神風・愛の劇場スレッド 第156話『誤算』(その6)(11/19付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Mon, 19 Nov 2001 23:17:55 +0900
Organization: So-net
Lines: 358
Message-ID: <9tb4am$gl3$1@news01cf.so-net.ne.jp>
References: <9qu0j7$cda$1@news01cc.so-net.ne.jp>
<9rghhm$2b9$1@news01ch.so-net.ne.jp>
<9s39i4$jh$1@news01bf.so-net.ne.jp>
<9tb15m$a86$1@news01bj.so-net.ne.jp>
<9tb332$ag9$1@news01bj.so-net.ne.jp>

石崎です。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
です。そう言うのが好きな人だけに。

 hidero@po.iijnet.or.jpさんの<9qope5$1nh@infonex.infonex.co.jp>における
談合結果に基づき、前回に引き続き今週も私パートです。
 佐々木さんのファンの方には申し訳ありませんが、今暫くお付き合いの程を。

 第156話の残りの話をお送りします。
 約2800行程ありますので、(その4)〜(その8)までの5分割でお送り
します。
 この記事は、第156話(その6)です。

第156話(その1)は、<9qu0j7$cda$1@news01cc.so-net.ne.jp>
     (その2)は、<9rghhm$2b9$1@news01ch.so-net.ne.jp>
     (その3)は、<9s39i4$jh$1@news01bf.so-net.ne.jp>
     (その4)は、<9tb15m$a86$1@news01bj.so-net.ne.jp>
     (その5)は、<9tb332$ag9$1@news01bj.so-net.ne.jp>

から
よりそれぞれお読み下さい。


 前回に続いて今回も低いので、R指定をつけておきます。
 ご注意。



★神風・愛の劇場 第156話『誤算』(その6)

●桃栗町上空

「何やってんだろ、私」

 結局、待っている事が出来ずに、桃栗タワーを飛び立ったフィン。
 空中で、羽根の様子を見てみましたが、やはり何も見えませんでした。

「やっぱり行こう」

 幕引きは、やはり自分がしなくては。
 そう決意したフィンは、桃栗体育館へと飛んで行こうとしました。
 その時、フィンは何かを感じました。

「近づいて来る?」

 午前中に感じた気配。

 やはり目的地はここか。
 それも当然よね。
 一体、誰がここに遣わされたのか?
 確かめる必要がありそうね。

 そう感じると、フィンは行く先をその気配の方へと変更するのでした。


●県立桃栗体育館・地区大会会場(第1体育室)

「さぁ、ショータイムの始まりよ」

 ミストはそう宣言しました。

「お前達、こいつらを辱めておやり。生きているのが嫌になる程に」
「ひっ」
「嫌…」
「止めろ! ぐっ」

 抗議の声を上げた稚空は、ミストに踏みつけにされ、瞬時に黙らされました。
 都はぐったりとしながらも、それでも必死に耐えていました。

 ごめんね都。私、都のこと助けられなかった。
 都の心を傷つけることを恐れていたなんて嘘。
 本当は、都に嫌われるんじゃないかと思って怖かったんだ。
 だから、変身を躊躇った。
 その結果がこの様。
 本当のことを話せば、きっと都だって判ってくれたかもしれないのに。
 都を巻き込みたくないのは本音だったけど、結局、それは意味がなかった。
 自分の正体が敵に知られているのに、身近な人間には手を出さないと思う方が
どうかしてた。
 みんな私が悪いんだ。

 目を瞑り、これから訪れるであろう屈辱を待ちました。
 が、それはなかなか訪れませんでした。
 薄目を開けたまろんは少し意外な感を覚えました。
 大和も少女も弥白も行動を起こしてはいませんでした。
 今まで都を虐め続けていたまなみすら、その手を止めています。

「どうした。楽しんでも構わないと言っているのに」

 ミストが自分達の僕となったであろう大和達を焚き付けていますが、彼らは行
動を起こす気配はありません。
 首を傾げていたミストは、やがて何かに気付いた様子でした。

「そうか。これだけ人数がいると、組み合わせが問題よね」

 頬に人差し指を乗せて、少し考える風を見せたミスト。
 そして辺りを見回します。

「お前、日下部まろんと思いを遂げたいのだろう? 殺す前だ。存分に楽しむが
良い」

 大和に、ミストは言いましたが、大和は小さく頭を振りました。

「何だ。今時珍しく、責任感の強い奴だな。良いだろう。そちらと楽しむが良
い」

 ミストに言われると、大和はふらふらと都の方へと歩いて行きました。
 以前、悪魔に理性を奪われた大和に襲われた経験のあるまろんは、意外の念を
抱きますが、一昨日の夜に見た光景を思い出し、納得します。

 大和が進んで行く先、都の方を見たミストは、再びおやという顔をします。

「なんだ。お前達は何時でも良い仲だろう。判った、引き継いだら後は好きにし
ろ」

 都の所に辿り着いた大和は、まなみからリボンのスティックを受け取りました。
 そしてまなみの方は、真っ直ぐにノインの方へと歩いて行きました。

「姿は変わっても、やはり愛しい人は判るらしい。ノイン」
「はぁ」
「見ないでやるから、愛してやると良い」
「しかし」
「先生…」

 ノインの前に立ったまなみは、潤んだ目でノインを見上げました。
 そして自分から、レオタードに手を掛けて脱ぎ始めました。
 その手の上に自分の手を乗せて、止めるノイン。

「先生? 私が嫌なんですか? やっぱり、あの女が良いんですか?」

 それを聞いて、まろんはまなみが誰が好きなのかを理解しました。
 ひょっとして、私、何か勘違いをされているんじゃ…。

「そんな事はありませんよ。ただ、ここはそういう事をする場ではありません」
「でも」
「後でゆっくり、愛してあげますから。貴方まで真似をする事はありません」

 そう言うと、ノインはまなみを抱きしめました。
 そうして自分のマントでまなみを覆い隠し、外の光景を見せないようにするの
でした。

「この騎士気取りが」
「人の趣味をとやかく言われたくありません」
「まぁ良い」

 そう言うと、今度はまろんの方に向き直ったミスト。

「今すぐ殺しても良いが…。そうだ、冥土の土産とやらに、最後に良い思いをさ
せてやろうかしらね」

 そう呟くと、足元で踏みつけにしていたままだった稚空に声をかけました。

「どうだ名古屋稚空。日下部まろんとはまだ清い関係のままなんだろう? 経験
とやらをさせてやろうじゃない。今、ここで」
「馬鹿な」
「お前がやらなくても、誰かが他にやるさ」

 軽く跳躍して、まろんの前に立ったミストは、まろんの身体を手でなぞりまし
た。
 まろんの身体中に走る悪寒。
 まろんは、ロープの競技の後でパッキャラマオ先生に触られたときのことを思
い出しました。そうか、あの時に先生はもう…。

「どうする? 名古屋稚空。何ならあたしが頂いちゃおうかな…」
「ま、待て!」
「なら、可哀想なまろんを愛してあげるのね」
「う…」

 ミストが指を鳴らすと、まろんの足を縛っていたリボンが解けました。
 まろんの肩に手を置いて、連れて行こうとするミスト。
 だがしかし。

「ぐぅっ!」

 首のリボンが、急に締め上げられ、まろんは気が遠くなりました。

「あら何? 全く、しょうが無い娘ね。一途なんだから。良いわ。行きなさい」

 ミストがそう言うと、リボンが緩められました。
 そして、弥白はリボンをミストに預けると、稚空の方へと歩いて行きました。

「弥白」
「稚空さん…こんなにされて、可哀想に」

 稚空の横で弥白は四つん這いとなって彼を見下ろしていました。

「弥白が、慰めてあげます」

 そう言うなり、弥白は稚空の顔に自分の顔を重ねました。
 それを見まいと、まろんは顔を背けました。

「どうした。そんな珍しいものでもあるまい」
「……」
「ほほう。思ったより大胆だな、あのお嬢様」

 稚空と弥白が触れ合う音が、こちらまで微かに聞こえてきました。
 目を背けていたので、何が起きているのかは判りませんでした。
 判りたくもありませんでした。
 また私、裏切られるんだ。
 やっぱり、稚空は私の事なんて、大勢の中の一人なんだ。
 やっぱり私…。

「一人じゃ無いわ」
「え?」
「日下部さんには、私がいるじゃない」

 聞き慣れた声。
 目を開けると、真っ先に入って来たのは黒い衣装。
 ブロンドの髪。
 白い肌。

「ツグミさん?」
「そう」

 まさか。
 ツグミさんがここに居る訳ない。
 きっとこれは幻。
 ミストの見せる幻影なんだ。

「嘘…。ミストなんでしょう?」
「嫌ね。私の事が判らないの?」

 まろんの全身を舐めるように触るツグミの形をした何か。
 まろんが何を着ているのかを確かめるように。

「そっか。今、新体操の大会中なのね。でも、前に着てくれたのと違う手触り。
大会用にまた、新調したんだ」

 二人しか知らない筈の事を言っていました。
 きっと、覗いていたんだ。いやらしい。

「ボロボロになっちゃって。服が可哀想」

 気が付くと、リボンの所為でボロボロになり、袖が取れてしまったジャージが
脱がされて、ぱさりと音を立てて床に落ちました。

「違う…」
「レオタード越しに触れる日下部さんも素敵」
「違う…。こんなのツグミさんじゃない」

 そう口では言いながら、その何かと触れ合う自分の身体は、紛れもなく目の前
にいるのがツグミだと告げていました。

「暫く会えなくて、寂しかったでしょう?」
「嫌…」

 いつの間にかリボンが緩み、身体がかなり動かせるようになっていました。
 それでも、両手はしっかりと縛られていたのですが。
 ツグミとしか思えない手が、唇がまろんの身体を這う度に、まろんの膝はがく
がくと震えます。
 ついに立って居られなくなったまろんは、ツグミの形をした何かに導かれるま
ま、冷たい床面へと横たわるのでした。



「委員長…」

 まなみの代わりにリボンを手にした大和。
 その瞬間、リボンの蠢動は止みました。
 都の太股の間から、だらりと垂れ下がるリボン。
 ほっとして、都は膝をつきました。
 しかし、安心するのはまだ早かったのです。

「東大寺さん…」
「嫌!」

 解放されるのかと思ったのもつかの間、今度は大和が都の身体に触れて来まし
た。
 大和に押され、床面に押し倒される都。

「委員長! あんたまろんの事が好きだったんじゃないの?」
「日下部さんのことも好きですけど…。彼女には別に好きな人がいますから」
「まろんが駄目だったら私なワケ? そんないい加減な」
「いい加減な気持ちじゃありません! だって、僕は…」

 その先を大和は言う事はしませんでした。
 代わりに、都の身体に顔を埋めて来ました。

「嫌…嫌…」

 あの委員長がこんなことをするなんて。
 これは悪い夢なのよ。
 そう、都は信じようとしました。
 しかし、身体から感じる感覚は現実としか思えませんでした。

「あぁ…」

 頭の上の方からまろんの声が聞こえました。
 大和に覆い被さられたままの都は、頭を後ろに向けてまろんの姿を求めました。
 上下逆になった視界。
 その最上部の近くで都は見ました。
 まろんと盲目の少女が絡み合う姿を。

「まろん…」

 都の目から、涙が溢れて止まりませんでした。


●桃栗町上空

「気配が段々強まっているようですよ」
「ですですっ。私も感じましたわ」

 桃栗町上空に新たな訪問者がありました。
 彼らも又、人外の存在。
 その名をトキとセルシアと言います。
 アクセスとフィンの親友であるが故に、地上界へと派遣されて来たのです。
 本当は、それだけが原因では無いのですが。

「トキが軌道計算を間違えるから、到着が遅れてしまったですですっ」
「いい加減な地図しか持っていなかったセルシアが悪いんでしょう」
「セルシアは悪くないですですっ。この島の地図に間違いありません!」

 セルシアは、文字通り胸を張りました。
 しかし、トキも負けてはいませんでした。

「こんな地図、役には立ちませんよ」

 地図を広げて見せるトキ。
 そこには、この国の全図が記されていて、その中の一点に、黒丸印がつけられ
ているのでした。



「トキとセルシアだったのか」

 遠くからこの様子を見ていたフィン。
 フィン達天使には、空間を越えて物を見通す力はありませんが、見通しが利く
限り遠くの物を見る能力はありました。
 それは宇宙を駆ける必要から、神から与えられた能力。

「しかしそれにしても」

 相変わらずドジなんだから、セルシアは。
 クスリと笑うと、フィンは海の方角に向かって飛んで行きました。
 その先には、桃栗体育館がありました。



「この辺り、小さいけど悪魔の気配が沢山いますですですっ」
「恐らくはフィンが魔界から連れて来たという悪魔達でしょう」
「放置しておくと、大変なことになりますわっ」
「恐らく、アクセス達では対処仕切れないのだろう」
「では私達は」
「うん。しかしその前に、アクセスに会わないと」
「あ…向こうに光が」

 それは、天使達の間だけで使われる信号のようなものでした。
 きっと、あれは自分達が来る事を察知したアクセスが、合図を送っているに違
いない。
 そう肯き合った二人の準天使は、その方角へと進路を変えるのでした。

(第156話(その6)完)

 では、(その7)へと続きます。

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