神風・愛の劇場スレッド 第166話『きょうだい』(その6)(8/18付) 書いた人:携帯@さん
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ
From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 18 Aug 2002 22:49:18 +0900
Organization: So-net
Lines: 281
Message-ID: <ajo8kt$ct$1@news01cb.so-net.ne.jp>
References: <af4q7o$k82$1@news01bf.so-net.ne.jp>
<afvb3c$9p6$1@news01cf.so-net.ne.jp>
<ageulu$6ri$1@news01dd.so-net.ne.jp>
<ah3tp3$glr$1@news01db.so-net.ne.jp>
<ai0rm3$8ji$1@news01cc.so-net.ne.jp>
NNTP-Posting-Host: pdf4bf5.kngwnt01.ap.so-net.ne.jp
In-Reply-To: <ai0rm3$8ji$1@news01cc.so-net.ne.jp>
X-NewsReader: Datula version 1.51.09 for Windows

石崎です。

夏の埋め立て地のイベントのために、二週程お休みしてました。

第166話本編(その6)です。

#本スレッドは神風怪盗ジャンヌのアニメ版第40話より着想を得て続いている
#妄想小説スレッドです。所謂二次小説的なものが好きな方だけに。

(その1)は、<af4q7o$k82$1@news01bf.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<afvb3c$9p6$1@news01cf.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<ageulu$6ri$1@news01dd.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<ah3tp3$glr$1@news01db.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<ai0rm3$8ji$1@news01cc.so-net.ne.jp>から

それぞれどうぞ。




★神風・愛の劇場 第166話『きょうだい』(その6)

●桃栗町・高級住宅街・水無月家

「ひゃっ!」

 天井から落ちてきた水滴で、我に返った都。
 なまじ広い浴室であるばかりで無く、暖房設備も無いために、浴室の中は雪が
降り積もる外の気温程では無いとはいえ、寒いものでした。
 その所為で、普段であれば身体を洗ってから入浴する都ですら、先にお湯に浸
かった程です。

「(早く暖まらないと風邪引いちゃう)」

 そう思い、慌てて熱いシャワーを浴びるべくレバーを押した都。

「(そうよ。あたしはここに、仕事で来たんだから)」

 熱いお湯を頭から浴びながら、そう心の中で、何度も都は繰り返していました。


●オルレアン・東大寺家

「ただいま」

 木曜日も日が暮れた頃、都は大和を伴って自分の家へと戻りました。
 すると、キッチンの方角から母、桜の「おかえり」の声が、良い匂いと共に届
きました。。
 その匂いをかいで、今日の夕食のメニューがビーフシチューだと理解します。
 それならば、大和の分の夕食も出るだろうと計算した都は、大和を先に自分の
部屋に入れ、リビングに連なるキッチンへと小走りに向かいました。

「母さん」
「何、都」
「友達、連れて来たんだけど」
「まぁ、それは大変」
「その…」
「夕食なら心配しないで良いわよ。一緒に食べて貰いなさい。父さんは今日も帰
って来ないそうだから、一人分余っているの」
「そう…」

 父の名前が出て、警察署での嫌な出来事を思い出してしまった都は俯きました。

「どうしたの?」
「あ、いや。その、父さんも大変だなって」
「でも、週末には絶対に帰って来るわよ」
「どうして?」
「さゆりがね、家に来るって」
「さゆり姉さんが?」

 東大寺さゆり──旧姓ですが──。
 田舎にある国立の研究機関に勤め、そこで職場結婚した都の姉。
 その姉が久しぶりに帰って来ると、母は告げているのでした。

「そ。だから昴も呼んでパーティーなの。だから、まろんちゃんも呼んでね」
「うん。判った」
「それと、名古屋君。今日来ているお友達は…」
「委員長」
「ああ、お客様は水無月さんなのね。それじゃあ、きちんとおもてなししない
と」
「良いよ。恥ずかしい」
「あら。先月都が寝込んだ時、お見舞いに来てくれたじゃない」

 都が絶望の淵に沈んでいた時、ドア越しに話しかけてくれた時のことを桜は言
っているのでした。

「う、うん…」
「それじゃ、お茶を後で持って行くから、都は水無月君の所へ」

 そう言う母の顔は、何故か嬉しそうに都には見えました。



「それじゃ、ごゆっくり」

 そう言い残し、都の部屋を出て行った桜。
 結局桜は、都が話すよりも先に大和を週末のパーティーに招待してしまいまし
た。

「家族でパーティーですか。羨ましいですね」

 そう言うと、桜が持って来た紅茶の入ったティーカップを大和は手にしました。

「委員長の家ではしないの?」
「時々は。ただ、最近は家族のスケジュールが合わなくて。仕事、忙しいですか
ら」
「父さんだって忙しいわよ。だけど、本当に大事な時には万難を排して休んでく
れる」
「それ、良いですね」
「委員長の両親は違うの?」
「両方とも仕事の虫ですから」
「子供より仕事、か…」
「でも、僕の誇りです」
「そんなものなの?」
「はい。両親の仕事は僕の誇りです」
「ふうん」
「それで…」
「それじゃ、作戦会議、始めましょう」

 言ってしまってから、大和が何かを言いかけていた事に都は気付きました。

「ん、何?」
「あ、いえ。何でもありません。どうぞ先に話して下さい」

 何故か大和が慌てた様子なのが気になりましたが、都は本題に入ることにしま
した。



「…と言う訳なの」
「そんな事になっていたとは知りませんでした」

 都は、大和に警察の状況について素直に打ち明けました。

「この事は他の誰にも内緒よ」
「判ってます。この秘密も守ります」
「え?」
「それで、僕は何をすれば良いんでしょう?」
「うん。あたし達には警察みたいな情報収集力は無いし、物資調達力も無い」

 大和の言い方が一々引っかかりましたが、都は話を先に進めました。

「物資なら何とか。情報もネット経由で少しは」
「人員も居ない」
「僕じゃ…」
「不足じゃ」
「そんなぁ…」
「本当はまろんや稚空にも頼みたいところだけど、忙しそうだし」
「そうなんですか?」
「今日も二人ともとっとと帰ったみたいよ」
「仲が良いんですね」
「本当に…ね」

 少し、寂しい表情になってしまったらしい事に気付き、都は慌てて表情を引き
締めました。

「まず、あたし達で出来るだけの事はしたいの。正直、委員長が仲間になってく
れてほっとしてる」

 都は立ち上がると、机の引き出しからファイルを取り出しました。

「これ、見てくれる?」
「警察の装備リストじゃ無いですか!」

 ファイルの中のコピー用紙を捲りながら、大和は驚嘆の声を上げました。

「フフ。勝手にコピーして来ちゃった」
「そんなのをコピーして良いんですか?」
「だって、コピー機にはキーはついてないし、廊下にコピー用紙は山積みだし」
「そういう問題じゃなくて…」
「委員長が気にする問題じゃないでしょ」
「そりゃそうですね。しかしこれは…。こんな物まで持ってるんですか!」
「ジャンヌ絡みでね、本庁からも予算が上積みされているらしいわ」
「これを僕に見せるということは、ひょっとすると」
「ご名答。この中で、委員長に手に入れて欲しい物が幾つかあるの」
「そ、それは…」
「ほら、ここに調達先があるでしょ? 委員長の所も結構納入実績があるわよ
ね?」
「う〜〜ん。何とか頼んでみますけど、あまり期待しないで下さい」
「別に、銃火器とか非合法な代物を頼む訳じゃないわ」
「それなら何とかなるかもしれません」

 しげしげと眺めている大和からファイルを取り戻すと、都は折り曲げてあった
ページを大和に示しました。

「ここにマーカー引いているのが欲しいの」
「あ、これ、ひょっとして技本でも開発中の」
「技本?」
「あ、防衛庁の方です。対人地雷の代替として研究を開始したとか。アメリカで
も同じような物を開発したそうで」
「ふーん。そっちは知らないけど、対ジャンヌ用特殊装備として急遽配備された
の。製造元は委員長の所」
「あ、本当だ」
「ランチャーは弥白の所だけど、これは補網ランチャーのを使い回せるから」
「でも、これだったら東大寺さんが入手出来るんじゃ…」
「それが、危険だからって使わせてくれないのよ」
「危険?」
「顔に命中すると、窒息の危険があるからって」
「補網ランチャーじゃ駄目なんですか?」
「ジャンヌの持っているリボン状の武器で切られちゃうから役立たずなのよ」
「判りました。問い合わせてみます。ただ、特殊な物なので手にはいるかどう
か」
「それから」
「判っています。僕達が入手した事が判らないように、お爺ちゃんには」
「ありがと。それから、これね」
「これは容易に手に入りそうですね」
「でもこれも危険だからって」
「使い方が難しそうです」
「それから…」
「まだあるんですか?」



 しばらくの間、必要な資材を大和に指示した都。
 大和はポケットから電子手帳のようなものを取り出して、それをメモしている
様子でした。

「それじゃあ、後でこれをお爺ちゃんに」
「お願いね」
「あ、もうこんな時間ですね。それじゃあ僕、そろそろ…」
「あ、ちょっと待って」

 腕時計を見て、立ち上がろうとした大和。
 その腕を都は思わず掴みました。

「折角だから、母さんの自慢のシチューを食べてって」
「でも、悪いですよ」
「良いから、遠慮しなさんなって」

 大和の手を引くと、都は彼をリビングへと誘って行きました。



「さぁどうぞ、召し上がれ」
「頂きます」

 父、氷室が帰らないため、夕食は桜と都、大和の三人での食事となりました。
 桜には、まろんと稚空も誘うようにと言われたのですが、稚空は何度ブザーを
鳴らしても出て来ず、まろんにはインターフォン越しにもう食べたと言われてし
まいました。

「(まさか、まろんの部屋で二人きり…。ま、あの二人にそんな事ある訳無い
か)」

 都は、頭の中に一瞬浮かんだ懸念を直後に追い払いました。

「しかし都も家に男の子を連れて来るようになったのね。母さん嬉しいわ」
「え…」
「稚空だって前に来たじゃない」
「稚空君はまろんちゃんとお付き合いしてるんじゃ無かったの?」
「違うわよ!」
「あら、母さんの目も曇ったかしら。間違いないと思ったのに」
「それに、委員長も何度か来てるじゃない」
「それもそうね。こうして改まって来るのが珍しかったから、つい」
「もう」
「それで、どういう関係なの?」

 思い切り期待している目つきで桜は都と大和の双方を見ていました。
 大和はと言うと、何を考えているのか俯いていました。

「残念ながら、母さんの期待しているような関係じゃないわよ。クラスメイトで、
ジャンヌ逮捕を目指して協力してくれる同志。そうよね、委員長?」
「は、はい…」
「なーんだ。母さん期待してたのに」
「何をよ」
「都に彼氏が出来たのかなって」
「ち〜が〜う〜! だって、あたしの…」
「何?」

 思わず自分の本心を言いかけ、慌てて都を口をつぐみました。
 それを不振に感じた桜が、しつこく都が何を言おうとしたのか問い質しました
が、もちろん都は固く口を閉ざし続けるのでした。

「(だって、言える筈無いじゃない。あたしの大切な人がまろんだなんて)」

(第166話(その6) 完)

 取りあえず、復帰第一作は肩慣らしということで短め。
 では、次週へと続きます。

--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ

 記事に対するご意見・ ご感想などがありましたら書いてやって下さい

 件名:
 名前: (ハンドル可)
 E-Mail: (書かなくても良いです)

 ご意見・ご感想記入欄