神風・愛の劇場スレッド 第53話 『実験室』(6/5付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Mon, 05 Jun 2000 02:05:23 +0900
Organization: So-net
Lines: 426
Message-ID: <8he28m$p8g$1@news01bj.so-net.ne.jp>
References: <8g80si$db2$1@news01cf.so-net.ne.jp>
<8gcse3$q6e@infonex.infonex.co.jp>
<8gcsjp$qc7@infonex.infonex.co.jp>
<8grgul$kb9$1@news01dg.so-net.ne.jp>
<8gtb9t$an1@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

 「神風強盗ダルク」って一体…(笑)。<見てしまったらしい

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<8gtb9t$an1@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

 こんにちわ〜。
 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
 作品世界観が壊れるのが嫌な人は、読まないで下さいね。
 では、ゲームスタート!



>ぢつわ自分で書いている部分にも思わぬ展開があったりしますが。(爆)

 ちなみに今までの展開でどこが思わぬ展開でしたでしょうか?

#自分のパートでは、先生と都の所が一番だった気がします。

>>> ★神風・愛の劇場 第51話『壁』
>
>言われて見れば私も悪魔軍団の事は忘却の彼方でした。(笑)

 沢山居ますので、好きに使ってやって下さい(笑)。

#そのための設定。

>>> ■東大寺都&堕天使フィン・フィッシュ編
>
>フィンは都ちゃんを通して素直になれない自分を見ているのかな
>という気がします。似たもの同士という意味では相手の心という
>表現は間違ってないんですね。もっともフィンがそれを意識していないで
>言ったであろう所がまたミソなのでしょうか。

 そして都ちゃんは実はまろんちゃんとも似た者同士で…と、稚空に指摘されて
いましたっけ。

>>> ■悪魔騎士ノイン編
>
>ノインの使い魔にするか、TV版でのチョイ役の路線にするかで
>迷っていたのですが、これで決定ですね。

 今回で、かなりな重要キャラにしてしまいました。
 ちなみに、勝手に動かして頂いて構いません。大体どういう意図かは判るでし
ょうし(汗)。

># あ、4クール終わりだ。(爆)

 まさか、こんな長寿スレッドになるとは…(笑)。

>★神風・愛の劇場 第52話 『戯れ』

 今まであるのか良く判らなかった、アキコの「感情」について、初めて明らか
になりました。「憑依」が出来る事が明らかになったりと、番外編に見せて実は
設定編なのかとか考えている所。
 「死んだ」という言葉に反応する所を見ると、アキコはまだ自分が死んだ事を
認めていなかったりとかするのでしょうか(違)。
 ちなみに今回書けなかったのですが、第53話の構想では、都ちゃんが買い物
の為に外出している時にアキコとそれに絡む男達を目撃して…という展開を考え
たのですが、そこまで書いている余裕が無かったのが少し心残り。

 では、本編。今回も設定とかありますが、そちらの設定に影響が無ければ幸い。


第53話『実験室』

■悪魔騎士ノイン編

●魔界の中心部

 そこは、天界や人間界の一部からは「魔界」と呼ばれる世界。
 天界の人々は「地の底」と形容しますが、本当に地下にある訳ではありません。
 かと言って、天空の彼方にある訳でもありません。
 人間界の言葉で語るならば「異次元」とでも言うべきでしょうか。
 そこに、人間界より帰還する者がありました。

「…ノインか」

 魔界の中の更に「下」の方にある部屋の中。
 水晶玉の映像を見て、その人物はひとりごちます。
 「彼」は、魔界の住人ですが、姿形は人間と変わりがありません。
 男性とも女性とも異なる、中性的な妖しい美しさを放っている所が目立つ程度
で、他は全く人間そのものなのでした。
 名前はありません。
 本当はあったのですが、忘れてしまいました。
 でも、どうしても他の住人達が「彼」の事を呼ぶ時に使う名前はあります。
 ──魔王──
 それが、今の「彼」の呼び名なのでした。


●魔界外縁部

 魔界以外の者から見れば、そこがどこかを忘れさせる光景がノインの前には広
がっていました。溢れる光。美しい草木。でもどこか異様な雰囲気もあります。
 ノインが足を踏み入れた森の中。木々の間を蠢く生き物達がその正体でした。
 その生き物達は、人間界や天界の者から見れば「醜い」と感じる事でしょう。
 しかし、ノインは自分に寄って来るグロテスクな生き物達を気にする風はあり
ませんでした。むしろ、愛おしげにさえ見つめています。
 今また、ノインの側に四本足の、人間界であれば鹿位の大きさのグロテスクな
生き物が近づき、ノインの身体に顔を擦り寄せます。
 ノインは、その生き物を嫌がるどころか、むしろその生き物の顔を撫でてやり
ます。

「!」

 その時、周囲の空気が一変しました。
 ノインの周囲の生き物達がいつの間にか、姿を消しているのです。
 その場には、ノインとノインにすり寄ってきた生き物だけが取り残されました。

 ノインは、周囲の気配に気を配ります。
 原因は程なく判明しました。

 ノイン達の上空に、飛行する生き物が何十と現れたのです。
 その生き物達は、思い思いに森の中へと降下していきます。
 その生き物の内の一羽が、点となって降下して来るのがノインの目から見えま
した。
 点が大きくなるにつれ、その生き物の外観がはっきりしてきます。
 それは、ノインの目には、大変美しい鳥に見えました。
 しかし、その「鳥」に見えた生き物は、けたたましい鳴き声を上げながら、ノ
イン目がけて鋭い嘴と爪を武器に襲いかかる態勢で、なおも降下を続けます。

「フ…身の程知らずが…」

 ノインは呟くと、右手を剣に変化させ、それを一閃します。

「キシャアアアア…」

 ノインの剣の一撃で、その「鳥」の嘴と爪が切断されているのでした。
 その「鳥」はたまらず地上に落下して、悲鳴を上げてのたうち回ります。

「さぁ、どうする?」

 ノインがその鳥を冷酷な目で見下ろしながら言うと、その鳥はよたよたと飛び
上がり、逃げ去っていきました。

「今の奴…見かけない顔ですね。すると新種か…。『実験』は相変わらずと言う
ことですね…」

 逃走する「鳥」を見送りながら、ノインはそう呟き、ため息をつきます。
 その時、森の各所から悲鳴のような鳴き声が響き渡りました。
 ノインと一緒にいた生き物はそれを聞くと、不安そうな鳴き声をあげ、ノイン
にすり寄ります。

「よしよし…。私から離れなかったのは良い判断です。お前なら、この世界でも
長生き出来るでしょう…」

 ノインは、その生き物の背中を撫でながら言うのでした。

「それじゃあ、私は行きますよ。君も元気で…」

 ノインはそう言うと、先を急ぎます。
 しかし、その生き物は暫くの間、ノインの後をついて離れませんでした。


●再び魔界の中心部

「魔王よ」

 「魔王」の居室に、ノインが音もなく姿を現したのは、それから暫くの時間が
経過しての後でした。

「ノインか。何用か?」

 椅子に座った魔王は、覗き込んでいた水晶玉から顔を上げ、ノインに問いかけ
ます。

「は。作戦の進捗状況の報告に…」
「回りくどいことは止せ」
「はあ…」
「私が人間界の様子を見通せる事位、君は知っているだろう。それなのに、君は
わざわざ『報告』に来たと言う。それは何故か」
「やはり、白々しすぎましたか…」
「ああ。何か頼み事があるのだろう? 君と私の仲だ。何なりと言うが良いさ」

 ノインと魔王の会話は、ノインの方はある程度の礼儀を保っていたものの、二
人の口調はまるで親友同士のそれなのでした。

「はあ…」
「何だ? 君らしくも無い。早く言え」
「実は…『美しい人間の心』を一つお借りしたいのですが…」

 ノインは、要件を切り出します。
 それは他の魔界の住人がこの場にいたら、驚くに値する願いでした。
 「美しい人間の心」
 それは、神の力を削ぐために、そして自分自身の力を増すために、魔王が魔界
から送り込んだ生命体に集めさせている代物なのででした。
 魔王に取って大事なそれを一つとは言え所望するとは、並みの魔界の住人であ
れば絶対に願い出る事などありません。最も、並みの住人が魔王に会うことなど
無いのですが…。

 魔王が「美しい心」で、どうして自分の力を増すことが出来るのか、実は魔界
の住人の殆どは知りません。
 しかし、ノインを初めとする位の高い悪魔は、もう少し細かい話を知っていま
す。
 それは──

「なんだ、そんな事か」
「え!?」

 魔王の返事に、ノインは少々驚きます。
 理由を話せば、最終的には承諾してくれるだろうとは期待していたものの、こ
んなにあっさりと同意されるとは思ってもみなかったからです。

「何を驚いている? 何なら、君にくれてやっても構わんぞ。神の手にさえ渡ら
なければの話だが」
「訳を聞かないで宜しいのですか?」
「君のことだ。『作戦』に必要なのだろう?」
「確かにそうなのですが…」
「ならば良い。好きなのを持って行くと良い。ただし、君の愛するジャンヌ・ダ
ルクのは無いがね」
「良いのですか?」
「これは、君と私の『契約』だからね。私の依頼した『作戦』遂行のために必要
な『材料』を君の求めに応じて可能な限り用意するという」

 魔王はそう言うと、何事か念じます。
 すると、その手に何かやや厚みのある金属製と思われる物体が現れます。

「君にこれを貸そう」

 魔王は出した物体をノインの方に移動させます。

「これは…」
「ちょっと戯れにな。人間界の情報端末を模して作ってみた。中には、今まで人
間界から集めた『美しい心』のリストを入れてある。…特定の『美しい心』が必
要なんだろう?」
「お見通しでしたか…」
「『実験室』の結界を君が通れるようにしておいた。その『端末』で目的の『美
しい心』を手に入れると良いだろう」
「有り難うございます。必ず「美しい心」は大事に扱い、貴方にお返しします」

 ノインは深々と礼をすると、退出しようと背を向けます。

「構わんさ。どうせ私には不要な物だ…」
「え!?」

 驚いたノインが振り返りますが、魔王はもう何も言わず、ただ黙って水晶玉を
見つめているのでした。


●魔王の実験室

「ここが『実験室』の中なのか…」

 魔界の中でも一部の者しか存在を知らない、魔王が日夜『創造』の為の実験を
繰り返していると言われる場所。
 いつしかその場所は「実験室」と呼ばれるようになりましたが、実際にその場
所で何が行われているのか、魔王以外で見たことがある者はいないとさえ言われ
ています。
 人間界から集められた「美しい心」はその殆どがここに送られています。
 人間の美しい心、それは魔王が魔界の住人を作る為の極上の「材料」として使
われている。その様に「実験室」の存在を知る高級悪魔達は囁きあっていたので
した。

 「実験室」とは言うものの、その中は無限に広がっているとも思える広大な空
間が広がっていました。
 その中には、図書が並べられている空間、何の用途に使うのか良く判らない機
材が置いてある空間、そして「実験」を行っているとおぼしき空間、「創造」中
と思われる生物が生育されている空間などがあり、それらはノインの興味を引く
物ばかりでしたが、今は目的の物を手に入れるのが先でした。

 魔王から借りた「端末」の情報を頼りに、ノインは目的の場所に辿り着きまし
た。

「これは…」

 ノインの目の前には、無数の数の光球──美しい心──が、見渡す限りどこま
でも存在していました。
 魔王が「端末」を貸してくれる訳でした。これが無ければ、絶対に目的の「美
しい心」まで辿り着けない所です。

「それにしても…少し数が多すぎないか?」

 端末を操作しながらノインは感じます。
 端末のデータは年代順に整理されていたのですが、どうやら運び込まれている
「美しい心」は、あまり使われていないようなのです。ノインは、先ほどの魔王
の呟きを思い出しました。
 しかし、余計な詮索よりも今は自分の用事が先でした。

 端末の助けもあり、ノインはわりとあっさり目的の「美しい心」の前に辿り着
きました。
 最も、あっさり辿り着けたのは、その「美しい心」が比較的新しい物だったと
いう事もあります。

「久しぶりですね。お元気でしたか?」

 そう言うと、ノインは目的の「美しい心」を手にすると、元来た道を引き上げ
ていくのでした。


●桃栗町郊外 紫界堂聖の家

 魔界で用事を済ませたノインは、「端末」を魔王に律儀に返した後に人間界に
戻って来ました。
 人間界に入った瞬間、ノインは人間界での姿、「紫界堂聖」となりました。

 桃栗町郊外の割と豪華な屋敷に、聖は一人住んでいます。その門前に聖は降り
立ちました。
 もっとも、正確には住人は「一人」ではありません。

「お帰りなさぁい。ノイン様〜」

 ノインの忠実な使い魔、シルクが聖を出迎えます。

「ただいま。ちゃんと留守番してましたか?」
「はぁい。それでノイン様ぁ。僕を人間にしてくれるんですよね?」
「ええ。ちゃんと「材料」を持って来ましたよ」
「わ〜い」

 聖は、シルクと共にリビングルームへと向かいます。

「早く早く〜」
「急かさない。こう言うのは準備が大事なのですよ、シルク」

 聖は魔界から持って来た「美しい心」を取り出し、空中に浮かべます。
 そして、懐から魔呪符を取り出すと、それを「美しい心」の光球の中へと差し
込みます。

「何をしているんでぃすか?」

 不思議そうにシルクはその様子を見ています。

「さてと、出来ました」

 光球から聖は魔呪符を取り出します。
 元々魔呪符の色は白かったのですが、引き出したそれはまるで漂白剤を使った
かのように純白となっているのでした。
 続いて聖はリビングに魔法陣を描きます。

「シルク、そこに立ちなさい」
「はぁい」

 魔法陣を描き終えた後に、その中心部にシルクを立たせます。
 そして、ノインは魔道書を見ながら、魔呪符を持って呪文を唱え始めます。

***

 長い長い呪文も終盤に近づき、魔法陣が光りはじめます。すると、シルクの身
体が変化を初め、次第に人型の姿となっていきます。
 そして…光が爆発し、それと共に魔呪符も消滅します。

「はい、出来ましたよ」
「わぁい。…と、あれ?」

ずでん☆

 喜んで歩き出そうとしたシルクでしたが、たちまち転んでしまいます。
 すぐに起き上がって歩き出そうとするのですが、その度に転んで…の繰り返し
なのです。

「ノイン様ぁ。上手く歩けません」
「おかしいですね。術は完璧の筈ですが…?」

 暫く首を捻っていた聖ですが、やがて納得した表情になると、

「成る程。急激な肉体の変化により、歩行時のバランスの取り方が上手く行かな
いのか…」
「ノイン様〜飛ぶのなら大丈夫ですぅ」

 聖の思考は、空中に浮かんだシルクによって中断されました。

「シルク! 普通の人間は飛んだりしませんよ」
「でもでも、ノイン様も人間の姿で飛んでますよ〜」
「私は仕事上必要だからです。シルク、人間の姿で仕事をするという『契約』を
忘れてはいませんね?」
「はい」
「シルクには、あくまでも人間として振る舞って貰わないと困ります」
「そうなんでぃすか?」
「そうです。そして、ある人物に接触して貰います」
「接触して、どうするんでぃすか?」
「お友達になりなさい」
「え? それで良いんでぃすか?」
「はい。後は私が指示しますから」
「はぁい。判りましたぁ。…あれ?」

 自分の姿を窓に映したシルクは何かに気付きます。

「どうかしましたか?」
「角が残ったままでぃす」
「え?」

 ノインが慌てて見ると、髪に隠れて判らない程度でしたが、確かに角が頭に残
ったままになっていました。

「やはり人化の術は難しいですね…。歩く事もままならぬし、角は残ったまま…。
どうしたものか…」
「ねぇノイン様ノイン様」

 ノインの思考はまたもやシルクに中断されました。

「何ですかシルク」
「僕に、名前をつけて下さぁい」
「名前ならあるでしょう」
「人間としての名前でぃす。仕事に必要でぃす」
「あ…それもそうですね。そうですね…」

 暫く聖は考えていましたが、やがて言います。

「姓はお前の名前から取って絹織、そして名は…「材料」に敬意を表して全とし
ます。絹織全。それをシルクの人間の名前としましょう」

 そう言った時、横に浮かんでいた「美しい心」の色が一瞬変化したのにノイン
は気付きました。

「おや? 悲しんでいるのですか? せっかくあなたの姿を再生してあげたのに。
あなたの魂を利用している事が不満とでも? いけませんね。…私があなたの魂
を今こうして利用させて頂いているのは、あなたが生前私と、魂と引き替えに新
しい心臓を与える『契約』をしたからじゃないですか。私はその『契約』を忠実
に履行したに過ぎないのですよ。『契約』を守る事、それは人間の間でも守るべ
きルールなのでしょう? 高土屋全君」

 そう「美しい心」に呼びかけるノインの瞳は、何故か深い悲しみに満ちている
のでした…。

(第53話:完)

 人間はおろか女の子すら出て来ない(笑)。
 少しやり残した展開とかありますが、特に支障無いので先に進めてやって下さ
い。
 余談ですが、原作のシルクは全君に似ているという設定から今回の話が出来ま
した。

 では次回もあなたの心にチェックメイト! …だと良いですね。

--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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