神風・愛の劇場スレッド 第52話 『戯れ』(5/29付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 29 May 2000 17:55:25 +0900
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Lines: 299
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<8grgul$kb9$1@news01dg.so-net.ne.jp>

佐々木@横浜市在住です。

# CCさくらビデオ最終巻を見終わって惚けています。
# なんで、文章の質が低いかもしれません。^^;

<8grgul$kb9$1@news01dg.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

ども、こんにちわ。

>>  このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
>> です。
>>  神風怪盗ジャンヌの世界観を壊したくない人は読まないで下さいね。

という事でお願いします。


>>  予定を互いに隠しつつ、思わぬ展開に進むのがリレー小説の醍醐味だと思いま
>> すので、それで良いかと思います。
>>  色々こちらも伏せていますし、佐々木さんも伏せているのでしょうし(笑)。

ぢつわ自分で書いている部分にも思わぬ展開があったりしますが。(爆)

>> ★神風・愛の劇場 第51話『壁』

>> ■名古屋稚空&アクセス・タイム編

言われて見れば私も悪魔軍団の事は忘却の彼方でした。(笑)
アニメ版では最後に雑魚軍団となっていますが、妄想編では
もう少し効果的な使い方も考えてみたいところですね。
# 沢山居るので無駄使いしてもいいかな。^^;;;

>> ■東大寺都&堕天使フィン・フィッシュ編

フィンは都ちゃんを通して素直になれない自分を見ているのかな
という気がします。似たもの同士という意味では相手の心という
表現は間違ってないんですね。もっともフィンがそれを意識していないで
言ったであろう所がまたミソなのでしょうか。

>> ■山茶花弥白編

こういうトコロだけ見ていると弥白っていい娘に見えますね。
# って、最初に悪い娘にしたのは私か。^^;

>> ■悪魔騎士ノイン編

ちゃんと覚えてますよ、シルク。
というか、本妄想に欠けている少年キャラとしての使い道を
考えようと思っていた矢先ではあったのです。偶然にも。
ノインの使い魔にするか、TV版でのチョイ役の路線にするかで
迷っていたのですが、これで決定ですね。

>>  実は今回も予定の半分程度しか進んでいません(ぉぃ)。

では残り半分に期待して、第51話ご登場の皆さんには
触れない事にいたします。(逃げ〜 ^^;;;;)

# では、本編行きます。
# 前回はどろどろげろげろだったので
# 今回はちょっちハートウォーミング路線です。(大嘘)
# あ、4クール終わりだ。(爆)


★神風・愛の劇場 第52話 『戯れ』

●オルレアン

弥白の様子を見届けた後、ミストは隠れ家に戻ってきました。
どうやらアキコは眠っているらしく、姿が半透明になっています。
元々意識だけの存在ですので、眠りによって意識活動が低下すると
同時に存在そのものも希薄になってしまうのでした。
正直言ってミストはそんな状態のアキコを見ているのが好きでは
無かったので、特に必要という事では無いにも関わらず、アキコが
眠っている時は自分も寝てしまう事にしていたのです。
当然、この時も迷わず目を閉じました。
どのくらい経ったのか、ふと目を開くとベッドの上でアキコが
ちょこんと座ってこちらを見上げています。
いつのまにか浮かんでしまったミストはそんなアキコを見下ろす形に
なっていました。アキコの表情に微かですが困惑の色が浮かんでいます。

「判ったから、そんな顔をするな」

ミストにとっては人間界での上下はほぼ無意味だったので
浮かんでいると逆さまになっても気にはなりません。
しかし、アキコには天井に逆さに漂うミストは奇異に映るのでしょう。
ミストはふわりと身体を舞わすと音もなく足から床に降り立ちました。

「何時起きた」

返事はありませんがミストも別に返事は期待してはいません。
好きなときに話しかけ、好きなときに玩ぶ。
ミストにとっては、ただそれだけの関係のはずだから。
暫くアキコをじっと見ていたミスト。おもむろにこう言いました。

「アキコ、お前、ずっと同じ格好だな」

前から気にはなっていたのですが、連れてきて以来アキコは
着たきり雀でした。勿論、生きていないのですから服が
汚れたりする事は無いのですが。

「身体と同様にお前の身なりは実在してはいない。
 裏を返せばお前の思った通りの格好になるはずだが」

じっと耳を傾ける様にミストを見詰めていたアキコでしたが
ふっと視線を逸らして俯いてしまいました。
ミストの中にある感情がふつふつと湧き上がっていました。
口の端から鋭い歯が覗きます。

「その服はお前のお気に入りか?それとも」

肩を震わせ始めるアキコを見て、今度はミストが視線を逸らしました。

「たまには気分転換でもしてみろって事だよ」

またしても困惑の色。まどろっこしくなったミストは
アキコの手をとって立ち上がらせると、その額に自分の額を押し付けました。
ほんの数秒の後、額を離したミストはふんと鼻を鳴らしてから言いました。

「相変わらず死んだときの印象が強いな、お前の心は」

ある単語の所でアキコが必ずピクリとする事を承知で言葉を選んでいます。
その震えが伝わるとミストの身体の芯から別な震えがほとばしるのでした。
アキコをきつく抱きしめて、その感じが収まるまでじっと待ちました。やがて。

「覚えていないなら思い出させてやろう」

そう言うとミストはアキコを引っ張って窓に吸い込まれる様に消えました。

●桃栗商店街

メインストリートの一画。一件のブティックがありました。
比較的年齢の低い客層向けの品揃いでしたので、女子中高生の
出入りが特に多い店の一つでもあるのです。
そして、その試着室に今まさに入ってきた一人の少女が居ました。
栗色のロングヘアをざっくりと束ねています。十代の半ばくらいの歳格好。
カーテンを閉めて正面の鏡に映る自分の姿を確かめます。
と、突然何処からか声が聞こえました。

「丁度いい…」
「え?」

試着室の床にぽっかりと穴が開き、少女は声を上げる間もなく
暗闇の中に吸い込まれてしまいました。



全く光の差し込まない空間に3つの人影だけが、ぼんやりと光を放っています。
横たわる少女の腋に立っているのはミストとアキコでした。
ミストは何処からか取り出したキャンディを一つ、少女に向けて放ります。
それが胸元に落ちると小さく光ってから皮膚に吸い込まれます。
その直後に一度だけ、少女は激しく見悶えすると動かなくなりました。

「そら、教えた通りにやってみろ」

アキコは、しかし躊躇する様にミストと少女を交互に見比べました。

「何を恐がる事がある。心配しなくても、この小娘は死んではいないぞ。
 魔術で眠らせているだけだ。お前も幽霊の端くれなら憑依ぐらい
 出来るだろうが、初心者向けにわざわざ魂をどけてある」

それでもアキコは動こうとはしませんでした。

「生きていた時の楽しかった事を思い出したくは無いか?」

相変わらずの表情の薄さでしたから、アキコがどういうつもりになったのかは
ミストにははっきりとは判りませんでした。
アキコはもう一度だけミストを見ると、そっと少女の傍に跪いて
片手を彼女の身体の上に下ろしました。すると、そのまま手がすり抜ける様に
身体の中に潜っていきます。明らかに狼狽した目がミストを見上げて
救けを求めていましたが、ミストはニヤニヤと笑っているだけでした。
やがて頭から穴に落ちる様に、アキコの姿が完全に少女の身体に
吸い込まれてしまいました。そして。

「聞こえるか?」

ミストがそう聞くと、少女は目を開きました。そして上半身を起こします。
不思議そうに自分の手を見詰めている少女。まるで他人事の様に。

「そうら、遊んでこい」

ミストがそう言って指をぱちんとならすと、少女ははっと顔を上げました。
目の前には鏡があって、そこに見知らぬ姿が映っています。
両手を頬に当ててさすってみると確かにふわふわした感触がありました。
耳の奥で声がします。

「姿が違うのは我慢しろ。慣れればお前自身の姿を表出させる事も
 出来なくは無いが、今は無理だろう」

そうか。と少女は突然情況を理解しました。私の名前は三枝アキコなのだと。
もう一度、鏡の中の姿をじっくりと眺めます。多分、年下かなと思います。
服の趣味が子供っぽい気がしました。ふと横を見ると値札の付いた服がハンガーに
掛かっています。着ている服を脱いで、そちらに着替えてみます。
服の脱ぎ方も着方も忘れてはいませんでした。
ふと、家では何故思い出せなかったのだろうかと考えました。
そして自分の家では無いことを思い出して呆れてしまいます。

「ふふ」

ミストの含み笑いが聞こえました。思った事がミストには
すっかり見通せている様です。頬が火照るのを感じました。
そんな事を感じるのも随分と久しぶりの事ですが。
ちょっと考えてから、アキコはそれは気にしない事にしました。
今さらあの人に隠す事なんて無いのだからと。

「勘違いするな」

人と喩えた事を言われたのだと気付くまで少し時間が掛かりました。
それからアキコは代わる代わるに試着を繰り返してから
結局は何も買わずに、その店を後にしました。
地面が固い事も、外の空気が冷たい事も、路地裏の水たまりの氷も
何もかもが新鮮であり、何もかもが忘れていた事でした。
桃栗の街並みはアキコの知っている様子とそれほど変わりは
在りませんでしたが、若干店の数が増えている様に思われました。
特に目的もなく、ただ歩いているだけでしたがアキコは満足でした。
そうして暫くぶらぶらと街を歩いていると暇そうな若い男が2人近寄って来ます。

「ねぇ、君、独り?」

片方の男がアキコの肩に手を伸ばしました。すると。
パチッ。
微かな音がして、男の手が弾き返されました。
男だけでなく、アキコ自身も驚いて互いに後退りました。
もう独りの男が何が起こったか理解出来ない間に、
手を弾かれた男が声を上げました。

「な、何だよ」
「触るな下郎」

その姿からは想像出来ない地の底からの声がアキコを宿した
少女の喉から発しました。

「よう、そんな言い方無ぇんじゃ…」

もう一人が伸ばした手はアキコに届くことはありませんでした。
肘の関節が逆向きに曲がって妙な音を発てた後、力なく垂れ下がって
しまいましたから。男は言葉にならない何かを喚きながら逃げ出してしまい
もう一人もすぐその後を追っていきました。通りすがった何人かの
通行人が何事か?と振り向く事はあっても、事の次第をずって見ていた者は
在りませんでしたから、それ以上の騒ぎにはなりませんでした。
もっとも当のアキコ自身が一番困惑していたのですが。

「お前に触れていいのは私だけだ」

その一言でアキコは全てを理解し、そして願いました。

「…まぁ、いいだろう」

アキコから直接は見えませんでしたが、ミストが先程の2人を
追っていった事は感じとれましたから、もしアキコが願わなければ、
きっと先程の男達は殺されていたでしょう。それも苦痛に満ちた手段で。
アキコは他人との接触は避けようと考えて、商店街を抜けました。

●街外れ

アキコはその後、公園や海沿いの遊歩道をただひたすらに歩き回って
一日を過ごしました。
そして街が夕陽に染まって来た頃に、桃栗町を見渡す高台にやってきました。
眼下に街を見下ろすベンチに髪を風になびかせて座っている娘がいます。

「よく、ここが判ったな」

アキコは黙って頷きました。座っているミストに向かって。
そして隣りに腰掛けます。

「少しは楽しめたか?」

アキコはもう一度、頷きました。
それから目を閉じると、少女の身体からもう一つの人影が滲み出て
やがて完全に分離しました。それと同時に少女の胸元からキャンディが
飛びだし、ぱちんと弾けて消えてしまいました。
ミストはそのキャンディの様子をつぶさに観察してからアキコを見ました。

「何だ、またその格好か。着替え方を憶えなかったのか」

ミストが呆れたと言わんばかりに溜息をつくと、
アキコは首を振りました。そしてくるりと廻って見せます。
廻る間に一瞬その姿が白く透けて、それから別の色が着きました。
アキコの服装はブティックで試着した中の一つ、モスグリーンの
スカートと黒に近い緋色のセーター姿に変わっています。

「ああ、それでいい。悪くない」

血の気の在るはずもないアキコの頬がほんのり染まった様に
ミストには見えたのですが、それは夕陽の所為だったのかも知れません。
そしてミストはアキコの手を取ると、真っ赤な空にふわり溶け込んで
しまいました。

(第51話・完)

# 今回はレギュラーの"人間"が出ないお話しでした。(笑)

では、また。

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