神風・愛の劇場スレッド 第54話 『見知らぬひと』(6/5付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: hidero@po.iijnet.or.jp
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 5 Jun 2000 16:12:36 +0900
Organization: Infonex Corporation
Lines: 346
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<8gtb9t$an1@infonex.infonex.co.jp>
<8he28m$p8g$1@news01bj.so-net.ne.jp>

佐々木@横浜市在住です。

<8he28m$p8g$1@news01bj.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

ども、こんにちわ。

>>  「神風強盗ダルク」って一体…(笑)。<見てしまったらしい

パロディ物か何かでしょうか。

>>  このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
>>  作品世界観が壊れるのが嫌な人は、読まないで下さいね。

です。


>>  ちなみに今までの展開でどこが思わぬ展開でしたでしょうか?

散歩しているツグミさんが山茶花邸に着いちゃった件とか。
# 何かが降りてきてキーを打たせたって感じです。(笑)

# 石崎さんパートは殆どが驚きの連続。特に弥白様の行動は。^^;;;

>>  そして都ちゃんは実はまろんちゃんとも似た者同士で…と、稚空に指摘されて
>> いましたっけ。

ふむ。フィンはまろんちゃんには自分に似た所を見出してしまい
イジワルしちゃったが、しかし都ちゃんには、そうでは無いのは
やっぱり似た者同士って気付いてないのか、それともフィンの成長なのか。

>> >ノインの使い魔にするか、TV版でのチョイ役の路線にするかで
>> >迷っていたのですが、これで決定ですね。
>>  今回で、かなりな重要キャラにしてしまいました。

珍しく「男の子」キャラが増えましたね。(笑)

>>  今まであるのか良く判らなかった、アキコの「感情」について、初めて明らか
>> になりました。「憑依」が出来る事が明らかになったりと、番外編に見せて実は
>> 設定編なのかとか考えている所。

実の所、アキコの描写に関しては私の幽霊感とでもいうべき物が反映されています。
何か未練があって彷徨っているのですが、その未練(思い)が強すぎると
他のこと(感情とか)は置き去りになっているだろうという事なのです。
で、今回の事で少し思い出したという訳です。
憑依については「するどい」とだけ言っておきますね。^^;

>>  「死んだ」という言葉に反応する所を見ると、アキコはまだ自分が死んだ事を
>> 認めていなかったりとかするのでしょうか(違)。

一応、アキコは自分が正しい状態ではない(とっとと人間界を去るべき)事は
理解しています。しかし、それが出来ないのは…アキコ編のオチなので。^^;

>>  ちなみに今回書けなかったのですが、第53話の構想では、都ちゃんが買い物
>> の為に外出している時にアキコとそれに絡む男達を目撃して…という展開を考え
>> たのですが、そこまで書いている余裕が無かったのが少し心残り。

目撃のチャンスはきっと今後もあるでしょうから。^^;;;

>>  では、本編。今回も設定とかありますが、そちらの設定に影響が無ければ幸い。
>> 第53話『実験室』

いや〜、遂にラスボス(違)の魔王様登場ですね。
実は魔王様が抽象的な存在ではなく、ちゃんとした人格らしきものを
具えた「キャラ」として描かれているのは非常に好都合です。
# 原作でそうなんでしたっけ。

魔王様は新たな命の創造を今でも繰り返して居るらしいですね。
果たして何を求めての事なのか。
元人間のノインに特別な地位を約束したりした真意なんかも
もうひとヒネリありそうな感じで興味がつきません。

# 魔界の描写を読んでいて未来の地球とか平行世界とかを
# 連想してしまうのは性なのかなぁ。エセSF者の。(笑)

シルクは思ったよりガキっぽい(笑)のですが、
これで全くんの影武者(違)は務まるんでしょうか。^^;;;;;


# ではでは本編。


★神風・愛の劇場 第54話 『見知らぬひと』

■瀬川ツグミ編

●ツグミの家

途中で互いに気付いていましたので、予想どおりと言うべきなのですが
二人分にしては大目だった夕食を何とか攻略すると億劫にならない内に
後片付けまで一気に済ませます。その後で暫くは取り留めの無い話をし、
それから入浴。何時もの様にふざけあっていて2時間くらいかかりました。
バスルームから出て鏡の前でまろんの髪を梳くツグミ。
なんだか照れ臭いひとときでしたが、それもまた嬉しいまろんでした。
ふと、手を止めるツグミ。そして何事かを呟きました。

「え、何か言った?」
「あ、御免なさいね。ちょっと思い出した事があって」
「大事な事?」
「というか、何で気付かなかったのかなって」
「何何何〜、気になるなぁ、その言い方」
「ふふ」

またブラシを動かし始めるツグミ。手を休めずに言いました。

「ねぇ、メルヴィスのコンディショナ使ってる人知ってる?」
「ええっと、タワー広場のとこの美容室よね」
「そうそう。そこのブーケの方の奴」
「結構流行ってるって聞いたからクラスには一人ぐらいは居るかも」
「日下部さんの身近には?」
「居ないと思うな。あそこって結構お値段が…ねぇ」
「そう」
「何で?」

ツグミは答えませんでした。暫く黙っていたまろんでしたが
痺れを切らしてツグミに言いました。

「内証なんてずるいな」
「そうね。長くなるかもしれないから先に寝巻着ましょう」

ちょっとだけ誤魔化されるかなと考えないでもないまろんでした。
ですがベッドの上に座ると、ツグミの方から話を切り出しました。

「この前の晩、日下部さんが泊まっていった日」
「うん」
「誰か外に居たような気がしたって、私言ったでしょ」
「でも誰も居なかったよね」
「それが、そうでも無いみたいなの」
「どういう事?」

ツグミは林で見付けた落とし物の事をまろんに話しました。

「それがメルヴィス?」
「そう。そしてもう一つあるのよ」

ツグミはためらいがちに昼間話さなかった事を告げました。

「もう!、気を付けてよツグミさん」
「ごめんなさい。もう平気だから」
「それで誰なのその人?」
「判らない。お名前を教えてくれなかったのよ」
「照れ臭かったのかしら」
「何だか動揺してるみたいだったの」
「何で?」
「その時は気付かなかったんだけど」

ツグミはまろんが考えを整理しやすい様にわざと間を置いて話しました。

「その時救けてくれた彼女もメルヴィスなの」
「それってもしかして…」
「あの晩ここに来ていた人なのかも」
「ツグミさんに片思いしてたりして〜」

わざとらしく、ねっとり話すまろん。

「嫌だ、ストーカーって奴?」
「そうそう」
「日下部さんなら兎も角、私なんて」
「ははは…」

そういえば付きまとわれる心当たりがある事を思い出して
途中から笑いがひきつってしまったまろん。
ツグミも当然すぐに気付いたのですが、敢えて聞きはしませんでした。



ベッドにまろんが潜り込んでから、ツグミが寝室の灯りを落とします。
どちらともなく手を差し伸べて、触れ合った手と手をつなぎます。
そして。

「ねぇ…」
「ええ、日下部さんの気持ち、判る」
「うん」
「一緒にいられるだけでも充分よ」
「手を離さないでね。悪い夢を見ない様に」
「もっと悪い夢を見ちゃうかも」
「ツグミさんがいるから平気」
「お休みなさい」
「お休み」

二人ともその夜は互いに触れ合う手以上のものを求める気には
ならなかったのでした。
二人とも心の中に別な友人への心配事があったから。
その思いが自分だけが幸せなひとときに浸る事をためらわせたのでした。
それに、それだけで充分という思いも嘘ではなかったから。



ツグミは夢を見ました。
真っ暗な闇の中を何処までも落ちていく自分。
何時までも何時までも落ち続けていきます。
伸ばした手は虚空をつかむだけ。
と突然、その手を掴んで引っ張る者があります。
いつのまにか辺りは闇ではなくなっていました。
ツグミの手をとっているのは、あの少女でした。
大きな黒い瞳がツグミをじっと見ています。
あなたは、誰?。ツグミの問いに答える声はありません。
ツグミがその顔に手を差し伸べると、ふっとまた闇がやってきました。

「まって…」

声が寝室の闇に吸い込まれます。
夢から醒めたのだと気付かせたのは、ほんの鼻先から聞こえる
まろんの静かな寝息でした。
ツグミはまろんの寝顔に向かってそっと囁きます。

「ごめんね。また浮気しちゃった」

■名古屋稚空編

●桃栗町中心部

少しでも情報を集めようと思ったのが失敗だったと
稚空が後悔したのは街に出てほんの1時間も歩き回った後でした。
休日の街には家族連れやカップルばかりが目立ちます。
なのに俺は…などと考えると嫌気がさしてきます。

「機嫌直せよ稚空」
「うるせ〜。休みの日に男同士で歩き回ってりゃ機嫌も悪くなる」
「そりゃお互い様だぜ」
「だろうな」

口に出してしまって余計に面白くなくなった二人。
押し黙って歩いていると、何処からか声がしました。

「やっほ〜、稚空〜」

稚空が声のする方を見ると紙袋を抱えた、まろんが手を振っています。
運河を渡る橋の上、稚空とアクセスが歩いてきた角を遥に見下ろす様な
位置にいます。稚空は直ぐに駆け出して行きました。
そして橋に上がっていくと待っていたまろんに言います。

「離れてても俺に気付くなんて、やっぱり俺が好きなんだろ」
「ううん。全然。ツグミさんに教えてもらったの」
「え?」

まろんが指差した先、橋の反対側の袂にぽつんと佇んでいるツグミが見えます。

「お早う、名古屋さん」
「やあ」

晴れかけた気分がまたちょっと曇りそうな予感の稚空です。
まろんにそっと耳打ちしました。

「何してんだよ二人で?」
「朝御飯の買物。急にパンが食べたくなったんだけど
 ツグミさん家に無かったのよ」
「おい、なんであいつの家なんだよ」
「ゆうべ泊まったからに決まってるでしょ」

頭を抱えてしまう稚空。躊躇無く教えてくれるという事は
つまり稚空は当事者扱いされていないという事なのでは。
やっぱり予想どおり暗雲がたちこめてきたのでした。

「仲がいいのね」

いつのまにかツグミも傍に来ていました。

「そんなんじゃないって」

また否定されて、すっかりどんよりしてしまった稚空でした。

「ねぇ、良かったら、名古屋さんも家に来ません?」
「え?」

驚きの声を上げたのは、まろんでした。
ツグミの腕を取って稚空から離れると小声で言います。

「いいの?」
「昼間だし」

ツグミがぺろっと舌を出したので、やっと意味が判ったまろん。
そうしてくすくす笑っている二人を傍で見ている稚空は
すっかり置いてきぼりなのでした。

●またツグミの家

結局ついてきた稚空を含めての、ちょっと遅めの朝食を摂るツグミとまろん。
もっとも、稚空は出かける前に軽く食べてきていたので本当に付き合い程度です。

「ね、稚空」
「何だよ」
「実は、ちょっと用があったのよ」
「言ってみな」
「学校、何か変じゃ無い?」
「おい、ちょっと待て」

稚空の視線がツグミの方を向いているので、彼の言いたい事はすぐにわかりました。

「ああ、いいのいいの。ツグミさん大体は事情を知ってるし」
「知ってるって」
「正確に言うとバレちゃってるって感じかな」
「そうなのか」

それにはツグミが答えました。

「そういう事なの。でも気になるなら席を外しましょうか」
「いや、まろんがいいなら俺は構わない」

稚空はそういうと、まろんに頷きかけて話を促します。
まろんは先週学園内で感じた妙な雰囲気の事を話しました。
ただし、推測の域を出ない夢の話は交えませんでしたが。
黙って聞いていた稚空は、まろんの話が終わると自分の此までの
調査情況を伝えました。残念ながら、問題の核心が掴めていない事も含めて。

「つまりお互いサッパリって事なのね」
「残念ながら、そういう事だな」

話が途切れるのを待っていた様に、今まで黙々と食べていたツグミが言いました。

「名古屋さん、ちょっと聞いていい?」
「ああ」
「その肩に乗ってるの、何者?」
「うへぇ」

妙な声を上げて、アクセスは稚空の肩から転げ落ちました。

「驚いたな、判るのか」
「何となく」
「だってさ。慌てて隠れなくてもいいらしいぞ」

稚空がそう言うと、アクセスはすとんとテーブルの上に降り立ちました。

「不思議な人だね、あんた」
「まぁ、喋るのね、凄い」
「チビだからってバカにすんなよ」
「あら御免なさいね。これ食べる?」
「あ、どうも」

トーストを貰って静かになってしまうアクセス。
それを見て、まろんと稚空は思わず笑ってしまうのでした。
結局そのまま四人は日曜を一緒に過ごしました。

(第54話・完)

# やっぱり勢いで書くと話が進まないです。^^;;;
# せめて日付だけは進ませましたが。(笑)

では、また。

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