神風・愛の劇場スレッド第42話「黒い羽根」(4/24付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 24 Apr 2000 17:30:32 +0900
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Lines: 262
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佐々木@横浜市在住です。

<8duotn$2s3$3@meshsv230.tk.mesh.ad.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

>>  神風怪盗ジャンヌの世界を壊されたくない人だけ読んで下さい。

って事で願います。


>>  一応三枝先生の持っているアキコの写真は、別荘毎ネガと共に消失している設
>> 定の積もりで、あの懐中時計のが最後の一枚の私的設定です。まぁこれは、変え
>> てしまっても全然構いませんが。

そういうモノは「一枚」で良いのではないでしょうか。その方が重いですから。

>>  弥白がモニターを叩き壊したその音をツグミさんに聞かれる可能性を失念して
>> いました(ぉぃ)。あれだけ音漏れには注意していたのに…(自爆)。

あれは気付かせる為の「振り」だと思ったのですが。^^;

>>  ところで弥白はミストの駒だった筈なので、そのミストが弥白をわざわざ苛め
>> るからには、何か理由があるものと考えられます。
>>  そんな訳で、その理由と悪魔族の設定、悪魔キャンディーの設定を勝手に作っ
>> てみましたが、佐々木さんの設定に何か不都合があったでしょうか(汗)。

あんまり深く考えてませんでした。^^;;;;;
ミストが自分で言ってる様に「暇つぶし」程度なのですが、アラを埋めて
きちんとつなげていただき感謝感謝であります。
それとミストとキャンディの関係については私のウラ設定に近かったので
ちょっと驚いています。あくまで「ウラ」なので表現しない可能性が
高かったのですが、この調子なら使ってもいいかなとか思いつつあります。
# ミスト退場の時にでも。

>> ★神風・愛の劇場 第41話

某所で弥白が負けないと言っていたので昨夜のことは気の迷いとか
言い放つかと思っていたのですが、珍しくコタエたんですね。(笑)
でも萎縮していたのはやはり一瞬だけ。いいでしょう。受けて立ちます。^^;
もっと先まであるとの事でしたので、今回出てる連中には極力触れない事にします。
ちなみに今回の第42話はこれまた書きためたエピソード在庫のひとつです。
ちょうど都ちゃんと羽根というシーンがあったので出してみました。

# 今日は木曜の朝まで来てますよね。
# たまに明記しないとわからなくなるので。^^;
# では、いきます。

★神風・愛の劇場 第42話 「黒い羽根」

●日下部家の朝は騒々しい

履物を脱ぐのももどかしく、どたどたと戻ってきたまろん。
リビングに行ってみるとフィンが壁に向かって仁王立ちしています。
思わずフィンの背中に飛び付いてしまうまろんでした。ずでん。

「おはよう〜。今日もふっかふかの羽根ねぇ」
「…どけ、ばか女」
「何してたの?」
「あんたには関係無いわよ」

フィンは横目でちらりと床を見回しました。朝日が差し込んできているので
ミストの残していった邪悪な痕跡は殆ど消えてしまっていました。

「つれないなぁもう」
「五月蝿い。早く出かけてしまえ」
「あっ、そうだ急がなきゃ」

着替える為に寝室に消えるまろん。
フィンはやれやれといった風に腰を下ろしました。
ものの一分もせずに戻ってきたまろんでしたが、服装はぐちゃぐちゃ。
そして家中を動き回っています。這いつくばって。
ソファーに座っているフィンが目で動きを追っているのですが
いい加減我慢できなくなったのか遂に話しかけて来ました。

「まろん、さっきから何してるの?物凄くうっとうしいんだけど」
「羽根を探してるの」
「はね?」
「そ。時々ね、フィンの羽根が抜けているのよ。朝じゃないと見つからないの」
「そりゃ羽根ぐらい抜けるわよ。飾りじゃないんだから」

そういって座ったまま羽根を広げて羽ばたいて見せたフィン。
数枚の羽根がはらはらと舞いました。

「あ、ラッキー」

いそいそと拾い集めるまろんにフィンの冷たい視線が。

「そんなもんどうする気?」
「うん。しおりとかになんないかなって」
「使えないわよ、そんな事に」
「そうなのよねぇ、不思議なの。時々見付けて仕舞っておくんだけど、
 使おうと思ったときには無いのよね」
「当たり前ね」
「何で何で?ねぇ何で〜?」
「鳥の羽根じゃないのよ。天使の羽根よ。
 人間界じゃ長持ちなんかしないの」
「つまんない」
「知らないわよ、そんな事」
「ねぇ、何とかしてよ」
「まろんが自分で何とかしなさいよ。神の力か何かで」
「あ、そうか」

手に持った羽根を額に当てるとじっと目をつぶって念じています。
やがて。

「あ〜っ!」

まろんの見ている前で羽根の影が薄くなっていって、
そして消えてしまいました。フィンはゲラゲラ笑っています。

「バカね。何でもかんでも神の力でどうにかなったりしないわよ」

まろんは無言でフィンを見詰めています。目に泪を浮かべて。

「な、何よ。文句あるの?」
「無いよ、別に」

でも目を逸らさないまろん。どんどんいたたまれなくなるフィン。
やがてまろんはひとつ鼻をすすると、舌をべーっと出して部屋に戻ります。
どたどたと自分の部屋からカバンを取ってきたまろん。
そのままリビングを出ていこうとしますが。

「ちょっと待ちなさいよ」
「何?」
「ほら…」

フィンが差し出した両手を開くと、そこに一枚の羽根が。

「くれるの?」
「わざわざ抜いたんだからコレは消えないわよ」
「あ、有難う」

まろんはフィンにキスをしました。

「え〜い、うっとうしいてば。早く行きなさいよ」
「またまた、照れちゃって」

そしてもう一度キスしてから、いそいそと出ていきました。
ドアの閉まる音がして、家が静かになります。
突然、フィンの背後から声がしました。

「お優しい事だな」
「また現れたの。今度は何よ」

フィンが振り向くとソファーにはミストが座っていました。
テーブルに両足を乗せて軽く組んでいます。
その後ろにはアキコが寄り添うように立っていました。

「何だって、しおりぃ?」

今にも笑いだしそうなミスト。すでに口の端が歪んでいます。

「あんたには関係ないでしょ」
「知ってるぞ。自分で抜くと、とても痛いんだろ?
 やっぱり、あの女が好きか」

ついに笑い出したミスト。踵でテーブルをがんがん打っています。

「好きなだけ笑ってればいいわ」
「はんっ!何か考えがあるとでも?」
「当然よ。でなけりゃ誰がまろんなんか喜ばすわけ?」
「あんな物が何になるってんだ」
「あれでまろんの居場所が何時でも判る様になるのよ」
「ふふ〜ん。だが判るのはお前の羽根の場所だろう?」
「まろんは手放さないわ。あれはそういう娘だから」

笑うのを止めたミスト。後ろを振り向いてアキコを手招きします。
アキコは黙ってミストの隣りに座りました。腕を掴んで引き倒すと
自分の腿の上にアキコを横たえるミスト。それからフィンに言いました。

「対になる羽根が反対の翼にあるはずだな?」
「そうよ。だから判るんじゃない」
「ちょっと貸せ」
「冗談。あんた自分で透視術使えるでしょ」
「いいから貸せ。すぐ返してやる」

フィンはしばらくミストを値踏みする様に見ていましたが
左の翼を前にまわしてまさぐると一枚の羽根を選び出して抜きました。
一瞬ですがフィンの顔が曇ります。

「ほら、すぐ返しなさいよ」

羽根を受け取ったミスト。いつのまにか取り出したキャンディを
ひとつ、軽く口づけしてから羽根に押し付けました。
すると羽根はあっというまに漆黒に変わりました。

「あ、馬鹿!何すんのよ!」
「黙ってろ」

そう言っている間にも羽根の色はどんどん変わっていきます。
やがて色がすっと抜けていって、半透明の灰色の羽根になりました。
それをフィンに返してよこすミスト。

「ちょっと。こんなの返されて黙って引き下がれっての?」
「お前にセンスの欠けらでもあれば、それは役に立つはずだ」
「どういう意味?」
「覗いて見るがいい」
「え?」
「それで目を被って見るんだよ」

半信半疑でしたが他にどうしようも無いのでフィンは言われた通りにしました。
しばらくして…

「何も見えないわよ」
「やっぱり堕天使ごときでは無理だったか」
「何ですって…」

途中まで出た言葉を詰まらせたフィン。何かに集中している様子です。

「やっと出たか」
「光が」
「何が見える?」
「光が動いているわ。闇の中で」
「近づき過ぎだな」
「どういう意味?」
「言葉どおりの意味だ。お前は今、顔を近付けて物を見ようとしている。
 ちゃんと見たかったら半歩退がれ。意識の中でだぞ」

再びの沈黙。そして。

「カバンだわ」
「あの女の持ち物だな?」
「ええ、間違いない」
「もっと退がれ」
「あはは。まろんのやつが歩いている」

フィンが羽根を顔から離した時にはミストはアキコの髪を弄っていました。

「納得いかない事があるんだけど」
「なんだ、まだ不満があるのか」
「逆よ。出来過ぎね。どうしてあんたが私にこんなモノ
 用意してくれたりする訳?」
「別に他意は無いさ」
「嘘言わないで。悪魔といえば契約でしか動かない連中でしょ」
「そんな事はない。少なくとも私は」
「何が望みなの?」
「しつこいなバカ天使。では言おう。
 ジャンヌが死んだら魂をよこせ。それが条件だ」
「あら、古典的な代償ね」
「まぁな」
「いいわ。契約成立」

それだけ言ってフィンはベランダから飛び立って行きました。

「魂なんか今どき要るわけ無いだろうに。なぁ、アキコ」

ミストはそう言って魂だけの少女を抱き寄せました。

(第42話・完)

# 暫く遊んでいたのに急に動き出してしまいましたなぁ、ミスト。(笑)

では、また。

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