神風・愛の劇場スレッド 第62話『包み』(7/12付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: hidero@po.iijnet.or.jp
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 11 Jul 2000 17:45:41 +0900
Organization: Infonex Corporation
Lines: 415
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Message-ID: <8kemrl$7pn@infonex.infonex.co.jp>
References: <8i2523$ag8@infonex.infonex.co.jp>
<8itc9t$g15$1@news01bi.so-net.ne.jp>
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<8jphm0$d23@infonex.infonex.co.jp>
<8kas3s$bki$1@news01cd.so-net.ne.jp>

佐々木@横浜市在住です。

<8kas3s$bki$1@news01cd.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

>>  このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
>> です。作品世界が壊れるのが嫌な人は、読まないで下さいね。
>>  そう言えばこの愛の劇場スレッド、そろそろ半年が経過しているのでは…。

^^;;;;;;;;;


>> >誰に読ませるかが大問題。^^;
>> ># スキャナ+OCR+読み上げソフトでイケるかな。^^;;;
>>  来日予定のあの方(嘘爆)。

何時になる事やら。^^;

>> #殆どが洋書なんですよね。

# でも何割かは英語ぢゃない感じ。^^;

>>  本編の着地点をどうするのかも大問題。
>>  これまでに伺ったお話ですと、途中退場が約二名(?)確定していますが、そ
>> れに加えて途中退場させようか迷っているキャラが約一名…。

フィンを途中で退場させると全然違う話になって、それはそれで斬新。^^;

>> >男の子は守備範囲外だったのです。ツグミさん的には。(爆)
>>  あ…シルクとの話ではなく、ツグミさんの在学中の頃の話です。

そっちの話かなぁという気も少々していたのですが、
実の所、とってもロクでなしな学園生活を考え付いてしまって
即座に自ら封印しました。
# それにこの(封印した)話は既に公表済のエピソードと整合しないので。

>> #でも最近、フロッピーって殆ど使わないですよね…。

私は愛用してます。(笑)
# 妄想サイズの文章を自宅から投稿環境に運ぶのに最適。

>> >★神風・愛の劇場 第60話 『暗くなるのをまって』

>>  自分でも対決編を考えていたのですが、DATテープのレオタードまでは考え
>> つかなかった(笑)。久々に妄想小説っぽいネタとなりました。

細い帯状の物を素肌に巻き付けて隠してあるのを、
あとでほぐすってのは定番の表現ですから。(爆)

>>  聖先生と女生徒が何をしているのかは本当に設定を考えていなかったのですが、
>> どうやら鳳暁生な事をしていたようで>聖先生(嘘)。

もうほとんど決め付けてました。お医者さんごっこですよね?(ぉぃぉぃ)

>>  今回は悪魔封印後に消えるレオタードも良いですが、その後でその子の裸を見
>> て悪い癖が出かかるジャンヌ(まろんちゃん)がポイントですね。

もう、真性の「女の子好き」って事でして。(笑)

>>  ちなみにこの子、前回の話で「スレンダー」と書こうとして、削った経緯があ
>> りますが、佐々木さん的絵ではどんな感じでしたでしょうか(笑)。

勿論、脱ぎ脱ぎして頂く以上は私の大好きな「スレンダー」ちゃんです。(核爆)

>> ★神風・愛の劇場第61話『合い鍵』
>> ■東大寺都編

成程、確かにあのくらい親密な付き合いがあれば合鍵ぐらいは預っていそうです。
滅多に行使しないのは、プライバシーへの配慮なのでしょうか。
それにしても「何か』をモロに見てしまった様で。
一般的に表現すると心霊体験という感じでしたが。(笑)

>> ■堕天使フィン・フィッシュ編

強い絆に嫉妬しているのかなぁ。

>> ■名古屋稚空編

アクセスに関する部分は、取りあえず勘繰らずに
素直に読んでおけばいいのですよね。(笑)
# 疑り深くなる一方。

>>  そう言えば今日一日分のミストと弥白の描写がまだ無いぞ(汗)。

たまにはお休みというか何も「無かった」という日があっても良いのでは。^^;
# シリーズ構成上、石崎さんサイドで語っておかないとマズイ事がある
# という場合に備えて、その二人の「月曜日」には言及しない事にしました。今回。
# で、そそくさと火曜日が流れていきます。(笑)


★神風・愛の劇場 第62話『包み』

■瀬川ツグミ編

●桃栗町郊外

学校に行っていない者同士でしたので、その朝、ツグミが起きたのは
八時過ぎでした。敢えて起こさなかったのですが、全は朝食の仕度の
終わった頃には一人で起きてきました。

「あら、おはよう」
「えっと、おはよございます」
「顔洗って来てね」
「はい」

背中越しに全の足取りに注意を払うツグミ。
どうやら壁づたいに歩いている様子です。

「(何か、変なのよねぇ…)」

小骨が引っかかっている様な、焦点の合わない疑問があるのですが、
それが何かをはっきりさせる事が出来ない間に彼は用を済ませて戻りました。

「大したものは無いんだけど、どうぞ召し上がれ」
「はい。頂きます」
「あ、御飯の方が良かったかなぁ?」
「大丈夫です」
「普段は?」
「御飯食べます」
「たまにはパンもいいでしょ?」
「はい」

話を合わせている訳では無い事は、食べっぷりですぐに判りました。
それにしても、とツグミは感じます。お行儀の良い子だなと。
夕食の時にも感じた事ではありますが、きっと躾に厳しい
親御さんなのだろうと想像します。

「(そうね、そういうものよ)」
「は?」
「あ、何でもないわよ。もっと食べる?トースト」
「はい。ください」
「ちょっと待ってね」



朝食を終えると、全は丁寧にお礼を言い、帰り仕度を始めました。

「もう、帰るの?」
「はい。あの…」
「なぁに」
「さんせっとくりふに此から行けますか?」
「う〜ん」

ツグミは頭の中で地図を開いていました。それから。

「海岸沿いの林を通って行く遊歩道があるのだけど、
 健脚向きだからお勧め出来ないな」
「けんきゃくって何ですか」
「ええとね…取りあえず私や全くんとは違う人達の事」
「そですか。だめですか」
「取りあえず今日はお家にお帰りなさい。そして、サンセットクリフへ
 行くのに途中でバスに乗ってもいいか、お父さんと相談するの」
「わかりました。聞いてみます」

表の通りに面した所まで、ツグミは全を見送りに出ました。
街まで送ろうかとツグミは言ったのですが、全は大丈夫ですと答え、
もう一度丁寧に礼を述べると、ゆくりと歩いて帰って行きました。
やっぱり買物ついでについて行こうかしら、そう思って財布を取りに
戻ろうとした時、近くに車が停まる気配がしました。
"待っていてくれ"という声がして誰かが降りてきます。
構わずに踵を返して家へ戻り始めるツグミ。
足音が確実に後ろに迫っていました。やがて、ツグミが小道を
半分ほど戻った辺りで呼び止められます。

「ツグミ」

立ち止まり、横顔だけを声の方に向けて答えます。

「どなた?」

困惑とも落胆ともつかない声音が続きました。

「それは無いだろう」
「冗談よ、お父様」

淡々と答えてから、ツグミはやっと身体を向けて、
彼、父親の方へと歩き始めました。

「元気そうだね」
「ええ、ご覧の通り。突然どうしたの?」
「ちょっと古い知り合いに講演を頼まれてね。
 今朝の飛行機で来たのだが、大学の方に顔を出す前に
 ツグミに会っていこうと思ったんだ」
「そう。お茶でも如何?」
「済まないが、余り時間がないんだ。10時の約束でね」
「あら残念。約束は大事ですものね」

返事のつもりなのか違うのか、一つ短く咳払いをすると
彼は持っていた包みをツグミに差し出しました。

「あれが、ツグミに食べて貰いたいと言ってこれを」
「まぁ、御馳走様。宜しく伝えておいてね」
「ああ、それから…」
「何時までこっちに居るの?」
「明日の夜には戻る」
「ホテルは?」
「取った」
「そろそろ行った方がいいわ」
「ああ。それじゃ」
「またね」

何かを言おうとして一度立ち止まったものの、
結局は何も言わずに彼は帰って行きました。
もっとも、ツグミ自身は既に玄関先まで戻っていて、
父親が何か言おうとしていた事に注意すらはらってはいませんでしたが。


■日下部まろん編

●桃栗学園校舎屋上

授業の合間の短い休憩時間に、まろんは稚空と落ち合っていました。

「て、いう訳なんだが」
「ぶ〜っ」
「ムクれたって仕方ないだろう」
「だって、腹立つでしょ?ノインに一杯食わされたなんて」
「まぁな。だが食っちまったもんは、な」
「いやに物分かりがいいわね。何か良い事あったの?」
「実はな」

稚空はアクセスの事を話しました。

「へぇ、そうなんだ。良かったね」
「ああ」
「でも、これで暫くは稚空は役立たずだね」
「何だよ、それ」
「アクセスとペアで一人前だし」
「おい…」
「怒った?」
「許してやるから、今夜家に来ないか?」
「嫌だよ〜。稚空一人の所なんて危なくて」
「俺ってほんと信用無いのな」
「その通り」

始業ベルに急き立てられて教室に駆け戻る途中、
まろんはフィンもアクセスの事を喜ぶだろうかと考えていました。

●桃栗町内某所

下校途中のまろん、都、稚空の三人。体育館は日替りで色々な部が
練習につかっていて今日は新体操部の午後の練習はありません。
ぶらぶらと途中の店を冷やかしていると、ずっと先の道を横切る人影が。

「あ、ツグミさん発見」
「ん?」
「あら、ほんとだ」

まろんに言われて二人が振り向いた後で、注目の当人は
つっと立ち止まってから、こちらを向いて手を振りました。
まろん達が近づいていくと、物静かな笑顔が迎えます。

「こんにちは、皆さん」
「こんちは〜」
「この前はサンキューな」
「二人で押しかけたって本当だったのね」
「私が無理に引き止めたんですよ」
「そんな事ないよ、助かったし」

そうだ。とまろんは思い付いた事を聞いてみました。

「今日は私が先に気付いたね」

ツグミは、うふふ、と短めに笑っただけでした。
そんな二人の顔を交互に見比べていた都が言います。

「ねぇ、何処か寄っていこうか」
「うん。そうしよう」
「だな」

三人の視線が集まった事を感じたツグミは、ちょっと困った顔で言いました。

「残念だけど、私はちょっと…」
「え〜っ、なんでなんでなんで」
「今日は家に着くのに時間かかりそうなの」

ツグミの言ったことの意味が判るまで、ちょっとだけ時間が必要でした。
それに真っ先に気付いたのは都です。

「ほれ稚空、あんたの出番よ」
「え、俺?」

●桃栗町郊外

「悪かったわね、名古屋さん」
「いや、大した事じゃない」
「いいのよ、コイツは暇と体力は余ってるんだから」
「そうそう」

ツグミが抱えていた山のような買物を稚空が手伝って運んだのでした。
ついでというか当然というか、一緒についてきた二人と共に
ティータイムにあいなったという次第です。

「それにしても辺鄙よね、ここ」

正直な都の感想に、まろんと稚空はぎょっとしました。
ツグミの方は笑って頷いています。

「都、ずばり言い過ぎ」
「つまり、まろんもそう思ったんでしょ」
「そんな事…ないよ」
「嘘ね」
「確かに嘘っぽわ、日下部さん」
「お願い、勘弁して」

延々と続く女の子のお喋りに退屈になってきた稚空。
何と言う事もなく、部屋の中を見回していました。
そして、ある物に目がとまり、妙に気になり出します。

「どうしたの、名古屋さん?」
「あ、ああ。何かなって、ちょっと」
「何よ何かって」

稚空の見ている方に向かう、まろんと都の視線。
綺麗に包装した箱が置いてありました。
見ただけで、大体察しがつく大きさと雰囲気を持った箱です。

「意地汚いわね、稚空」
「何も言って無いだろ」
「目が言ってるよ」
「お前らなぁ」

三人が言い合っている間に、ツグミはふっと席を立ち
いつのまにかお皿とフォークを三組持って来ました。

「日下部さん、それ、開けてみて」
「いいの?」
「ええ」

言われるままに包みを解くまろん。
それだけで甘い匂いが漂って来ました。そして蓋を開くと。

「あ、美味しそう」
「そういえば最近食べてないわね」
「おお、これは」
「潰しちゃうといけないから、悪いんだけれど
 皆さん自分で取ってくださるかしら」

ツグミはそう言うと、それぞれにお皿とフォークを渡します。

「いいのかな、コイツが催促したみたいで」

都はそう言って稚空を睨んでいましたが、
真っ先に自分の分は取っています。

「うるせ〜」

稚空も一つ取り、まろんは取った分を乗せた皿をツグミに差し出しました。

「それは日下部さんの分よ」

そこで初めてツグミの分のお皿が無い事に気付きます。

「食べないの?」
「お客様に勧めておいて、こんな事言っちゃ
 いけないのかも知れないけど、嫌いなの、それ」
「モンブランが?」
「うん。だからもし嫌いじゃ無かったら
 全部食べていって貰えると助かるんだけど」
「そういう事なら任せろ」

もう半分食べてしまっている稚空でした。



まろんは、また雨でも降らないかと思っていたのですが
残念ながらその日の雲は、晴もせず、厚くなりもせずの
鉛色の冬空のままでした。
ぽつぽつと気の早い街灯が灯り始めた道を帰っていく三人。

「マズいわねぇ、調子に乗って三個食べてしまったわ」
「俺も。晩飯軽くしとくかな」
「抜こうかな、私」

ふと立ち止まってしまったまろんに気付く稚空と都。

「どうしたの、まろん」
「…うん」
「そういえばあんた結局二個しか手伝わなかったわね。裏切り者」
「気になるのよねぇ」
「何がだよ」
「ツグミさん、嫌いなもの無いって言ってたんだけど」
「あれが唯一の弱点だったんじゃねぇの」
「それに嫌いなら、何で有ったの?」
「貰ったんでしょ、きっと」
「う〜ん…」

そんな様子のまろんを見ていた都。
ちょっとニンマリしてから、こう言いました。

「まろんが嫌いになったって意味のメッセージだったりして」
「…そんな事…無いよ」
「冗談に決まってるでしょ、何暗い顔になってんのよ」
「今度、本人に聞けばいいだろ」
「そう、だね…」

そうは言ったものの、聞かない方がいい事の様に
まろんには思えました。

(第62話・完)


# この話はあっさり終わるはずだったのに、意外に長い。
# おまけに決着してないし。(爆)

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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