神風・愛の劇場スレッド 第156話『誤算』(その7)(11/19付) 書いた人:携帯@さん
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ
From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Mon, 19 Nov 2001 23:38:41 +0900
Organization: So-net
Lines: 527
Message-ID: <9tb5hj$feu$1@news01be.so-net.ne.jp>
References: <9rghhm$2b9$1@news01ch.so-net.ne.jp>
<9s39i4$jh$1@news01bf.so-net.ne.jp>
<9tb15m$a86$1@news01bj.so-net.ne.jp>
<9tb332$ag9$1@news01bj.so-net.ne.jp>
<9tb4am$gl3$1@news01cf.so-net.ne.jp>

石崎です。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
です。そう言うのが好きな人だけに。

 hidero@po.iijnet.or.jpさんの<9qope5$1nh@infonex.infonex.co.jp>における
談合結果に基づき、前回に引き続き今週も私パートです。
 佐々木さんのファンの方には申し訳ありませんが、今暫くお付き合いの程を。

 第156話の残りの話をお送りします。
 約2800行程ありますので、(その4)〜(その8)までの5分割でお送り
します。
 この記事は、第156話(その7)です。

第156話(その1)は、<9qu0j7$cda$1@news01cc.so-net.ne.jp>
     (その2)は、<9rghhm$2b9$1@news01ch.so-net.ne.jp>
     (その3)は、<9s39i4$jh$1@news01bf.so-net.ne.jp>
     (その4)は、<9tb15m$a86$1@news01bj.so-net.ne.jp>
     (その5)は、<9tb332$ag9$1@news01bj.so-net.ne.jp>
     (その6)は、<9tb4am$gl3$1@news01cf.so-net.ne.jp>から

よりそれぞれお読み下さい。


 前回に続いて今回も低いので、R指定をつけておきます。
 ご注意。



★神風・愛の劇場 第156話『誤算』(その7)

●……

「そう、あなたがまろんを守るのよ」

 彼女にそう囁いた。

「でも、あたしは弱い。いつもまろんに守られてばかり。あたしはまろんを守っ
ているつもりで、その実まろんに助けられてばかりだった。今だって…」

 そう言う彼女の口を、私は唇で塞いで黙らせた。
 そして私の手は、彼女を優しく包み込む。

「大丈夫よ都。私が力をあげるから。まろんを守ることが出来る力を」
「何を、するの?」
「大丈夫。怖くないから。私に全て任せるの。心も身体も私に委ねるの」
「フィン…」

 それは、私達天使が命の源である『聖気』を渡す時の一つのやり方。
 自分達で繁殖をする事が出来ないにも関わらず、人間だった時の記憶から、形
式だけが残った様式。
 そして神の『謁見』の儀に欠かせない…。


●県立桃栗体育館・地区大会会場(第1体育室)

 倒れていた警官から拾った警棒で、ナイフで身を守ろうとしている少女を襲っ
ていた稚空のことを殴りつけ、倒した後の事は良く覚えていませんでした。
 そもそも、そんな事があったかどうかも、記憶は定かではありませんでした。
 まるで夢の中にいるような気分。
 周囲の状況も又、それを裏付けていました。
 聖先生に言われるまま、観客席から廊下に出て、競技場まで稚空を少女と運び
ました。
 観客席でもそうでしたが、廊下にも人が大勢倒れていました。
 どうして彼らが倒れたのか、どうして自分達は倒れないのか。
 気のせいか、SFやファンタジーの世界でしか登場しないような、見た事も無
い生物が廊下を闊歩していたような気もします。

 そうだ、これは夢に違いない。
 そうだとしたら、この非現実的現象も納得がいく。
 そう思い、大和は周囲の状況に疑問を感じることは止めました。

 競技場の中にはジャンヌとまろん、都達が待っていました。
 ジャンヌはここで、大和にまろんを好きにして言いと言いました。
 それは、とても魅力的な提案で、少し前までの大和ならば飛びついた事でしょ
う。
 もちろん、ここが夢であるとしてです。
 現実の大和は、そこまで積極的にはなれませんでした。

 しかし、夢の中であるにも関わらず、大和はそれを受けませんでした。
 一度都と決めた以上、夢の中でも筋を通さないと。

 何故か都は半分レオタードを脱がされていて、桐嶋先輩によってリボンで縛ら
れていましたが、この脈絡の無さも夢だからだろう。そう大和は思いました。
 リボンが固く食い込んで痛そうだったので、大和はリボンを緩めようとしまし
た。
 すると、するりとリボンが緩みました。
 どうやら、スティックを通して自分の意志で動かすことが出来るようでした。

 ちらりと横を見ると、稚空と弥白、まろんとツグミがそれぞれ宜しくやろうと
している光景が目に入りました。
 日下部さんと瀬川さんがそういう関係というのは本当の事なのかな?
 それとも、そうかも知れないという僕の思いが、こんな夢を見せているのかも。

 周りが宜しくやっているのなら、僕も。
 都を優しく床に寝かせました。
 しかし、何故か都は嫌がるのです。

「委員長! あんたまろんの事が好きだったんじゃないの?」
「日下部さんのことも好きですけど…。彼女には別に好きな人がいますから」
「まろんが駄目だったら私なワケ? そんないい加減な」
「いい加減な気持ちじゃありません! だって、僕は…」

 その先を言うのは止めました。
 そうか。あの夜のことは二人だけの秘密。
 今後も一切口にしない約束だったっけ。
 でもここは夢の中。
 現実には決して言う事の出来ない想いを今、ここで伝えます。
 夢の中でも言葉にして言う事は出来ないけれど。

 東大寺さん。僕は貴方の頼みだからという理由だけではあんな事はしなかった。
 ずっと、憧れていたんです。
 自分の気持ちを隠して、日下部さんを守り、思い続けようとする東大寺さんの
強さに。
 自分の力で何とか出来ればと思っていたんです。
 筋を通そうとする余り、クラスの中で独りになり勝ちだった東大寺さんを。
 無理矢理委員長の役を押しつけられ、クラスのみんなに虐められていた僕を東
大寺さんは一人、助けてくれましたね。
 日下部さんが貴方を守る時と同じように。
 貴方はそんな事は忘れているかもしれませんが、僕は一生忘れない。
 だから、僕は…。

 必死に愛そうとしました。
 しかし、目の前の都は泣き続けていました。

「酷いよ…。どうしてそんな事、委員長に出来るの? 前に委員長、困った事が
あったら相談してって言ってくれたよね。嬉しかった。そんな優しい委員長がど
うして、こんな事出来るの? 今の委員長は、あたしの知ってる委員長じゃない。
偽物よ…」

 涙を流しながら、それでも大和のことを真っ直ぐ見て、都は訴えました。

 違う…僕が…偽物…?

「委員長も何か悪い物が取り憑いているんでしょ。お願いジャンヌ! 委員長を
…あたしの知っている委員長に戻してよ!」

 東大寺さんの知っている僕…。
 どうして僕は、東大寺さんにこんな事が出来るんだ?
 戻らないと。
 例え夢の中でも、僕は僕なんだ。
 何をしても許される訳じゃない。



「東大寺さん、あの、僕…」

 大和の手が止まり、覆い被さっていた身体がどいて、身体が軽くなりました。

「委員長?」
「あの、僕、東大寺さんに酷いことを…」

 戻ってる。

「委員長だよね? 本当に委員長なんだよね」
「はい。僕です。水無月大和です!」

 やっぱり、元の委員長。

「帰って来てくれたんだ」

 ほっとしたやら嬉しいやらで、思わず大和に抱きついた都。

「あ、あの、東大寺さん?」

 委員長はドギマギした様子。
 そう言えば、あたし…。

「キャア! 委員長のエッチ!」

 自分の今の姿を思い出した都が、委員長の頬を反射的に叩いた時、両腕も自由
になっている事に今更気付きました。
 それに気付くと、都は両腕で前を隠しました。

「あの、東大寺さん。これ…」

 自分の着ていたコートを大和は都にかけてくれました。
 元々羽織っていたジャージはボロボロで、その意味を成さなくなっていたから
です。
 それでも、床に落ちていたそれを都は手にしました。
 回収するものがあったからです。

「多分これが、あたしを守ってくれたんだよね」

 ポケットの中から取り出したのは、鳥にしては大きめの白い羽根。
 あの人外の者がお守りにとくれた物。

「委員長、それ貸して」

 大和がまだ手にしていた新体操のリボン。
 それを都は手にしました。
 頭の中に、何かが侵入しようとする気配が感じられましたが、それを都は心の
中で拒みました。
 周囲を見回すと、ツグミとその下で喘ぐまろんの姿が見えました。
 よし、まずはまろんから助けなきゃ。



 目の前で、愛しい人と憎むべき害虫が戯れていました。
 認めたくない光景でした。
 それでも、ずっと我慢していたのです。
 弥白様がそれを望むのなら、私はそれを見守っていよう。
 どのみち、あの害虫の恋人は、間もなく消えてなくなるらしいから。
 それで全ては丸く収まるの。
 私が一人で思い焦がれれば、それで済むの。

 だから、目を逸らしました。
 しかし、ここから立ち去ることは出来ませんでした。
 その代わりに耳を塞ぎました。
 それでも、指と指の間から、想い人の何とも言えない声がするのです。

 こんなのは私の弥白様じゃない。
 不潔。
 止めさせなきゃ。

 佳奈子はそう決意すると、愛しい人に向かって歩き出しました。



 目の前のまろんは、ツグミの姿を纏った自分の術中にありました。
 覗き見したツグミの手口を可能な限り模倣し、それにミストの経験を付加する。
 それだけで、目の前の聖女の後継者は、我を忘れかけていました。
 しかし、それでも未だ、まろんはミストを拒み続けていました。
 でも、後少し。
 後少しで完全に我が術中の中。
 そう思ったその時です。
 ミストの右腕を何かが捕らえました。

「何?」

 驚いて振り向くと、都がリボンを使い、ミストの右腕を縛り上げていました。
 都を抑えるべき水無月大和は、その後ろで弥白達の方へ向かっていました。

「おいお前!」

 大和に呼びかけるミスト。

「何ですか?」
「どうして途中で止める!」
「僕には、嫌がる人に無理矢理と言うのは出来ないですから」

 大和の目には、最早悪魔の痕跡はありませんでした。
 馬鹿な。
 どうしてこの環境下で人間の心を保っている?
 それ以前にどうして悪魔の影響から…。

 混乱するミスト。
 そもそもノインは何をしていたのだ。
 辺りを見回すと、いつの間にかノインとまなみの姿は見えませんでした。

「あの役立たず!」

 苛立つミスト。
 今度は一人する事が無い筈の佳奈子の方を見ました。
 すると、ナイフを手に、弥白の方に向かって歩いて行くのが見えました。
 弥白の側に立ち、そのナイフを弥白の背に突き立てようとしていました。

「!」

 反射的に術を使いました。
 高圧の空気の塊を相手にぶつける術です。

「キャアア…」

 吹き飛ばされ、床を転がる佳奈子。
 それと一緒に、弥白と稚空も引き離され、床を転がりました。

「どこを見ているの?」

 リボンでぐいと右腕を引かれ、ミストは自分の現状を思い出しました。

「あんたの相手は、この私だから。怪盗ジャンヌの偽物さん」

 東大寺都はそう勝ち誇った表情で、ミストに言うのでした。



 ノインはまなみを連れて、観客席の最上段から高見の見物をしていました。
 このまま空間を跳躍し、結界の外に出ても良かったのですが、流石にそれはし
ませんでした。
 ミストを見捨てる訳にもいかなかったからです。
 だから、眼下で悪魔の側に取り込んだ筈の人間が一人、自分を取り戻した時、
その様子をノインは逐一観察していました。

「彼はこれまでも何度も悪魔に取り憑かれている。それ故、自分を取り戻すのも
早いのか? それとも…」

 そう呟くノインは、そのマントの下でまなみを抱きしめ続けていました。
 それでまなみは十分満足している様子なので、ノインは少し安心しました。

「さて、いつ助けに行きましょうか」

 ノインは、自分を高く売る算段をしていました。



「正体を現しなさい! 偽ジャンヌ」

 都の想像した通り、そのリボンは都の意志のまま、自由自在に操る事が出来ま
した。
 都はツグミにしか見えないその存在にリボンを振るい、まろんに手を出すのを
止めさせました。
 ツグミはキョロキョロと辺りを見回すと、大和に声をかけました。
 やはり委員長はこいつに操られていたのね。
 許せない。

 それでこちらを見るかと思ったら、今度は何かの術を用いて稚空と弥白、そし
て枇杷高校の少女を吹き飛ばしました。
 何て事を。

 自分が無視された上、友達とライバルを傷つけられ、都は怒りました。

「東大寺さん、私は…」
「瀬川さんは、この会場には今日は来ていない筈よ」
「まぁ、バレバレよね」

 ツグミの姿が、ジャンヌの姿へと変化しました。
 都は意識をリボンに向け、ジャンヌを引き寄せ、まろんから引き離そうとしま
した。
 リボンに引かれるまま、立ち上がるジャンヌ。

「まろんを離して。ジャンヌ」
「良かろう」

 そう言うなり、ジャンヌはまろんに巻き付けたままだったリボンを手元に素早
く回収するなり、それを真っ直ぐに都へと向けて来ました。

「危ない!」

 起き上がったまろんの叫び声。
 しかし、そのリボンが都に届くことはありませんでした。

「ほぅ。神のバリヤーとは」
「神のバリヤー?」

 意味不明の言葉をジャンヌは呟きました。

「あんた、本物のジャンヌじゃないのよね」
「ああ。先程も言った筈」
「予告状の話は…」
「出したのは私よ」
「あんた達はジャンヌの敵なんだ」
「そういう見方もある」
「そう…。敵の敵は味方って言う言葉もあるわね」
「良い言葉だ」
「だけど、あんただけは、絶対に許さない!」
「ならば我を倒してみせろ」
「望むところ」

 都は、意識を集中してリボンをたぐり寄せ、偽ジャンヌを床に倒そうとしまし
た。
 しかし、どうやってか偽ジャンヌはリボンから抜け出すと、手にしたリボンを
持って跳躍しました。
 上空からのリボンの一撃。
 しかし、これも都には届きませんでした。
 都も負けずにリボンで反撃しました。
 しかし、ジャンヌをリボンで捉えたと思った瞬間、ジャンヌの姿はかき消え、
直後に別の空間に出現しました。

「詐欺よ!」

 と、叫ぶ都。
 恐らく相手にしてみれば、攻撃が通じない都の方こそ、詐欺だと叫びたいので
しょうが。

「都! 逃げて!」

 背後から、まろんの声がしました。

「まろんこそ委員長や稚空達を連れて逃げて! ここはあたしが何とかするか
ら!」

 そう叫ぶと、都は目の前の難敵に再び意識を集中するのでした。



 都が戦う様子を、まろんは信じられない思いで見ていました。
 あのミスト相手に、互角に戦っているなんて。

 見ている内、急に肌寒さを覚えました。
 自分の今の姿に気が付くと、慌ててボロボロになった服を着直すと、素早く周
囲の状況を観察しました。

 床の上に、リボンが落ちていました。
 多分、偽物のジャンヌが使っていたリボンなのでしょう。
 念のために、拾ってみました。
 すると、何だか嫌な感触がしました。
 これも、悪魔が取り憑いた産物なのかも。
 そう感じましたが、何かの役に立つだろうと持ち続けることにしました。

 向こうの方に倒れている稚空と、側で稚空を助けようとしている大和の姿が見
えたので、そちらに向かって駆けていきました。
 まろんが辿り着くと、弥白と枇杷高校の少女が気を失って倒れていました。

「委員長」
「日下部さん。名古屋君のこれ、なかなか剥がせないんですよ」

 稚空は何か白い物に包まれていて、身動きが取れない状態になっていました。
 恐る恐る下半身に目を向けましたが、ちゃんと服は着ていたので、まろんは少
しほっとしました。

「まろん、大丈夫か」

 どうやら稚空は意識はあるらしく、話しかけて来ました。

「人の心配する前にまず自分の心配したら」
「面目ない」
「でもこれ、どうしよう」
「その前に委員長」
「はい」
「弥白達の様子を見て来て欲しい」
「判りました」

 委員長が駆けて行くと、稚空は小声でまろんに囁きました。

「上着の裏側だ。まろん」
「え?」
「良い物が入ってる」

 言われた通りに探ると、折り畳まれた何かがありました。
 白い物質で稚空の上半身が覆われている為に、引っぱり出すのに苦労はしまし
たが、何とか取り出すことが出来ました。
 その色に、あるアイテムを想像したまろん。
 その持ち主がやっているように、それを振るってみました。

「これって…」
「いつも持ち歩いているのさ。ここに入る時は、ちょっと隠すのに苦労したが
な」

 まろんがシンドバット・ブーメランを使うと、その白い物質は、バターをナイ
フで切るように切れて行きました。

「良いわよ。動いてみて」

 稚空は起き上がると、身体にまとわりついていた物質を手で払い落としました。

「酷い目にあったぜ」
「それはこっちの台詞よ」
「すまん」
「謝るのは後。戦いはまだ続いているわ」
「変身出来ないのか?」
「良く判らない。もしかしたら、このロザリオが偽物なのかも」
「何話しているんですか?」
「わ!」

 小声で話していると、委員長が割り込みました。

「兎に角、ここから出ないと。だけど」
「判った。都の事は俺に任せろ」
「僕をのけ者にしないで下さいよ」
「委員長。大事な使命があるんだが」
「何でしょう」
「まろんと弥白達を連れて、ここから脱出して安全な場所へ」
「え〜でも…」

 都の方を見る大和。

「都の事なら俺に任せろ。とにかく今は、委員長にまろん達を任せるしか無いん
だ」

 そう言われると、大和も肯くしかありませんでした。


●県立桃栗体育館・通路

「これは一体…」

 委員長が弥白、まろんが枇杷高校の少女──名前は大門佳奈子と聞きました─
─を背負い、競技場から出た都合四名。
 そこで見たものは、通路に倒れる人・人・人。
 そしてその間を闊歩する、人で無い存在。
 ──悪魔!

「何ですか、あれは…」
「判らない」

 出入り口までの最短ルートを悪魔が闊歩していたので、遠回りをするしかあり
ませんでした。
 それは、まろんにとっても好都合。
 控え室の中に置いてあった、鞄を取りに行く必要があったからです。
 控え室に辿り着き、自分の鞄を手にしたまろん。

「嘘…」

 ロザリオだけが、無くなっていました。
 一緒に入れてあったプティクレアの方は、無事に入っていたのですが。

「それじゃあ、これは」

 首から下げられたロザリオを見ました。
 あの時も、ミストはこのロザリオには触れないようにしていたので、本物だと
思っていましたが、やはり本物のようでした。

「日下部さん、早く早く」

 まろんは、自分と都の鞄だけを掴んで、控え室を出ました。
 そして、やはりこちらにも闊歩していた悪魔の目を盗んで、裏側の関係者用出
入り口まで辿り着きました。

「日下部さん、何か見えない壁があります!」

 入り口に辿り着きましたが、外に出ることが出来ませんでした。
 ガラス扉の手前に、何か見えない壁があるのです。
 外側には、レスキュー隊とおぼしき制服の人が集まっていて、カッターを用意
してこちらのドアを開けようとしている様子でした。

「おーい!」

 外に向かって呼びかける大和。
 レスキュー隊の人達もこちらを見て騒いでいる様子でした。

「外に助けが来ています!」
「じゃあ、委員長はここで待ってて」
「日下部さん?」
「稚空達を呼んでくる!」
「それなら僕が…」
「私が行きたいの!」

 有無を言わさず、委員長に弥白達を押しつけると、まろんは都達が戦っている
競技場へと戻って行くのでした。

(第156話(その7)完)

 では、(その8)へと続きます。

--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ

 記事に対するご意見・ ご感想などがありましたら書いてやって下さい

 件名:
 名前: (ハンドル可)
 E-Mail: (書かなくても良いです)

 ご意見・ご感想記入欄