神風・愛の劇場スレッド 第56話 『家族』(6/12付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 12 Jun 2000 16:55:47 +0900
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Lines: 435
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佐々木@横浜市在住です。

<8i07b1$phn$1@news01dh.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

>>  このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
>>  作品世界観が壊れるのが嫌な人は、読まないで下さいね。

という事で。


>>  長田さんからもフォロー入っていますが、先週のこち亀に登場したキャラです。

成程。こち亀は放送開始当初の数話しか見てないので引っかかりませんでした。^^;

>>  今回のシルクの使い方が、アキコ編に影響を与えないのかが心配です(汗)。
>>  いや、何となく…。

何となく大丈夫だと思います。^^;
# しかし桃栗町はアレですね、百鬼夜行といいますか、人外の連中が歩く歩く。(笑)

>>  はい。一応原作では魔王様には、実体がありました。
>>  でなければフィンが魔王様の事を愛する事が出来るはずもない(笑)。

やっぱり、そういう「愛」ぢゃないと妄想にならないと。(笑)

>>  既に神様と魔王、魔界と天界の設定に関しては、一応アニメからも原作からも
>> 離れた独自な設定にしている…筈です。

はい。私も、もう勝手に想像の翼がばんばん羽ばたいておりますから。^^;;;

>>  原作で、魔王が元々神様から分離した「寂しい心」と言うのは良いのですが、
>> 最後にそれをチェックメイトしてしまったのは、要するに自分の感情の一部を消
>> し去ったままって事なんだろうか…>神様。

傍観者として自らを律する為に敢えて不完全な精神のままとする事を選んだとか。
或いは切り放した結果生まれた「魔王」に引け目があって近付けないのかも。

>>  稚空とアクセスもツグミさん陣営に入りましたか、これは弥白様が苦しそうで
>> す。

あ〜、成程。陣営という受け止め方もあるのですね。^^;
単なる茶飲み友達ぐらいにしかツグミさんは思ってません、今のところ。(笑)
# 私的には最近なんだか弥白が可愛く思えてきたので(1)
# イヂワルする気はあんまり無い(2)のですが。
## さて、嘘は(1)と(2)のどっちでしょうか。^^;

>>  前も書いたのですが、実のところ二大怪獣に関してはあるシリーズ構成を感じ
>> 取っていて、その線でこちらも動かしていたりしますが、予想は当たるかな?

うふふ。(キモチワルイ ^^;)

>>  今回は書く時間があったので、無闇に長いです。
>>  土曜日の夕方から始まっています。

土曜日の夕方から書き始めたって事でしょうか。(笑)

>>  キャラが多いと、時間軸がいったり戻ったりで、読者が大変そうです。

申し訳ない事です。何話かずつまとめて読んでいただくと吉かも。

>> ★神風・愛の劇場 第55話『魔王の涙』

都ちゃんも着実に周りの事情に近づきつつある様で。
人間関係の矢印に変動が起こるのかどうか。
そしてフィンがまたまた寂しい思いをしてますねぇ。
スネて非道い事しないといいのですが。
# とか言いながら私も今回…。^^;;;;;

シルクが何だかとても素直な少年になってますね。
使い魔というイメージと違うのは、主人がノインだからでしょうか。
魔王様三原則(違)は出来ること/出来ないことの匙加減が
いい感じですね。ミストの昔語りと先日のノインの魔界レポートを
突き合わせると色々見えて来そうです。どこが「伝承」でどこが「事実」か等。

それにしても、そういう「写真集」だったとわ。
神楽は、もらったら卒倒してしまうのでは。*^^*
# それにしても大胆なお嬢様です。

# 物語を週明けにしなければと思いつつ、
# この好機を逃すのは忍びないという悪魔の囁きが。(笑)
## という訳で久々のバカ話フィールド展開!^^;

★神風・愛の劇場 第56話 『家族』

■名古屋稚空編

ツグミの家のリビングルームから窓の外を眺めている稚空とまろん。
辺りはどんどん暗くなって行きます。

「さっきより降りが激しくなってきたみたい」
「そうだな」
「多分、止まないわよ」

何故かツグミは面白がっている様です。

「傘を貸しましょうか。
 でも1本しか無いから一緒に入っていってね」
「それはちょっと…」

とは、まろん。

「じゃ、二人とも泊まってく?」
「いや、そういう訳には…」

とは、稚空です。

「あらあら。困ったわね」

全然困っている様に聞こえないのがツグミ。
結局、もう暫く待ってみるという事になり、予定外でしたが
夕食までもご馳走になる事になったまろんと稚空とアクセスでした。

急だったからとツグミは言い訳しましたが、まろんと二人で
賑やかだったキッチンから出てきたのはハンバーグステーキ。
アスパラとニンジンのソテーが付いてます。

「悪いな、二食もご馳走になって」
「いいのよ。元々、私がご招待したんだし」
「まともな飯を続けて食ったのは久しぶりだよな」
「黙ってろよ、アクセス」
「早く食べようよ、冷めちゃう」

こんなに大勢で食べる夕食はどのくらいぶりだろうかと
ツグミは考えていたのですが、思い出す事は出来ませんでした。



夕食後、稚空は皿洗いぐらい手伝うと言ったのですが、邪魔と一蹴され
リビングでお茶をすすっていました。キッチンからは相変わらず
楽しそうな声が聞こえています。
所在なげ稚空とアクセス。持て余した暇をつぶしたいと思ったとき
ふと、ずっと感じていた違和感に気付きました。

「そうか」
「何だよ」
「彼女、TV見ないんだよな…」

リビングに在るはずの物が無いので、妙な感じを受けたのでした。

「いいんじゃねぇの、別に」
「なんで」
「オイラ達の世界にだって無いぜ」
「まぁ、そうだろうけどさ」

そんな事を二人が話していると、まろんとツグミが戻って来ました。
まるで稚空達の話を聞いていたかの様にツグミは言いました。

「御免なさいね。暇でしょう?」
「いや、別に」
「でも、夜は長いわ」
「だからそれは」
「まだ、帰る希望を捨ててないのね?」
「ああ」
「でも、更に雨が激しくなってるけど」
「何?」

稚空は窓に近づいて行きました。真っ暗な風景からはよく判りませんが
窓から漏れる灯りに照らされているテラスの床には休むことなく
雨の描く斑紋が拡がっていました。

「…」
「構わないから泊まって行きなさいな」
「しかし、女の子の家に泊まるっていうのは」
「友達の家に泊まるのが特別なことなの?」
「友達?」
「違った?」
「いや」

丸め込まれた様な気もしましたが、強いて断わるのもどうかとも
思ったので世話になることにした稚空でした。
もっとも、とっくに帰る気が無くなっている様に見えるまろんが
気になったからというのが正直なところではあるのですが。



ツグミは稚空を客間に案内した後で、まろん共々にもう一つ別な部屋に
連れていきました。もちろんアクセスも着いてきています。
最後に部屋に入ったツグミが灯りを点けると三人は嘆息を洩らしました。
扉の部分とその正面の小さな窓に面した机、それ以外の全ての壁は
作り付けの書架になっているのでした。そして透き間無く収められた
膨大な量の本は一部が他の本の上に乗せられて辛うじて棚に入っている
状態でした。

「凄いな」
「私もこの部屋は初めて」

"この部屋は"という部分にちょっと引っかかった稚空でしたが
その素振りは注意深く隠しました。

「父の物よ。私にはサッパリ用が無い物だけれど。
 名古屋さんの暇潰しになる本が一冊ぐらいはあるかも」

本棚をざっと眺めた稚空が言いました。

「ツグミの親父さんって、もしかして医者か?」
「ええ。よく判ったわね」
「俺の親父も医者でね。何処かで見たような本がある」
「そうなの。じゃ、あんまり面白くないかもね。ここは」
「いや。そうでもなさそうだ」

四面の書架の内の一面だけ、背表紙からして他とは違う本が収まっています。
しかも、その棚が特にぎゅう詰めになっているのでした。
まろんもその棚の本を下から目で追っています。
そして一冊の本に目を止めて聞きました。それが最初に見付けた
日本語の背表紙だったからなのですが。

「『神秘主義』って何?」
「錬金術とか魔法とかそういう話よ」
「親父さんの趣味なのか?」
「そうらしいわ。本当は文学部出て研究者とか翻訳家になりたかったんだって。
 でも父の実家が代々お医者だったから許してもらえなかったみたい」
「親の仕事と同じなんて下らねぇ」
「まったくね」

言ってしまってからしまったと思った稚空でしたが
すぐにツグミが相槌を打ってくれたので安心しました。

「良かったら適当にながめてみてて。私達、お風呂に入ってくるから」
「ああ」

扉が閉まってから暫くして稚空は気付きました。

「"私達"?」
「確かにそう言ったぜ」

アクセスと顔を見合わせる稚空でした。



それから暫くは適当に本棚から読めそうな本を手に取っていたのですが
どうも二人の様子が気になって仕方ありません。
そっと扉を開けて書斎を抜け出します。

「おぃ、シンドバッド」

何故か小声になっているアクセス。

「静かに」

何故か壁を背にして抜き足の稚空。
男の勘がバスルームの在りかを教えています。
一枚の扉の前までやってきました。中からは微かに話し声が
聞こえてきます。はしゃいでいる様な声が。

「この前はフィンちゃんとも一緒に風呂入ってたよな」
「またしても俺というものがありながら」
「ま、オイラとしては相手がフィンちゃんじゃなけりゃ
 構わないけどさ」
「俺は納得出来ない」

扉の向こうは脱衣所で、その先が恐らく浴室でしょう。
稚空はそっと扉を開けてみました。
今度は、声がはっきりと聞こえます。

「こんなトコはどうかしら」
「きゃははは。やめてってば」
「次はここよ」
「そう来たか。ではお返しよ」
「いきなりそこは…ずるい」

扉の透き間に耳をそばだてている二人。
稚空の手がドアノブに伸びます。

「行く…のか、シンドバッド…」
「気にならないか?」
「なる。物凄く気になる」
「よし…」

しかし扉を10センチ程開いたところで手が止まりました。

「どうしたシンドバッド」
「やっぱりマズいかな」
「何が」
「まろんは兎も角」
「ツグミさんにはメシの恩があるかな、やっぱ」
「そうじゃなくてさ」
「なんだよ」
「俺達を信じて泊めてくれたんだし」
「…成程」

そっと扉を閉めて、退散する稚空とアクセスでした。



バスタブの縁に座っているツグミ。まろんは浴室の扉の脇に立ってます。
暫くの沈黙の後、小さく首を傾げたツグミが言いました。

「書斎に戻ったみたい」
「な〜んだ」

まろんはお湯の入った手桶を下ろしました。

「案外、度胸無いのね、名古屋さんって」
「そうかなぁ。結構強引だけど」
「普段そういう人に限ってココ一番には弱いのよね」
「そういうものかな」
「それにしても残念だわ」
「ツグミさん、覗かれたかったの?」
「折角弱みを握るチャンスだったのに」

そう言いながら笑っているツグミ。
どの辺が本心なのか、まろんにも今一歩判らないのでした。

「まぁ、いいわ。今度こそ本当に入りましょ」
「そうね」

浴室の扉を開けると浴室内で脱いだ服を脱衣所に放り出した二人でした。

■瀬川ツグミ編

夜半になっても雨は続いていました。
灯りを落としてベッドに入っているツグミとまろん。
ついさっきまでリビングで皆で話し込んでいたので二人とも
まだ睡魔には襲われてはいませんでした。

「ねぇ、ツグミさん」
「なぁに」
「今日はどうして稚空を誘ったの?」
「何でかな。興味があったのかも」
「ええっ!」
「あら、ヤキモチ?」
「違うけど…」
「名古屋さんって、日下部さんの事好きなんでしょ?」
「さぁ、どうかなぁ」
「多分本気だと思うけど」
「どうして?」
「今日、泊まってるし」
「そこから"マジ"って結論にどうして達するの?」
「第3の選択をしなかったから」
「第3の選択って?」
「私から傘を借りて一人で帰るっていう選択よ」
「単に思い付かなかっただけじゃ」
「違うと思う。日下部さんを置いて行きたくなかったのよ」

そうなのかな。稚空のことを考えてみるまろんでした。
そして、ふと思い付いたことを聞いてみます。

「私と稚空をくっつけたい訳?」
「それは別問題よ。日下部さんは私のもの」
「またまた大胆発言出ました」
「名古屋さんにも聞かせて見たいわね。反応が楽しみ」
「意地悪〜」
「かもね」
「稚空どうしてるかな」
「まだ本読んでるんじゃないかな。紙のこすれる音がする。
 アクセスは寝ちゃったのかも、声がしない」
「流石…」
「きっと私達の事が気になって眠れないのよ」
「いいよ。起きててもらおう。ガードマンとして」
「日下部さんも意地悪」
「あれ〜やっと気付いたの?」
「ふふ」

ツグミの横顔を見ているまろん。もっとも雨降りなので月灯りもなく
ぼんやりとしか判らないのですが。しかしツグミには関係ありません。

「どうしたの。じっと見詰めて」
「うん…聞いていいかな」
「秘密も遠慮も無しって言ったでしょ」
「じゃ聞いちゃうけど」
「ええ」
「さっきお父様の事を話した時ね、変な感じがしたの」
「どんな感じ?」
「怒ってるみたいな」
「そうかな」
「やっぱり許せない?」
「再婚の事なら気にして無いわ。父には父の人世があるのよ」
「私だったら割り切れないかも」

ツグミには自分の考え方が、まろんに到底受け入れられない物で
ある事が直感的に判りましたから、それ以上続けようとは思いませんでした。
もっとも、ツグミ自身、本当に割り切れているのか自信は無いのですが。

「ご両親、御仕事から早く戻って来るといいわね」
「うん」

ツグミはまろんの頬にそっと手を触れました。
両親の事に関しては、まろんが全てを語ってはいないことも
勿論ツグミは知っています。ですから特に意識したのでは無いにしても
今日自分の親のことを話題にした事をツグミは実は後悔していました。
その思いがまろんに逆に何かを感じさせてしまったのかも知れない。
そんな事をツグミは考えていました。

■堕天使フィン編

たいして実害は無いとはいえ、雨の中を飛び回っている気にはならず、
まろんの部屋に戻ったフィン。まろんは帰っていないらしく部屋は真っ暗です。
その闇の中に小さな灯りが点滅していました。
放って置こうかとも思いましたが、何となくボタンを押してみます。
聞き覚えのある声が聞こえてきました。

「フィン、戻ってる?ごめんね。雨が降って来ちゃって
 今晩も帰れないかも。作り置き無くなっちゃったけど
 冷凍庫にピラフとか在るはずだから、チンして食べてね。
 気が向いたら何か自分で作ってもいいよ。
 明日はご馳走作るから何が食べたいか考えといて。じゃぁね」

夕方の時刻を告げている機械の声に向かってフィンは言いました。

「二度と帰って来るな、バカ」

誰からも返事はありませんでした。

■瀬川ツグミ編2

翌朝にはすっかり雨は上がっていました。
朝食の準備でもやはりお邪魔虫扱いの稚空とアクセスでしたが
タダ飯にありついているので文句は言いません。
もっとも、ツグミの予想通りだったのか、稚空は眠れなかったらしく
朝はぼんやり気味ではあったのですが。
それでもツグミにとっては賑やかな朝食を済ませると、着替えの事もあり
稚空とまろんは早目にツグミの家を辞しました。
暫くポーチに出ていたツグミでしたが、二人の気配を
感じ取れなくなると、やっと部屋に戻りました。

「友達っていうよりは、ライバルよね」

誰も居ない部屋で、ツグミはぽつりと呟くのでした。

(第56話・完)


#「稚空の根性無し〜!」というのが本作に対する正しい感想です。(笑)

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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