●枇杷町 山茶花本邸 弥白の部屋
新しいポスターも出来上がり、ソファでお茶を飲みつつ一息入れていた弥白と稚空。
「そう言えば、気になっていた事があるんですの」
「何だ?」
「盲導犬協会に、この事は連絡したんですの?」
「え? いや、知らないが」
そもそも、そんな組織がある事すら、稚空は気にしていませんでした。
「盲導犬の育成には何百万円もかかるんですのよ。だから、盲導犬の大半は、各地の盲導犬協会から貸与されているんですの」
「そうなのか?」
「盲導犬が行方不明になったのですから、教会に報告したのであれば、ホームページ上で何らかの呼びかけがある筈。なのに何も無いのが気になって…」
「判った。調べてみるよ」
「もしかしたら、私有の盲導犬かもしれませんわね」
「私有の?」
「ええ。日本の盲導犬はおよそ800匹余り。でも、視覚障害者の数から考えると、需要は4000匹以上あるらしいですわ。だから、資産家とかだと、自分で盲導犬を買ってしまうって聞いた事がありますけど…」
「瀬川さんの家はそんな風にも見えなかったが…」
「さもなければ、相当無理したか、ですわ。幾ら掛かるのか、私も存じませんけど」
「確か瀬川さんの家は両親が離婚しているから、それは無いと思うが…。多分ちゃんとやっているとは思うけど、帰りに聞いてみる。そう言えばまだ例の写真も渡していなかったし」
「そうして下さいな」
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