神風・愛の劇場スレッド 第165話『悪魔の矢』(その1)(3/29付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: 佐々木 英朗<hidero@po.iijnet.or.jp>
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
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佐々木@横浜市在住です。

# 1週お休みさせていただきましたが、再開です。

# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
# 所謂サイドストーリー的な物に拒絶反応が無い方のみ以下をどうぞ。



★神風・愛の劇場 第165話 『悪魔の矢』(その1)

●枇杷町 山茶花邸

部屋に通された稚空は弥白が飛び付きそうな勢いで近づいてきた事に
少したじろぎました。もっとも実際には目の前まで来ただけでしたが、
彼の隣りに案内してきたメイドが居なかったらどうなったか判りません。
もっともその様子は少なからず稚空を安心させました。

「元気そうだな」

背後で扉が閉まった事を確かめてから稚空は言いました。

「残念ですわ」
「え?」
「寝込んでいれば優しくしてもらえたのでしょうね」
「俺は何時でも優しいだろ」
「ええ」

優しいから痛いのですけれど…と言う変わりに笑顔で応える弥白。

「でも、もっと早くに会いに来て下さるのが本当に優しい殿方
という物ですわよ」
「悪い。俺もあの後ドタバタしててな」
「そうですね、稚空さんも会場にいらしたんですものね」

日下部まろんが心配だったのでしょ?…そう言ってしまったら稚空は
どんな顔をするだろうかと弥白は想像してみました。

「ところで稚空さんの学校は?」
「今日まで休みだ」
「枇杷校も同じですわ」
「どうせなら今週いっぱい休みにしろって感じだけどな」
「そうですわね」

とは言ったものの、弥白は逆の事を考えていました。早く学校が再開した方が
気晴らしになるのでは無いかと思っていたからです。そんな事を思いながら、
ふと弥白は稚空の視線が自分から時々逸れる事に気付きました。
弥白はその稚空のズれた視線の先を目で追ってみます。
そこには窓があるだけで、外は既に暗く何も見えなくなっているのですが。

「稚空さん?」
「ん、いや」
「何か見えました?」
「何でも無い」
「実は私も気になっていましたの」
「何がだ」
「ずっと誰かが覗いている様な気がして」
「ここは三階だろ?おまけに警戒厳重な山茶花邸の奥深くだぜ」
「それはそうなのですが…」

稚空にとっては予想外の事ではありました。弥白の勘が良いのか、それとも
セルシアの気配の消し方が下手なのか。どちらにしてもあまり歓迎出来ない
事であるのは確かです。何とか弥白の気を逸らそうとした結果、稚空は
思いの他長居をしてしまう事になるのでした。



車で送っていくと言い張る弥白を何とかなだめて帰路に就いた稚空。
屋敷が見えなくなった辺りでボソっと声を掛けました。

「おい、セルシア」

やや間を置いて頭上から返事がありました。

「は〜いですです〜」

ふわりと舞い降りたセルシア。ちょっと慌てた風情で、どうやら屋敷の方から
急いでやって来たという感じです。それなりに役目には忠実な様ではありました。

「弥白が気付いている様な気がするんだが」
「私の事ですです?」
「そうだよ」
「そんなはずは…」
「無いのか?」
「…多分…」

頼んだ手前あまり強くは言えないなと思い直した稚空、それでもなるべく
困っている感じを正直に伝えようとします。

「バレるとまずいんだ」
「判っているですです」
「弥白はカンが鋭い」
「あ、やっぱり。そうだと思ったですです」
「やっぱりバレてるのか」
「あっ、えっとそうじゃ無いですです。でも時々目が合っちゃってる様な…」
「そういうのをバレてるって言うんだよ!」
「うぅ…」

目に見えて小さくなってしまったセルシアに、稚空は言い方がきつかったか
と今更思いましたがどうしようもありません。そう言えば後でトキと交替
するのだったと思い出した稚空。あと少し頑張ってもらえば良いかと
とりあえず慰めておこうと考えたのですが。

「あのな、まぁ、多分大丈夫だとは思うが後少しの間だし慎重に」

それを聞いたセルシアは顔をさっと上げると力強く宣言しました。

「こうなったら責任取って最後までやり遂げるですです!」
「は?」
「彼女の護衛はずっとお任せですです」
「いや、しかしなトキが」

ほんの少しの間、無言で目を閉じていたセルシア。そして。

「トキには来なくていいって今伝えたですです」
「お、おい、ちょっと待て」
「それじゃ職務に戻るですですっ!」

それだけ言うと後は勝手に飛んで行ってしまうセルシア、稚空はただ
見送る事しか出来ませんでした。

●オルレアン

からから、と音がして窓が開かれるとベランダから誰かがふわりと部屋に
入って来ました。すぐには寝付かれない様な気がして、特に何をするという訳
でも無くぼんやりと過ごしていたまろん。微かな気配に顔を上げると少々困った
様な顔をしたトキがそこに居ました。

「夜分失礼」
「あれ、セルシアは?」
「それがですね」

トキはセルシアが何故かやる気満々らしく一人で弥白の護衛を続けると
言っている事を説明しました。

「その様な訳で、セルシアの気分は尊重してやりたいと考えたのです」

考えと言わず気分という辺りが何処と無く微笑ましいと、まろんは思います。
そしてセルシアとトキは今までどんな時間を一緒に過ごしたのだろうか、とも
考えてしまいそうでした。まろんの思考を遮ったのは、彼らしく無いと思える
言いづらそうな一言でした。

「それでですね…」
「え?何?」
「セルシアが」
「ん?」
「お腹が空いたと言ってまして、出来れば」
「……あぁ」

トキが何を言い淀んでいるのか、まろんはやっと飲み込めた様でした。

「お夜食作るから、持って行ってあげて」
「仕事を増やして申し訳無いのですが」
「ううん、そんなの気にしなくていいよ」
「ありがとう」

まろんは初めてトキの笑顔を見た気がしました。

(第165話・つづく)

# ほとんどプロローグという感じで何も話が進んでませんが。^^;
## 多分、5分割前後になると思いますが中盤以降を書いている最中なので
## 伸び縮みの可能性もあります。
### つづきは次週以降という事で。

では、また。

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