PICTURE原稿の書き方
6.数式の書き方(上級編)
  • 自動的な数式整形を手直ししたいとき
    数式はPICTUREによって自動的に整形されて表示されます。たとえば、演算子の前後に小スペースが挿入されたり、$\sin x$ だと、"sin" と "x" の間に微小スペースが挿入されたりします。このような自動整形を手直しするには、必要な個所に明示的にスペースコマンドを書き入れてください。明示的なスペースコマンドがあると、PICTUREはその個所には自動整形を施しません。
    スペースコマンドには、最も一般的な "\hskip{長さ式}" の他に、"\/" のような簡便なスペースコマンドが数多く用意されています。ただし、単なる半角スペースは、数式中では何の働きもしません。スペースコマンドの詳細は、ヘルプをご覧下さい。
  • 数式の大きさ(特に分数の大きさ)
    数式を表示するときの文字・記号の大きさには、4種類のタイプがあります。
    1. Normalモード。分数を含め、すべての文字・記号が通常の大きさで表示されます。
    2. normalモード。分数の分母/分子が通常の大きさよりもやや小さくなります。分数以外は、通常の大きさで表示されます。
    3. smallモード。normalモードにおける分母/分子の大きさで、すべての文字・記号が表示されます。
    4. smallsmallモード。上付き、下付き文字の大きさですべての文字・記号が表示されます。
    数式の中で特別な指定をしなければ、インデント数式とセンターライン数式は自動的に Normalモードになり、インライン数式は自動的に normalモードになります。また、smallモードや smallsmallモードも、必要な個所で必要に応じて自動的に変換処理がなされます。
    しかし、たとえばインライン数式を Normalモードで表示したいこともあるはずです。そのようなときには、インライン数式の先頭に、"\Normal" と書き入れてください。
    また、Normalモードであっても、分数の分母/分子は自動的に normalモードになります。つまり、分母や分子の中に別の分数が現れると(いわゆる繁分数)、その分数の分母/分子はやや小さめの文字となります。それを通常の大きさで表示したければ、分子や分母の先頭に "\Normal" と書き入れてください。
    上の例に限らず、数式の途中(または先頭)で文字の大きさを変えたいときには、
       \Normal, \normal, \small, \smallsmall
    の各コマンドを必要な個所に書き入れてください。
  • 添え字を左上・左下に付ける。
       \lefttop{左上の添え字}{本体} とすると、本体部の左上に添え字がつきます。
       \leftbottom{左下の添え字}{本体} とすると、本体部の左下に添え字がつきます。
       \lefttopbottom{左上}{左下}{本体} とすると、左上と左下に添え字がつきます。
       \leftbottomtop{左下}{左上}{本体} というのもあります。
       (例) $\lefttopbottom{2}{3}{x}$ → 
  • オーバーブレース、アンダーブレース
    数列等の上/下に横向きの中括弧をつけて、数列の個数などを表すのが、オーバーブレース、アンダーブレースです。
    (例) $a_n=\overbrace{a+b+c+\cdots+h}{n個}+\underbrace{p+q+r+\cdots+t}{m個}$
    とすると、 と表示されます。
  • 数式番号等
    インデント数式とセンターライン数式については、行の末尾に数式番号等をつけることができます。そのための最も一般的なコマンドは、
       \last{…}, \dotsfilllast{…}, \linefilllast{…}
    です。\last{…} は、数式行の末尾に「…」を表示し、\dotsfilllast{…}, \linefilllast{…} はそれに加えて、数式と「…」の間にドット線、または実線を引きます。
    (例1) $$f(t)=e^{-t}\sin t\last{(1)}$$
    とすると、数式行の末尾に「(1)」という数式番号が表示されます。
    (例2) $$f(t)=e^{-t}\sin t\last{\gt← ここが重要}$$
    とすると、数式行の末尾にゴシック体で「← ここが重要」と表示されます。
    数式番号を自動的に割り振ることもできます。数式番号をつけたい数式の最後に単純に "\mathnumkakko" または "\mathnummaru" と記述するだけで、その数式行の末尾に数式番号(括弧つき、または○囲み)が表示されます。番号は自動的にカウントされますから、原稿の修正などにも柔軟に対応できます。
  • ファントム(幻影です)
    数式があたかもそこにあるかのごとく、その大きさの空白を作るという、奇妙な働きをもつコマンドがあります。応用例としては、たとえば、\array では表現しきれない複雑な構造の縦揃え数式など。うまく使うとなかなか便利です。
    1. \phantom{数式} : 「数式」と同じ高さ、幅の空白を作ります。
    2. \vphantom{数式} : 「数式」と同じ高さで、幅はゼロのボックスを作ります。
    3. \hphantom{数式} : 「数式」と同じ幅で、高さはゼロのボックスを作ります。
    (例) \framebox{$\vphantom{\frac{1}{2}}y=x^2$} とすると、y=x2 という数式がフレームボックスで囲まれますが、フレームボックスの高さは y=x2 の高さではなく、1/2という分数の高さとなります。
  • 高さだけのボックス
    \vphantom に近いコマンドですが、高さを直接長さ式で指定するコマンドとして \mathstrut があります。要は、高さだけがあって幅のない柱です。文書、数式の様々な整形に使われます。
       (例) \mathstut{2cm}
  • 大型カッコの表示モード
    たとえば分数式を大型カッコで囲むとき、特別に何も指定しなければ、センター位置(分数の横棒)に関して上下対称なカッコとなります。しかし、分母と分子の高さが異なる分数の場合には、数式のない部分にまでかかったカッコとなってしまいます(下の例の左側)。それを避けたいときには、数式の手前に \mathkakkomode{1} と記述しておきます。そうすれば、実質的な数式部分だけをカバーした大型カッコとなります(下の例の右側)。また、このモードを抜け出すときには、\mathkakkomode{0} と記述します。
       

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