神風・愛の劇場スレッド第35話(前編)(4/3付) 書いた人:携帯@さん
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From: keitai@fa2.so-net.ne.jp (Keita Ishizaki)
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Mon, 03 Apr 2000 00:25:03 +0900
Organization: So-net
Lines: 421
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石崎です。

神風怪盗ジャンヌ妄想小説の第35話
こちらが前編です。

ジャンヌ本編&原作の世界が毒されたくない人だけ読んで下さい。
では、ゲームスタート!



#時間軸を遡っているので、時間を記載しています。

★神風・愛の劇場第35話(前編)

 山茶花弥白の家にある、都達の淫らな写真データを全て消去する事に成功した
稚空とまろん。その間、他の人達は何をしていたかと言うと…。


■パッキャラマオ五十嵐編 1月11日 午前9時

●生徒指導室

「さてと…まずはこれをどこで手に入れたか話すザマス」

 生徒指導室で、自分の授業を自習にして来たパッキャラマオ先生は、委員長と
机を挟んで向かい合っていました。
 机の上には、委員長から取り上げた「弥白新聞」が広げて置いてあります。

「…と言う訳なんです」

 委員長は「弥白新聞」をマンション「オルレアン」のエントランスで拾った事、
それからメールボックスの中に入れてあった新聞を全て回収した事、校内の掲示
板や校舎内を見回って、「弥白新聞」がばらまかれていない事を確認した事を
長々と話しました。
 しかし、山茶花弥白と出会った事と、新体操部の部室に忍び込んでいた事実は
伏せています。
 後者の件はさておき、弥白と出会った事を話さなかったのは、この事を話せば
弥白も傷つくと考えたからです。委員長は、出来るだけ事を大事にしないで解決
しようと思っていました。もっとも、思うだけで何ら具体策を持っていない辺り
は委員長らしいのですが…。

「成る程。それで部室の中を覗いていたザマスね」
「はい。…いえ、違います!」
「隠さなくても良いザマス。実は、学校で取っている新聞の中にもこれと同じ物
が入っていたザマス」

 と言うと、自分が入手した「弥白新聞」を出して見せます。

「やっぱり学校にも配られていたんですね。危なかった…」
「私も部室に無いか気になって、部室の様子を見に来た時に、水無月に会ったと
いう訳ザマス。本来なら厳罰に処する所ザマスが、事情が事情だけに許すザマ
ス」
「すいません…」
(部室の中で本当は何をしていたのかを知られたら、命は無いな…)

「それで、これに書いてある内容ザマスが…」
「作り話に決まってます! 東大寺さんや日下部さんが、こんな…こんな…」

 話し始めた瞬間に委員長が断定したので、先生は少し驚きました。

「落ち着くザマス水無月。書いてある内容は兎も角、この写真はどう見ても東大
寺と日下部と名古屋ザマス」
「それも合成写真に決まってます! 最近はパソコンとフォトレタッチソフトと
技術さえあれば、簡単にこんなの合成出来ます…」

 委員長は最近の画像合成技術について話し始めますが、パッキャラマオ先生は
新聞の写真を見ていて、殆ど話を聞いていません。

「やけに詳しいザマスね、水無月」
「あ…」

 委員長の話がアングラサイトのアイドルのコラージュ写真にまで及んだ時、流
石に先生は時間を無駄にしたくないので話を止めました。

「ありふれた機材で合成写真を作れる事は判ったザマス。でも、それでこの写真
が合成であると言い切るには弱いザマス」
「先生は日下部さん達の事を信じられないんですか?」
「そうは言っていないザマス。真偽は結局本人に確かめないと判らないザマス」
「それは止めて下さい!」
「どうしてザマス?」
「例え合成写真だったとしても、こんなのがばらまかれていたと知ったら、日下
部さんや東大寺さんがどんなに傷つくか…」
「それは判るザマスが、真偽が判らない事には、手の打ちようが無いザマス。そ
れから、もう一つ問題があるザマス」
「何ですか?」
「これを誰が作ったのかという事ザマス。心当たりは無いザマスか?」
「判りません」

 本当は知っているのですが、委員長はとぼけます。

「新聞の名前からすると、枇杷高校の山茶花弥白と同じ名前ザマスが…」
「山茶花さんがそんな事をする筈はありません! きっと誰かが山茶花さんを陥
れるために…」
「先生もそう思うザマス。わざわざ自分の名前を入れた新聞で、他人を誹謗中傷
するのは馬鹿のする事ザマス」

 流石の先生も本当に弥白が作っているとまでは考えていなかったのでした。
 委員長は安堵すると同時に、嘘をついた自分に罪悪感を覚えます。

「やはり、本人達を呼び出す必要があるザマスか…」
「あの、僕に任せて貰えませんか?」
「水無月に? 何か考えがあるザマスか?」
「そ、それは…あ、あの、写真に映っている三人の中で、名古屋君だけにこっそ
り相談しようと思います」
「名古屋に?」
「あの、名古屋君なら、日下部さんとも東大寺さんとも山茶花さんとも親しいで
すし…、何か真相を知っているかもしれませんし」

 委員長は咄嗟に稚空の名前を出したのですが、関係者全てと親しくしているの
は稚空だけなのも事実なので、そんなに悪い考えでも無いように思えます。

「フム…。今はそれ位しか手が無いザマスね。判ったザマス。水無月に任すザマ
ス」

 委員長の考えは、先生が直接真偽を確かめると言うのと大差無い考えの気がし
ましたが、仮にも教師である自分が直接問い質すよりは、委員長に聞かせた方が
本人達に取っても良いだろうと考え、取りあえず委員長に任せてみる事にしまし
た。

「有り難うございます」
「ただし、自分の手に負えないと感じたら、迷わず私に相談するザマス」
「判りました。でも、僕達が相談するまでは、見守っていて下さい」
「判ったザマス…けど、本当に困った時には必ず報告するザマスよ。例え、これ
に書いてある事が事実でも、先生は水無月達の味方ザマス」
「先生!」
「例えばの話ザマス。さ、水無月も教室に戻るザマス」
「はい。あの…」

 退出を許可されたのに、何故か委員長は新聞を見て何か言いたそうにしていま
す。

「まだ何かあるザマスか?」
「あの、それを一枚持っていって良いですか?」
「どうしてザマス?」
「名古屋君に相談する時に、証拠品が無いと…」
「…後でちゃんと返すザマスよ」
「判りました」

 委員長は後でカラーコピーを取ってから返す積もりでしたが、稚空に取り上げ
られてしまうのでした。


***

「それでは、失礼します」

 委員長が生徒指導室から出て行くと、先生は「はーっ」とため息をつきました。

(水無月がこれを作り物と思い込んでいたのは不幸中の幸いだったザマス…)

 先生は、「弥白新聞」の写真をもう一度じっくりと見ています。特に都の映っ
ている写真を念入りに。

(どう見ても、本物の写真ザマスね…)

 先生がつい先ほど見た都の身体と、写真の都の身体的特徴は、見事なまでに一
致しているのでした。

(恐らくは書いてある内容も真実…。私はどうすれば良いザマス?)

 パッキャラマオ先生は、まろん達のしている事を責めようとは思いません。先
生自身、学生時代はそれ程誉められた生徒では無かったからです。
 とは言えこの事が明るみに出た場合、恐らくは学園は名前に傷が付く事を恐れ
て、例えばまろん達の新体操部からの追放、最悪の場合退学処分まで行うのでは
無いかと先生は恐れています。

「そんな事はさせないザマス。私の生徒達に…」


■神風・愛の劇場 紫界堂聖編 1月11日 午前10時

●まろん達の教室 世界史の授業中

「…ワーテルローの戦いに破れたナポレオンはセントヘレナ島へ流され、その地
で一生を終えることになります」

 パッキャラマオ先生は自習と言い残して出て行ってしまいましたが、実習生の
聖先生は先生抜きで授業を進めています。
 都は何故か上の空で話を聞いておらず、稚空は聖の事を警戒するように睨み付
けていましたが、もちろんそんな事は意に介していません。

ガラガラ

「あ…」

 てっきり自習と思って入って来た委員長でしたが、聖先生が授業をしているの
を見てちょっとドキリとします。

「用事は済みましたか?」
「え?」
「パッキャラマオ先生から話は聞いています」
「あ、はい、終わりました」
「そうですか…。それでは皆さん、ちょっと早いですが、今回の授業はここまで
にします」
「起立! 礼!」

 聖が出て行くと、生徒達は途端にざわざわと騒ぎ始めます。

●生徒指導室

「失礼します」

 「弥白新聞」を前に悩んでいたパッキャラマオ先生は、いきなり誰かに入って
来られて慌てて新聞を隠します。

「紫界堂先生…一人残して、悪かったザマス」

 入って来たのは聖でした。

「いえ。自習と言われましたが、勝手に授業を進めてしまいました」
「そうザマスか…」
「ところで水無月君と何の話を?」
「それは…進路相談ザマス」
「そうですか…。実は、私も相談があるのですが」
「何ザマス?」
「これなのですが」

 テーブルの上に聖が出した物を見て、パッキャラマオ先生は心臓が停まりそう
になりました。

「聖先生も持っていたザマスか…」
「はい。今朝早く、学園の掲示板に張り出してあったのを私が…」
「この事はもう誰かに?」
「いいえ。先生が初めてです」
「そう…。この事は、他言無用に願うザマス」
「勿論です。前途ある生徒達の将来をこんな事で奪ってはいけません」
「判って頂けて嬉しいザマス。ところで、それを回収させて頂いて良いザマス
か? 私が処分するザマス」
「良いですよ」

 素直に聖は「弥白新聞」をパッキャラマオ先生に渡します。

「この件は、私が責任を持って処理するザマス。だから、この事は忘れて欲しい
ザマス」
「判りました。…ところで、もう一つ相談があるのですが…」
「何ザマスか?」
「明日から始まるパソコン講習の件ですが…」

 二人は仕事の話を始めます。


■神風・愛の劇場 東大寺都編 1月11日 正午

●まろん達の教室

「こらぁ! 廊下を走るなって言ってんでしょ!」

 午前の授業が終了すると同時に、生徒達は走り始めます。
 桃栗学園の学生食堂はいつも長蛇の列で、購買部の商品もすぐに売り切れるの
で、弁当を持って来ていない者は、走る者が多いのでした。
 ルールにうるさい都は怒りますが、毎日の事なので誰も聞く者はいません。

「わぁ!」
「委員長」

 教室を出ようとした都の肩に、委員長がぶつかります。

「ごめんなさい東大寺さん。急がないと売り切れちゃう!」
「委員長がルール破ってどうすんのよ!」

 いつもなら廊下を走らない委員長ですが、都に謝るのもそこそこに駆け出して
行ってしまいました。

「何だ委員長? あんなに慌てて…」

 都の後ろから稚空の声がしました。

「稚空…」
「昼飯一緒に行かないか? 都」
「ごめん稚空…私、用があるから…」

 と言うと、都は逃げるように走り出します。
 今、稚空と一緒にいると、何を喋るか判らない。それが怖くて、都は稚空を避
けているのでした。

「都…」

 稚空は、都が何を思うのか判っていて、しかもその原因が自分にあると判って
いるので、暫くその場に固まっていました。


●入り口ホール

「はー」

 都はしばらく走り続けましたが、入り口前のホールまで来た所で立ち止まりま
す。
 まろんとも稚空とも話しづらい状況になってみると、自分が突然孤独な存在に
なった気がします。

「あれ? 委員長」

 向こうから、委員長が走って来たので声をかけました。

「あ、東大寺さん」
「どうしたの慌てて」
「名古屋君はどこにいますか?」
「さぁ? あたしが教室を出る時にはまだいたけど…。それより、お昼一緒に食
べない? まろんは今日休みだから、あたし一人なんだ」
「ごめんなさい東大寺さん、僕、用事があるので…」
「あ…」

 都を置いて委員長は走り去り、都はますます寂しく感じます。

「あら? 電話…家から?」

 その時、PHSの着メロが鳴り出します。
 元々高校生の身分で携帯電話は贅沢という家庭の教育方針で、都はポケベルし
か持っていませんでした。
 しかし、ジャンヌを追いかけている時に、やはりポケベルだけでは不安がある
ので、乏しいお小遣いをやりくりしてPHSの契約をしていたのでした。

「もしもし。母さん? え? 昴兄さんが?」


■神風・愛の劇場 水無月大和編 1月11日 午後3時

●OA教室

「これが今度入ったパソコンなんだ…」

 新設されたOA教室に、最新のノートパソコンが並べられています。
 委員長が聞いている限りでは、来年度より学内からインターネットに接続出来
るようにすると同時に、グループウェアを導入してお知らせやレポートの提出等
も出来るようにする…という計画で、その為に事前に講習会を開くためのパソコ
ンでした。
 委員長は放課後にパッキャラマオ先生に稚空との事を報告しようと探している
内にここに辿り着いたのです。

「あれ? 開く?」

 ドアの窓から見えたパソコンを見て、駄目元でドアに手をかけた委員長ですが、
鍵はかかっておらず、あっさり開きました。

「誰もいないのかな? 不用心ですね」

 委員長は、ノートパソコンのディスプレイを開いて電源を入れます。
 OSが立ち上がり、委員長は何がインストールされているのかを確認していま
す。

「ノーツとオフィスと…一太郎とオアシスWin? 誰の趣味だか…。あ…やっ
ぱりインターネットにはまだ繋がってませんね…」

 しばらくノートで遊んで、そろそろ教室を出ようと思い、腰を上げます。

「あれ? サーバーかな、NTですね…」

 サーバーらしきマシンが置いてあり、その横のデスクトップマシンにも目が行
きます。

「98ですね、これ…」

 それは、昔先生が作ったBASICソフトが未だに現役である為にわざわざ購
入したものですが、もちろんそんな事情を委員長は知りません。
 ついついこれの電源も入れてしまう委員長。
 周辺機器の電源も同時に入ります。

「スキャナもあるんだ…」


***

「いけない。こんな所で油を売っている暇は無いです」

 委員長が教室を出ようとした時です。

「あら? 委員長じゃない」
「あ、東大寺さん…」

 いつの間にか教室の中に都が入って来ていました。

「へーこれが今度入ったパソコンなんだ」
「そうみたいですね」
「でもこんな所で何してたのよ」
「鍵がかかっていなかったので、つい…」
「盗んじゃ駄目よ」
「そんな事する顔に見えます?」
「見える」
「そんな〜」
「嘘よ。フフフフ…」

 と笑う都を見て、委員長はいつもの都に戻ったと安心するのでした。

「あら? 電話だわ」

 着メロが鳴り、都がPHSを取り出します。

「もしもし。え? 予告状? え? 枇杷町の山茶花邸? ウゲ…。あ、いやこ
っちの話。すぐ行くから…。委員長、急用が出来たからあたし行くわね。じゃ
あ」

 と言うと、都は走り去ります。

「怪盗ジャンヌからの予告状ですか…そう言えば今年初めてですね…。あ、山茶
花さんの屋敷とか言ってましたね。僕も行こうかな…。ひょっとしたらシンドバ
ットを捕まえる事が出来るかも…」

 何やら委員長は妄想モードに入っています。

「…無月君。水無月君」
「はっ。…聖先生!」

 いつの間にかそこに聖が立っていました。

「どうしたのですか? こんな所で…」
「あ、いえ、鍵が開いていたので、珍しくてつい…」
「ハハハ。判りますよその気持ち。私もこういうのが好きでね」
「そうなんですか」
「鍵をかけ忘れていたので戻って来たのです。さあ、鍵をかけてしまいますから、
ここから出て下さい。私は、ここでもう少しやる事がありますので…」
「はい、先生」

 委員長が出て行くと、聖先生は鍵を内側からかけ、パソコンの電源を投入し、
何事か作業を始めました…。

(第35話後編に続く)

 無茶苦茶長くなったので前後編になってしまいました(汗)。

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石崎啓太(E-Mail:keitai@fa2.so-net.ne.jp)
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