていく。よく考えると、国外からも人は来ているのである。ここでは共通語はアラビア語になっている。違和感はない。逆に、清々しい。
本を見ていると、話し掛けて来る人がいる。「アラビア語の教師になりたいんだけど、日本に連れていってくれないかなぁ?」...?「日本でアラビア語の需要は少ないよ」「でも」...とりあえず、よく分からないけど、大使館のブースに連れていってみると、その人は職員に追い払われてしまった。...また、私はのせられてしまったのだろーか...
ダール・ル・フィクルのブースで、保険・海商法の書籍を見つける。ほしい...しかし、厚さ5センチである。もって帰られるわけがない。涙を飲んで見送る。代わりに、イブン・シーナーの音声学という怪しげな本を買う。値段を聞くと、アラビア語ですらっと言われる。この際だから、アルフィーヤを探してみよう!エジプトの出版社のブースで、英語で問い合わせてみる。しかし、手元にないという。それではと、Sさんにお聞きして、それなら、ダールットゥラースにあるだろうと教えられる。Sさんには、「いったい、専門は何なの?」と言われる。実は、よく考えて決めていないだけではないのか?そういうSさんは、「ここでないと手に入らない書籍が多いのよね」と言いつつ、手押し車に本を山積みにして押していた。そのブースに行ってみると、ありましたね!前に見たことのある文法詩そのものは、数十ページ程度だが、これは4巻本だ。内容をぱらぱらとめくってみると、文章は古めかしく、引用されている詩で見覚えのある語句は冒頭の一節しかない。何だ、これは。もしかして注釈書?値段を聞くと、売り場の人は、150DH(約1700円)という。「高くはないよ」迷ったが、思い切って購入する。紙で丁寧に包んで紐で縛ってくれる。大使館のブースに戻って、重たいので、一時置かせてもらう。ダールットゥラースはレバノンの出版社。
写本の展覧会を開催しているブースがあった。見てまわる。タムグルートで見たものと、比較してみる。やはり、装丁に工夫を凝らしていて、中世キリスト教の写本と同じように、色鮮やかである。
他のブースで、アラビア文字のカリグラフィ(装飾文体)の画集を展示していた。コーランの語句を建築物の装飾に用いたり、本の題名に施すといったことは広く行われているが、そのチュニジアの人の作品集は、文字を釣り合いよく書き表すという書道の域を超えて、線による抽象的な絵画を創り出していた。おそらく幼少の頃からカリグラフィ一筋に歩んで来たのではないか、と思う。
法律関連のブースを見つけた。民法、商法、刑法、その他...一番関心のある、商法のテキストにしてしまった。
夕方になり、そろそろ帰ろうかというところで、大使館のブースに戻ると、Sさんは帰った、という。それで、預けておいた書籍を受け取ろうとすると、「これ、あなたの?」と聞かれて、思わず日本語で、「それ、私の本!」と言うと、赤いビニール袋でさらに包んで渡してくれた。
本の袋を提げて、見本市会場から去っていく人の流れに乗って旧市街の外を歩いていく。なんとなく盆踊りの帰りに似ている。
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