神風・愛の劇場スレッド 第55話 『魔王の涙』(前編)(6/11付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 11 Jun 2000 23:22:22 +0900
Organization: So-net
Lines: 334
Message-ID: <8i07b1$phn$1@news01dh.so-net.ne.jp>
References: <8gcsjp$qc7@infonex.infonex.co.jp>
<8grgul$kb9$1@news01dg.so-net.ne.jp>
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<8he28m$p8g$1@news01bj.so-net.ne.jp>
<8hfjt4$9cs@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<8hfjt4$9cs@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

 こんにちわ〜。
 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
 作品世界観が壊れるのが嫌な人は、読まないで下さいね。
 今回は長いのでフォロー&前編、後編の2分割にしました。
 こちらはフォロー&前編です。

 では、ゲームスタート!



>>>  「神風強盗ダルク」って一体…(笑)。<見てしまったらしい
>
>パロディ物か何かでしょうか。

 長田さんからもフォロー入っていますが、先週のこち亀に登場したキャラです。
 コスチュームと予告状(?)とOP(初代)の冒頭シーンのパロディがあった
かな。
 確か原作の時には、特殊刑事課の刑事がジャンヌのコスプレをしていて、刑事
が怪盗でどうするとか突っ込みが入っていた記憶がありますが…。

>ふむ。フィンはまろんちゃんには自分に似た所を見出してしまい
>イジワルしちゃったが、しかし都ちゃんには、そうでは無いのは
>やっぱり似た者同士って気付いてないのか、それともフィンの成長なのか。

 フィンちゃんの都ちゃんに対する感情は、当初都ちゃんのまろんちゃんに対す
る感情と似た部分ががあったのですが、いつの間にか立場が逆転していて…とい
う関係かなぁと思っています。…実は行き当たりばったりでやったらこうなった
のですが(ぉぃ)。

>憑依については「するどい」とだけ言っておきますね。^^;

 今回のシルクの使い方が、アキコ編に影響を与えないのかが心配です(汗)。
 いや、何となく…。

>実は魔王様が抽象的な存在ではなく、ちゃんとした人格らしきものを
>具えた「キャラ」として描かれているのは非常に好都合です。
># 原作でそうなんでしたっけ。

 はい。一応原作では魔王様には、実体がありました。
 でなければフィンが魔王様の事を愛する事が出来るはずもない(笑)。
 最終決戦の前に魔王様は実体を捨てて、絵の中(?)に入ってしまいますが、
これは原作のジャンヌでは悪魔はあくまでも絵に取り憑くという設定のためだと
思います。

># 魔界の描写を読んでいて未来の地球とか平行世界とかを
># 連想してしまうのは性なのかなぁ。エセSF者の。(笑)

 既に神様と魔王、魔界と天界の設定に関しては、一応アニメからも原作からも
離れた独自な設定にしている…筈です。
 原作で、魔王が元々神様から分離した「寂しい心」と言うのは良いのですが、
最後にそれをチェックメイトしてしまったのは、要するに自分の感情の一部を消
し去ったままって事なんだろうか…>神様。

>シルクは思ったよりガキっぽい(笑)のですが、
>これで全くんの影武者(違)は務まるんでしょうか。^^;;;;;

 シルクの精神年齢は原作を読んだときの印象に合わせていますが、今後段々と
成長させて行く積もりです。

>★神風・愛の劇場 第54話 『見知らぬひと』
>
>■瀬川ツグミ編

 ツグミさんが弥白にまた一歩近づきました。
 稚空とアクセスもツグミさん陣営に入りましたか、これは弥白様が苦しそうで
す。

 前も書いたのですが、実のところ二大怪獣に関してはあるシリーズ構成を感じ
取っていて、その線でこちらも動かしていたりしますが、予想は当たるかな?

 今回は書く時間があったので、無闇に長いです。
 土曜日の夕方から始まっています。
 キャラが多いと、時間軸がいったり戻ったりで、読者が大変そうです。


★神風・愛の劇場 第55話『魔王の涙』

■東大寺都編

●都の家 土曜日の夕方

「こんばんわ」

 天使がベランダに舞い降りたのは、都が夕食の支度を始めようと思い始めた頃
でした。

「あら、いらっしゃい。今日は早いじゃない」

 都はフィンの方を向くと微笑みます。
 見るとフィンは、何かを手に持っています。

「あの…これ、一緒に食べない?」

 フィンが布巾を取ると、後は焼けばいいだけの状態のグラタンがラップされた
状態で少し大きめなグラタン皿に載っていました。
 それとポテトサラダ。更に小鍋の中には、野菜のスープが入っています。

「これ…グラタン? オーブンで焼けばいいのね。どうしたのこれ? フィンが
作ったの?」
「…」

 答はありませんでした。
 自分で作ったのであればそう言うはずですから、誰かに作って貰ったのでしょ
う。
 以前、フィンが自分も都と同じく大切な人を裏切ったと言っていた事を都は覚
えています。恐らく、その「大切な人」に作って貰ったんだ…。そう、都は推理
しました。

(誰だろう、フィンの「大切な人」って…まさか…ねぇ)

 そう思う都でしたが、それを問い質すような事はもちろん出来ません。

「そこで待ってて。今、支度するから」

 フィンをダイニングの椅子に座らせると、都は夕食の支度にかかります。
 今日は買い物をして来たので別のメニューを考えていたのですが、フィンが調
理済みの料理を持って来てくれたので、内心ラッキーと感じています。
 グラタンはオーブンレンジに入れて焼き、その間にフランスパンを輪切りにし
てオーブントースターに入れます。
 スープの量が少なく感じられたので、大きめの鍋に移して冷蔵庫からソーセー
ジとキャベツを投入、更に水とスープの素と塩胡椒少々を加えて具沢山のスープ
にします。
 ポテトだけでは寂しいので、レタスとトマトを加え、より大きめの皿に移しま
す。

「お待たせ〜」

 焼き上がったグラタン──マカロニグラタンでした──は、半分ずつに分けて、
元からの皿はフィンに、別の皿に自分の分を盛りつけます。
 そして軽くトーストしたパンとスープ、サラダの皿を並べます。
 そして、ワイングラスを並べます。

「ねぇ、ワイン飲む?」
「え、ええ…。だけど良いの?」
「大丈夫、料理用で栓開けて暫く経つから、アルコールも殆ど抜けちゃってる。
ジュースみたいなものよ」

 都は、料理用の安い白ワインをグラスに注ぎます。

「それじゃあ、頂きまーす」

 都はグラスを掲げて微笑みます。

「ほら、何遠慮してるのよ。元はと言えば、あんたが持ってきた料理じゃない」

 フィンが食べ始めないのを見て都が声をかけました。

「え、ええ…」

 言われて、フィンも料理を食べ始めます。
 それを見て、都も料理に手を出します。
 まずはグラタンから。

「あれ?」

 一口食べて、都は気付きます。

(この味、どこかで…。でも…まさかよね)


■使い魔シルク編

●数ヶ月前 桃栗タワー

 再び目覚めた時、目に入ったのはまぶしい「光」でした。

「人間界へようこそ、シルク」
「あ…」

 ぼんやりとしていた思考が、段々とはっきりして来ます。
 それと共に、自分が今どこにいるのかに気付きます。
 ここは、何か高い塔の上のようでした。

「それじゃあ…僕は人間界に来たんでぃすね。ノイン様ぁ」
「そうですよ」

 シルクは、ノインによって魔界から人間界に連れて来られたのですが、その際
に「魔呪符」の姿に変えられて、再び人間界で元の姿に戻されたのです。
 シルクは、周りをキョロキョロと見回します。
 まず目に入ったのは、人間界の町並みです。
 これは、群れて住む事が少ない魔界の住人から見ると珍しいものでした。
 そして、街の中を歩く人間達。
 魔界の住人達も人間と似た姿の者が少なくなかったので、それ自体は珍しくも
ありませんが、それでもこれだけの数の人間が集中しているのには圧倒されます。

「ねぇねぇノイン様。あれはひょっとして『海』でぃすか? 綺麗です〜」

 シルクは、街の前に何処までも広がる水面を見て訪ねます。
 『海』と言うものは『知識』として知ってはいても、実際に見るのは初めてな
のでした。

「そうですよ」
「じゃあ、舐めるとしょっぱいんでぃすか?」
「舐めてみますか?」
「はい、ノイン様」

 そう言うと、シルクは人間界の右も左も判らない状態で、『海』に向けて飛ん
で行きました。ノインを置き去りにして。

「相変わらずシルクはせっかちですね…」

 ノインは苦笑すると、シルクの後を追って飛び立ちます。
 もちろん普通の人間からは、ノインやシルクの飛んでいる姿は見えません。

 塔から海までは、決して速いとは言えないシルクの飛翔速度でも1分とかかり
ませんでした。さっそくシルクは水面まで下降し、水をちょっと舐めてみます。

「本当にしょっぱいです〜」

 思ったより塩辛いので、シルクは悲鳴を上げました。

「ハハハ…シルクはせっかちさんですねぇ」

 追い付いて来たノインが、シルクの様子を見て微笑んでいます。

「あ…ノイン様、あれがひょっとして『お日様』でぃすか」
「そうですよ」

 水面から頭を上げたシルクの目の前で、夕陽が今まさに沈もうとしていました。

「綺麗です〜。こんな景色、魔界では見た事が無いでぃす」
「そうですね。私も、こんなに美しい夕陽を見るのは久しぶりです」

 魔界にも「光」はあり、「昼」も「夜」もありましたが、その移り変わりは突
然で、地上界のように「夕焼け」という段階を経ることは無いのです。

「これが『夕焼け』でぃすか…」

 それは、シルクが人間界で見た初めての美しい光景でした。
 その日以来、毎日日が沈む頃になると、海まで飛んで夕焼けを眺めるのがシル
クの日課となったのでした。


●現在 紫界堂聖の屋敷

「う…ん…」

 目を覚ましたシルクは、自分が寝ている場所がいつもと異なる事に気付きます。
 それどころか、自分の身体の様子もどこかが変なのです。
 シルクは、自分の手を見てみました。

「あ…」

 シルクが見たものは「人間」の手なのでした。

「そうか…僕は『人間』になったんでぃすね」

 シルク──その姿は今では「高土屋全」のものでしたが──は、聖が人間の姿
となったシルクの為に用意したベットから起き上がると、歩き出そうとします。

「あ…わ…おっとっと…」

 しかし、どうにも上手く歩く事が出来ません。
 身体の構造が異なるのもそうですが、そもそも本来の姿のシルクは、飛んでい
るのが普通であったので「歩く」事は殆ど無かった事も、上手く歩けない原因と
なっていました。
 結果、シルクは壁沿いにそろりそろりと歩く事になりました。
 廊下に出て暫く真っ直ぐ歩くと、難関である階段が待っています。
 昨晩はこっそり飛んで上ろうとした所を聖に見つかり、こっぴどく怒られてい
ます。
 また怒られたくなかったので、手すりに掴まってそろそろと階段を降りていき
ました。

「おはようございます。ノイン様」

 いつもの数倍の時間を費やして、漸くシルクはリビングルームに辿り着きまし
た。

「おはよう、シルク。朝食、出来てますよ」
「はぁい」

 リビングと繋がっているダイニングのテーブルにシルクは着席します。
 本当は聖を手伝おうとしたのですが、食器を割られてはたまらないと聖に止め
られました。

「はい、召し上がれ」
「頂きまぁす」

 その日の朝食のメニューは、圧力釜でその日の朝に炊いたご飯と、出汁を取っ
た煮干しがそのまま入っている豆腐の味噌汁、鮭の切り身に、白菜の漬け物とい
う純和風。
 もちろん聖が自ら料理したものです。
 現在住んでいる土地の習慣に合った生活。それを聖は心がけているのでした。

「これ、全部食べて良いんでぃすか?」
「身体が大きくなったのですから、これでも少し少ない位ですよ。ちゃんと残さ
ずに食べるんですよ」

 箸の使い方は、以前から聖に仕込まれているので、問題はありません。
 シルクは手先は割と器用なのでした。

「昨日も言いましたが、お前は今日から人間として振る舞わなくてはいけませ
ん」
「はぁい」

 食事が終わった後、緑茶を飲みながら聖は話し始めます。

「ですから、昨日の晩のように飛んだりしてはいけませんよ」
「はぁい」
「ちなみに、あなたがどこで何をしているのか私にはお見通しですから、私のい
ない所で飛ぶのも駄目ですよ」
「そ、そうなんでぃすか?」
「私を甘く見ないことです」
「まずは、普通に歩けるようにしないと、何も出来ませんね」
「です…」
「まずは、歩く練習から始めましょう」
「はぁい」
「と言う訳で、これを使いなさい」

 と言うと、聖は用意してあった杖をシルクに渡します。

「最初はこれを使っても良いから、街に散歩にでも行きなさい」
「良いんでぃすか?」
「これは、歩く練習と、シルクが人間の中に溶け込む練習を兼ねていますから。
それに…」
「それに?」
「今日も見に行くのでしょう? 夕焼けを」
「あ…はい」
「繰り返しますけど、飛んで行くのは駄目ですからね」
「はぁい…」

 今日は、とても疲れる一日となりそうでした。

(第55話 前編 完)

 では、後編へと続きます…。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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