神風・愛の劇場スレッド 第169話『青い蜜柑の香り』(その1)(01/03付)) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: 佐々木 英朗 <hidero@po.iijnet.or.jp>
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
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佐々木@横浜市在住です。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

# やはり新年一発目は妄想から。(笑)

# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
# 所謂サイドストーリー的な物に拒絶反応が無い方のみ以下をどうぞ。



★神風・愛の劇場 第169話 『青い蜜柑の香り』(その1)

●桃栗町の外れ

纔かな回数を数えただけでしたが、既にノインの屋敷での食事と称する集いは
実質的には人間界での作戦行動の方向を決める会合の場の一つとなっていました。
もっとも、その場に常に参加しながら事の重要性を理解しない者も弱冠名おりましたが。
その日、軽い朝食が済んだ後のひととき。全とアンがキッチンで片付けをする様子を
脇目にノインが話を始めます。

「さて。既に知っての通り、私はクィーンの留守中に行動を起こす許可を得ています」

黙って頷くミカサ。ミカサの反応を待って小さく頷くユキ。トールンは他の竜族の
食事を手配する為に先に引き上げていて今は居ませんでした。ミカサはトールンの
居ないこの場で今後について話すノインの真意は何だろうかと考えます。
そして恐らくそれはノインがなるべく力技では無い作戦を望むが故の事なのだろうと
判断します。
果たして、続くノインの言葉はそんなミカサの予想を大筋で裏打するものでした。

「なるべく少数の人員で最大の効果を狙いたい。二人の意見を求めます」

ノインの考えが概ね自分の予想通りであった事に安堵するミカサ。少なくとも
彼が従っている相手が何を考えているのか判らない得体の知れない存在では無い
と感じる事が出来たのです。この機会を捉えてミカサはもう一つノインの
考えについて尋ねてみる事にしました。

「その前に確認したいのですが?」
「何でしょう?」

ミカサは纔かに間を置いてから言いました。

「倒すのか捕らえるのか、という点に関してです」

意外な指摘とでも言いたげな顔を見せ、今度はノインが少しの間を開けてから答えます。

「捕らえるという考え方もありましたか」
「今の陣容なら可能なのではと考えます」
「ふむ…」

そもそも自分の愛した者の魂を勝手に宿した存在、神の御子の事はそんな風にしか
考えてこなかったノイン。その彼にとっては倒さないという選択肢など初めから
ありはしませんでした。ミカサにとっては予想通りの反応でしたが、無論ノインを
試してみたなどと気付かれる訳にはいきません。

「いきなり倒そうとすると作戦の幅を狭めてしまいます。一旦捕らえた後には
どうとでも我らの思いのままなのですから」

実のところ良い考えかも知れないとノインは感じていました。薄々ながら
力押しでは限界があるとも思い始めていましたし、何より彼自身でも捕獲を前提と
するなら穏便な手段を幾つか思い付く事も出来ましたから。

「具体的に一つ聞かせて貰えますか?」
「そうですね…」

ミカサの語る作戦は彼自身が神の御子との戦闘経験が無いという事実を忘れさせる
詳細な物でした。そして話を聞き進めるうちにノインは気付きます。その作戦は
彼の言いだした最初の前提とは微妙に食い違っている事に。目論見通りに進んだ場合、
この作戦ならば神の御子を倒せる可能性が高いと思えました。そしてミカサは
その事を当然判っているはず。判っていながら敢えて殲滅作戦を捕獲作戦へと
修正しているのは間違いの無い事実だろう、ノインはそう確信していました。
それにしてもミカサの真意は何処にあるのか。もしや自分に気を利かせている
つもりなのだろうか?

「如何ですか?」

語り終えてしばらく経った後、何の反応も見せない相手を訝しんだミカサの言葉に
ノインは我に返ります。別な事を考えていたとは勿論気付かせずに。

「良さそうに思えます。ところで」
「は?」
「ユキには何か言いたい事がある様ですが?」

突然話を振られた上に二人の視線を集める形になり、ユキは椅子の上で小さく
飛び上がってしまいます。その様子を明らかに面白がっているノインに代わり、
ミカサが尋ねます。

「ユキ?」
「はいっ」
「遠慮は要らない。考えがあるなら述べなさい」
「はい。あの…人選に関してですが」
「うん」
「アンは入っていないのですね?」

ミカサとノインはほぼ同時に意外な名前が出たという表情を見せ互いに顔を
見合わせます。そして直後にその真意は?と無言の問いをユキに向けていました。

「彼女の…その…能力が有効かと思ったものですから…」
「ん?」
「ほう…」

ミカサはユキの言ったことの意味が掴めず、ノインは感心したと言うかわりに
ユキに向けて深く頷いて見せました。ですがすぐに否定したのもノインです。

「目の付けどころは良いのですがアンは駄目です。彼女は使いません」
「やはり…そうですね、差し出口でした」
「遠慮する必要はありません、意見を言うのが貴女の仕事です」
「はい」

ミカサはユキが何を提案したかったのか、その意味を尋ねたかったのですが
続くノインの言葉がその機会を失わせてしまいました。

「それと次の作戦にはユキ、貴女も外れてもらいます」
「えっ?」
「ノイン様、それはいったい?」
「ミカサ、今回の部隊編成の意図を考えれば当然でしょう?」
「…それは」
「何故ですか!」

ユキは椅子を倒しそうな勢いで立ち上がっていました。

「悪魔族の貴女が混ざっていた事は仕方ありませんが、本来は人間界と天界由来の者を
中心とした混成部隊で如何に事に当たることが出来るのか、その可能性を探る作戦でも
あります。ですからユキは後方支援に撤してください。いいですね?」

ユキの立場、自分の部下の更に部下であるという階級の差を考えるならばノインは
随分と丁寧に説明したという印象を受けたミカサ。
それ故に本音は別の所にあるのでは無いかと感じてもいましたが、その点に関しては
尋ねはしませんでした。そしてなるべくユキに不満を残さない様にと上官の言葉を
補足します。

「ユキ、判って欲しい。君の知力を貸してくれ。力仕事は我々に任せて」
「はい…」

ユキは精一杯の笑顔でミカサに答えましたが、ミカサにはユキの失意が
痛い程良く判るのでした。



朝食に名を借りた短時間の会合の後。昨日の不手際の償いという名目でノインの
屋敷に居残ったユキ。全を手伝って掃除や洗濯などの家事をこなしている間に
ノインは人間として仮初めの職場へと出かけ、ミカサは部隊の許へと戻りました。
今、屋敷には彼女の他にはクィーン、全、そしてアンが居るばかり。
こんこんと眠り続けるクィーンは図らずもアンの居る場に姿を見せる事はありません。
やっと高く昇った陽の下で、庭に置かれたテーブルを囲む椅子にはユキの誘いを
受けた全とアンが腰掛けていました。
昨日程では無いにしろ、まだユキの前では緊張した面持ちを崩さないアン。
ユキはなるべく警戒させない様にと笑顔を絶やさずに彼女に語り掛けていました。
他愛の無い雑談を続けてある程度の受け応えを得られる様になった頃、ユキは
さり気なく本題を切り出しました。

「ところでね、アン」
「はい?」
「午後から町へ出てみない?」
「町…ですか…」
「そうよ、きっと楽しいと思うの」
「はあ…」

やや気乗りのしないといった感じのアンでしたが、ユキは彼女が強く拒否は
しないだろうと踏んでいました。出合ってからの時間は短くても、アンが物事を
強く主張するタイプでは無いと確信していたのです。それでもユキは自発的に
彼女が決断する事を重視していました。それはユキの作戦にとって、とても大事な
ポイントであったからです。

「(ミカサ様にもノイン様にも言わなかったけど、私の作戦なら大部隊など要らないわ。
私とアンの“チカラ”があれば充分。それにこの作戦ならノイン様が心配するまでも
無く、アンが正気である必要も無いもの。そして成功の後にはミカサ様は私に…)」

既に作戦の成功を疑っていないユキ。知らず知らずに自分の世界に入ってしまい
すっかり顔が緩んでいました。そんなユキの表情を見て、アンは理由もわからず
逃げ出したい気分に捕らわれてしまうのでした。

(第169話・つづく)

# 多分、バカ話路線になります。^^;;;
## 一泊二日予定(謎)

では、また。

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