From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 25 Aug 2002 22:26:57 +0900
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石崎です。
神風・愛の劇場 本編第166話(その7)です。
#本スレッドは神風怪盗ジャンヌのアニメ版第40話より着想を得て続いている
#妄想小説スレッドです。所謂二次小説的なものが好きな方だけに。
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それぞれどうぞ。
★神風・愛の劇場 第166話『きょうだい』(その7)
●桃栗町・高級住宅街・水無月邸
暫く湯に身体を浸しているうちに、のぼせて来た都。
これはいけないと、お風呂から立ち上がりました。
鼻歌を歌いながら浴室を横断し、戸を開けた都は、鼻歌を中断しました。
そのまま一瞬。そこで硬直します。
「あ…」
不思議と、悲鳴は出ませんでした。
そのまま無言で、戸を閉めた都。
扉の外で大和が動揺した声で何事かを叫び、そのまま洗面所の扉が閉まる音が
しました。
それまでの間、浴室の壁に身体を預けていた都。
物音がしなくなると、再び戸を少しだけ開けました。
今度は慎重に、タオルで前を隠しながら。
洗面所に誰もいないことを確認すると、漸く戸を全開にして洗面所に入りまし
た。
「…ったく。間が悪い奴」
洗面所に大和が入って来た理由は、扉の直ぐ横の籠の中にありました。
その理由──ピンクのパジャマ──に袖を通しながら都は呟きます。
「まるで漫画よね」
*
「あ、あの…」
風呂上がり。リビングでくつろぐ都。
部屋の隅に立っていた大和は、漸く都に話しかけてきました。
大和が何を言いたいのかは判っていましたが、大和が声をかけて来るまで、敢
えて彼を無視していた都。
別に怒っていた訳では無く、大和がどう都に言ってくるのか興味があっただけ
なのですが。
「その、ごめんなさい!」
そう言い、頭を下げた大和。
「何を謝っているの?」
「だから、その…あの…」
「寝間着。ありがとね。何も用意していなかったから」
「あ、はい! 母のですが、サイズも合っているみたいで、丁度良かったです」
急に明るい顔になって、大和は言いました。
「ふぅん」
「あ、あの…」
「それで、何を謝ろうとしたの?」
「お風呂から出て来た所に入っちゃって…」
「見たんだ」
「え?」
「あたしの裸」
「えっと、その…ちょっとだけです」
「嘘ね」
「嘘じゃないです」
「ふーん。ま、そう言う事にしといてあげる」
「その…本当にごめんなさい」
「そんなに何度も謝らずとも良いわよ。どうせ、減るもんじゃないし」
そう言うと、都はこの部屋に入って初めての笑顔を大和に見せました。
それでほっとしたのか、大和は再び明るい笑顔を見せて言いました。
「それもそうですよね」
「なぬ?」
大和の何気ない一言。
それは、都の知る大和とは違うもの。
「あ…、ご、ごめんなさい」
「ほら、何度も謝らない」
「は、はい」
「な〜んか変な感じ」
「僕がどこか変ですか?」
「うん。変」
「そうですか?」
「今だけじゃない。やっぱり最近の委員長は変」
「どこがですか?」
「昨日あたしに告った事といい」
「そんな大げさな…」
そう言いかけた大和は都に睨まれて口を噤みました。
「基本は普段の委員長なんだけど、どこか自信に満ち溢れているというか」
「そうですか。そう見えてましたか」
「そうよ。今のその態度だってそう」
「そう見えるとしたら、東大寺さんのお陰です」
「あたしの?」
「はい。昨日、東大寺さんに憧れているって言いましたよね?」
「そんな事、言ったかしら」
本当は大和の言葉の一字一句まで覚えていたのですが、都はとぼけました。
「もしも僕が変われたとするならば、それは僕が東大寺さんに憧れて、自分もそ
うありたいと願ったからなんだと思います。それに」
「それに? 何よ」
大和の目を注視した大和。
しかし、昨日の学校でと同じように、大和は目を逸らさずに自分の目を見つめ
ていました。
結局、先に目を逸らしたのは今日も都の方でした。
何故か、ため息をついた大和。そして言いました。
「何だかんだ言って、東大寺さんは僕にとって家族を別にすれば最も近しい人な
んです」
「そうなの? 稚空やまろんだって居るじゃない。それに他に友達居ないの?」
「名古屋君や日下部さんは大切な友達です。それに、ネットでの友達も沢山いま
す。でも、東大寺さんは少し違うんです」
「違う?」
「僕の心の中にまでずけずけと踏み込んで、言いたい事を言ってくれる」
「何だか非難されている気がするわ」
「褒めてるんですよ」
「あ、そう」
「僕をからかう人や、優しくしてくれる人は沢山いましたけど、東大寺さんは僕
のことを誰よりも真剣に考えて、意見してくれていたのが判りましたから」
「友達として当たり前の事じゃない」
「その当たり前の事が出来ない人は大勢います。僕も、余り人の事は言えないで
すけど」
そう言い、大和は微笑みを都に向けました。
「…暑いわね」
「は?」
「暑いって言ってんのよ。この部屋、暖房効き過ぎじゃない?」
「す、すいません」
慌てて、リモコンを手にして大和は暖房を弱めました。
「何か、風呂上がりに冷たい物無い?」
「トマトジュースならありますけど」
「牛乳が良いな。育ち盛りだし」
「はい。用意して来ます」
リビングから大和が出て行った後で、一人残された都。
「あいつ…」
そう言い、都は目を閉じました。
そして大和が牛乳をリビングに持って来た頃には、都は既に寝息を立てている
のでした。
●水無月邸の離れ
外の雪は既に止み、水無月邸の周囲は静寂に満ちていました。
リビングのソファの上で眠り込んだ都を起こすことも、かといって寝室まで運
んで行くことも出来ず、結局ソファの上に都を横たえて、布団をかけて自分の寝
起きする離れへと引き上げてきた大和は、眠れない夜を過ごしていました。
「(やっぱり、あの夜の事はあの時限りなのでしょうか)」
何度も何度も、あの夜のことを示唆したのに、都はそれを無視していました。
やはり、あの約束をずっと守るつもりなのだろう。
そう大和は解釈していました。
「(でも、僕は…)」
都をソファに横たえた時の手の感触。
母のパジャマから覗いた胸元。
そして、風呂上がりの都の…。
先程も、自分の欲望を抑えるのに必死だった大和。
今も、その時のことを思い出しては、耐えているのでした。
母屋と結ばれている屋根付きの通路に繋がった扉が叩かれたのは、そんな時。
通いのお手伝いさんが子供が風邪を引いたという理由で休んでいる今日、扉を
叩くのは一人しかいない筈でした。
「どうぞ」
こんな夜中に何をしに?
夜中にわざわざ訪ねて来るなんて一つしか理由は無いじゃないか。
いやいや。思い込みは禁物。
ベットから起き上がり、扉へと向かうまでの間、妄想と理性の間を行き来して
いた大和。
扉を開けて見えた都の姿を見ると、鼓動は高まりました。
「…中に入っても、良い?」
入り口に立つ都は、枕を抱きかかえていました。
*
「どうぞ。夜中なので眠れなくなってしまうかもしれないですけど」
そう言い、大和はテーブルにミルクティが入ったカップを置きました。
「ありがと」
そう言い、都はミルクティーをすすりました。
持って来た枕は足下に置いてあり、パジャマの上からは大和が持って来たカー
ディガンを羽織った姿。
それを見ながら、大和の胸の鼓動は高まったままで居ました。
「ん〜。身体が暖まるわ」
「暖房、消さない方が良かったみたいですね」
「それは良いけど、布団一枚じゃ寒かったみたい」
「すいません。こんなに冷え込むとは思わなかったので。両親の寝室で休んで下
さい。あちらには羽毛布団だけじゃなくて毛布もありますので」
自分の欲望を奥底に引っ込めることにした大和は、そう申し出ました。
「それは良いわ」
「え?」
「この格好を見て気付かないの?」
「はぁ」
「鈍いわね。今晩はここで寝かせて」
「ええ!? 良いんですか?」
「良いも悪いも。枕持って来ちゃったし」
「ですが」
「嫌なの?」
「いえ、そんな事は」
「じゃ、決定ね」
言うなり、傍らに置いてあった枕をベットの上に放り投げた都は、続いて自分
自身がベットの上に飛び込みました。
「そ、それじゃ僕は母屋で…」
そう言い、立ち上がった大和。
このまま一緒に居たら、自分を抑えられそうに無かったからです。
「駄目。委員長もこの部屋に居るの」
「じゃあ、床で寝てます」
「こんな寒いのに?」
「大丈夫です」
「このベット大きいんだから、委員長も一緒に寝れば良いでしょ」
「ですが」
「最初からそのつもりで来たんだから」
「え!?」
「さぁ、委員長も早く入りなよ」
勝手に布団の中に入り込んだ都は、大和を手招きしました。
「は、はい」
都に誘われるまま、ベットの中に入った大和。
それでも、都から出来るだけ離れて、背中を向けて寝ようとしたのですが。
「ね、委員長」
背中から都の声がして、肩に都の手が置かれました。
「な、何ですか?」
「背中向けてないで、こっち見て」
言うなり、大和の頬に手をやると、都の方を向かされました。
すると驚く程近くに、都の顔が見えました。
「…」
「ね、どうしてここに来たと思う?」
「どうしてですか?」
「秘密を守れる?」
「もう、何個でも秘密は守りますよ」
「怖いのよ」
「は?」
都の口から出たのは意外な言葉でした。
「静かすぎるの。このお屋敷」
「確かに」
「母屋には誰も居ないし」
「両親は仕事で外泊ですし、佐藤さん、あ、家政婦さんですけど、今日はお休み
で」
「それはさっき聞いたわ」
「すいません」
「だからすぐに謝るな」
「はい」
「それで、広いお屋敷の広い部屋で、一人で居ると、何か出そうな気がして」
「何か出る?」
「ほら最近、この町内には色々出るらしいじゃない」
「僕も見たことが。確か…」
「止めてよ、その手の話、嫌いなの」
「意外です。お化け屋敷のお化けを脅かしたって日下部さんから聞きました」
「あれは作り物だって判ってるから良いの!」
そう言う都の表情は本当に嫌がって居る風。
それまでの緊張が一気に解けた気がした大和は、急にある事を思いつきました。
「そうだ。お化けですよ」
「え?」
「怪盗ジャンヌは泥棒以外の何かの目的があるのかも。今日、そう言ってました
よね」
「ええ。だけどそれが」
「この町内の怪奇現象と、怪盗ジャンヌの出現に何か因果関係は無いでしょう
か」
「まさか」
「この前の謎の陥没事故。空中で連続して発生した爆発音。それに何より体育館
の事件とその後の現場で発生した爆発事故と称する何か。人の技とは思えませ
ん」
「だけどそれは…」
陥没事故は戦争中の記録に残されていない地下壕の陥没とされているのを始め、
それぞれにもっともらしい理由が発表されていましたが、どれも推測に過ぎない
ことは都も承知している筈でした。
「警察はその線では絶対に動かない。いや、動けない筈です。僕達が警察と同じ
真似をしようとする限り、絶対に彼らには叶いません。それならばいっそ、通常
の捜査は警察に任せて、その線から僕達は調べてみるべきじゃ無いでしょうか」
自分の思いつきに興奮した大和は、気付かない内に、彼の頬に添えられたまま
だった都の手を取って話し続けていました。
「そうね。委員長の言う通りだと思う。心当たりがあるし」
「体育館の事件の時の夢の話ですね」
そう言うと、都は何故か考え込む風でしたが、ややあって肯きました。
今日の作戦会議の際に、都が体育館の事件の時に見た夢の話を聞かされていた
大和。
流石にそれを頭から信じ込む気にはなりませんでしたが、こうしてみると、子
供の頃見た正義のヒーロー番組の構図なのでは無いかと妄想が膨らんでいくのが
自分でも判り、段々と興奮が高まって行きました。
「馬鹿馬鹿しい妄想かもしれないけど、調べてみる価値はあるかも」
「ですね。あ…」
ふと、自分が都の手をしっかりと握っていたことに気付いた大和は、慌てて手
を離そうとしたのですが。
「このままでいて」
「え?」
「手、繋いだままでいて良いよ」
「良いんですか?」
そう言うと、こく、と都は肯きました。
「でも、そこから先は駄目だからね」
「え…あ、はい」
「今日は大サービスしちゃったし。これで打ち止め」
「え?」
「思いっきり見てた癖に」
「え…あ…」
先程の光景を思い出してしまった大和。
「やっぱり見てたのね」
「本当に一瞬だけで…」
その一瞬で、それまでは気がつかなかった発見があったのですが、もちろんそ
の事は口にはしませんでした。
「それでどうだった?」
「その、素敵で…眩しくて…」
「ありがと。あたしも良く気をつけずに無防備で出て来たのが悪いんだから、気
にしないで」
「はい」
「それじゃもう休みましょ。本当に、ここまでだからね。委員長のこと、信じて
るから」
「判ってます」
大和がそう言うと、都は素早く大和の額に唇をそっと触れると横になり、直ぐ
に寝息を立て始めました。
その手はしっかりと大和の手を握りしめたままで、都は無防備な姿を大和の目
の前に晒していました。
手を伸ばしそうになる欲望を何とか抑えつけた大和。
何とか都から目を逸らし、横になろうとしましたが、眠れそうにありませんで
した。
「(こりゃ、拷問だ…)」
結局、全く眠れないまま夜を明かすことになる大和でした。
(第166話(その7)完)
都×委員長の話が予定より長くなってしまいました(約3倍)。
次回は次週末です。後4回位でしょうか。
では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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