神風・愛の劇場スレッド 第140話『贈り物』(後編)(8/20付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Mon, 20 Aug 2001 15:19:15 +0900
Organization: So-net
Lines: 269
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石崎です。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
です。そう言うのが好きな方だけに。

 長さの関係でフォロー記事+第140話前半と後半の2分割記事にしました。
 こちらは第140話後編です。

 フォロー&前編は、<9lq8qt$5u5$1@news01ci.so-net.ne.jp>からどうぞ。


★神風・愛の劇場 第140話『贈り物』(後編)

●オルレアン・ミストの隠れ家

 ミストの住処にフィンが現れたのは、また日が高く昇っている時刻。
 姿が見えないとは言え、空間跳躍の術を使えない堕天使にとって、行動するに
はリスクが伴う筈でしたが、神の力を持つ二人が学校に行って留守であるこの時
刻の方が、却ってリスクは少ないのもまた事実でした。

 フィンが鍵の掛かっていないベランダの窓から部屋の中に入った時、ミストは
空中に浮かんで寝ている様子でした。
 ソファにはアキコが所在なげに座っていて、足元には黒い塊が有りました。

 反応が無いアキコを無視し、勝手に上座に当たるソファに腰を下ろしたフィン。
 まろんとうり二つの外観を持つアキコが側にいると、どうも落ち着かないので
すが、さりとて追い出すのも気が引けるのでした。

 寝ているミストを叩き起こしても良かったのですが、敢えてフィンは待ちまし
た。
 今日はそうする必要があったのでした。
 ややあって、ミストは目を覚ましました。

「こんな時間に何の用かしら?」
「今日は、頼みがあるの」
「頼み?」

 フィンは、自分の羽根を2本、自ら引き抜きました。

「以前やって貰った術をこの羽根にも」
「成る程ね。別にそれは構わないけど、こちらから聞いても良いかしら」
「何よ」
「『天使の羽根』を『刑事の娘』と『犬娘』に渡すとは、一体どういう積も
り?」
「知れたこと。手駒の居場所を把握するためよ」
「どうだかね。本当は別の意図があるんじゃないの?」
「別の意図?」
「人間の駒に情が移ったのでは無いか、と言うことですよ」

 フィンの後ろから、いつの間にか現れたノインが声をかけました。
 正確には、人間としての姿をしていたのですが。

「そんな事、ある訳無いじゃない!」

 それはあんたの方じゃない。
 そうもフィンは言ってやりたかったのですが、堪えました。

「しかし、クイーンの行動はその疑念を抱かせるに足るものです」
「何よ、『天使の羽根』の加護など、あんた達の力を持ってすれば取るに足らな
い物。それより、得られる情報の方が大切な筈。違うかしら?」
「ならば良いのですが」
「ま、これから行動で示してくれるのよね。クイーンは」

 嫌味たっぷりな口調で言われ、激怒しかけたフィンでしたが、頼み事をしてい
る最中だった事を思い出し、思いとどまりました。

「そう言えば、ノインに聞いたのだけど新しい作戦を考えているようね」
「まぁね。細かい作戦は、ノインが考えるらしいわよ」
「言い出しっぺは貴方でしょう」
「喧嘩は私の見ていない場所でお願い」

 フィンが言うと、二人は黙りました。

「それで? 作戦は決まったの?」
「はい。実は今日ここに来たのは、それを説明するためなのです」


●オルレアン・稚空の部屋

 昼間眠り続けたため、稚空が眠りにつく時刻になっても、アクセスは目が冴え
て眠ることが出来ませんでした。
 眠るのは諦め、リビングの窓から外を眺めていると、自分の同族がこちらに向
かって近づいてくるのを感じました。
 人間界のこの地域で、アクセスの同族と言えば彼女以外に考えられません。
 アクセスの表情は一気に明るくなりました。

 アクセスのために少しだけ開けてあるリビングの窓から外に出ようとして、思
い止まってカーテンの影に隠れました。
 聖気を消耗したアクセスは、本来の姿を維持出来ないでいたのですが、こうい
う場合には却って好都合でした。
 それでもアクセスの気配を消す事は出来ないのですが、気配だけで正確な位置
を掴むことも出来ない筈でした。

 彼女がベランダに降り立った時、アクセスはカーテンから出て声をかけました。

「よっ、フィンちゃん」
「あ、アクセス!」
「フィンちゃんの方から来てくれて、丁度良かった」
「何よ」
「あのさ、話…あるんだけど」
「話?」

 アクセスはすぐには話を始めずに、まず深呼吸をし、そうしてから、口を開き
ました。

「俺、天界で神様に謁見した」
「あらそうなの。てっきり又何かドジでも踏んだかと思ったのに」
「実は呼び出された理由はそれだったんだけど」
「何やったのよ」
「失われるべき筈だった人間の命を助けた」

 そう言うと、フィンの表情が凍り付いたのがアクセスからも判りました。

「何よそれ! 最大の禁忌じゃない! 良く戻って来られたわね」
「天界にも色々と事情があってね。大目に見て貰えた」
「事情ねぇ。それで、神様に謁見ってまさか…」
「ああ。『祝福』も受けた」
「そ、そうなの。おめでとうと言っておくわ」

 フィンも『祝福』を受けた筈なので、その意味する所は判っている筈でした。

「それで、神様からフィンちゃんへの言伝を頼まれた」
「神が私に今更何を」
「『フィンの本当の気持ちに気付かず、すまなかった』と」
「……」
「そしてこうも言われた。『フィンの居場所は残してあるから戻って来て欲し
い』と」
「……」
「フィンちゃんが天界を裏切った理由。俺にも判った気がする。でもフィンちゃ
ん、聞いてくれ。神様は本当は…」
「聞きたくない!」

 両手で耳を塞ぎ、フィンは叫びました。

「アクセスの言いたい事が判らない訳じゃないの。でも、今の私は魔王様に仕え
る者。裏切ることは出来ないわ」
「どうしてだよ! どうして魔王なんかに…」
「知ってしまったから。魔王様のことを。神…神様の事、あの時はショックだっ
たけど、今ならば理解出来る。神様の事、恨んでいる訳では無いわ。今度天界に
行く事があったなら、それを伝えて欲しいの」
「魔王の何を知ったって言うんだよ!」
「それは…ご免なさい。話す事は出来ない」
「どうして!?」
「アクセスをこれ以上巻き込みたくないから」
「もう十分巻き込まれているさ」
「堕天使の数をこれ以上増やすつもりは無いから」
「それって…わ!」

 なおも食い下がろうとするアクセスの翼をフィンは掴みました。

「何すんだよ! 離せ! ん…」

 抗議しようとするアクセスを己が顔の前に近づけると、フィンはその唇を自分
の唇で塞ぎました。

「フィンちゃん…」

 唇と唇が離れると、フィンは摘んでいたアクセスの翼を放し、自由にしてやり
ました。

「ねぇアクセス。今日が何の日だか、知ってるよね」
「え? ひょっとして…」

 フィンは、服の中にしまってあった小さな包みを取り出しました。

「はい、これ」
「俺に?」
「本命じゃ無いからね。一応断っておくと」
「ちぇ、義理かよ…。確かにこんなに小さいもんな」
「今の大きさなら、この位で丁度良いかと思って」
「それもそうだな。ありがとうフィンちゃん。ホワイトデーには、ちゃんとお返
しをするからさ」
「そんなの気にしないで」
「俺の気持ちだから。そうだ! フィンちゃん、約束して欲しい。1ヶ月後の今
日、また会ってくれるよね。今日のお返しをしたいんだ」
「……良いわよ。約束する」

 フィンは、笑顔を向けてアクセスに肯きました。

「良かった」
「それじゃあ、私はそろそろ行くから」
「まろんの所に寄っていかないのか?」
「なんであんな奴の所に行かなくちゃいけないのよ」
「きっとまろんの事だから、フィンの分のチョコも用意しているんじゃないか
な」
「女同士よ?」
「まろんに性別は関係無いからな」

 フィンは少し考えている様子でしたが、すぐに結論を出しました。

「止めておくわ。行くと、また玩具にされてしまいそうで」
「違いない」

 お互いに笑顔を向ける二人。
 やがて、フィンは翼を広げて空中に浮かびました。

「アクセス」
「何?」
「私はもう、貴方とは一緒の道を歩むことは出来ないけれど、貴方の事、嫌いに
なった訳では無いから」
「フィンちゃん」
「今日はそれを言いたかったの。さよなら、アクセス」
「あ…」

 そう言い残すと、アクセスが何かを言う前にフィンは闇の中へと飛び去って行
くのでした。

「約束…したからな」

 フィンの最後の言葉が、まるで永遠の別れのように聞こえてしまったアクセス
は、それを打ち消すかのようにそう呟くのでした。


●魔界

「…以上が作戦の概要です」

 新たな作戦について説明する為、ノインは魔界を訪れていました。
 魔王の前で巻紙を広げてそれを読み上げると、それを再び丸めて魔王に恭しく
差し出しました。

「ご苦労だったノイン。…そろそろ本題に入ったらどうだ?」
「今のが本題ですが」
「私が何も知らないと思っている訳でもあるまい」
「は…」

 恐縮したノインは、ポケットの中から包みを二つ、取り出しました。

「本来ならば人間界の暦で昨日渡すべき物なのですが」
「ノインも忙しかっただろうからな。昼も夜も」

 お前が昨晩何をしていたか知っている。
 言外にそう言われ、ノインはますます恐縮しました。

 魔王の前にある小さなテーブルに置かれた二つの包み。
 その一つを開けると、かわいらしい形をした小さなチョコレートが幾つか入っ
ていました。その中の一つを魔王は手に取って口にしました。

「これは、フィンが作ったものだな」
「御意」
「そしてこちらは…」

 黒い布に包まれたそれを縛った紐を開けると、出て来たのは色とりどりの髑髏
の形をしたキャンディーなのでした。
 魔王はそれも一つ、口にしました。

「これはミストの…?」
「はい。ミストの身体から分離した代物だと思います」
「これが無ければ器を維持できないと言うのに、無理をする」
「それだけ魔王の事を大切に思っているという事なのでしょう」
「あれは、正統悪魔族の中でも変わり者だからな」
「どういう事なのです?」
「正統悪魔族は本来『愛』という感情は抱かない筈なのだ。私と同じ様に」
「ミストも愛を毛嫌いしている風に見えますが」
「自分がそういう感情を抱いている事を認めたく無いだけなのだろう」

 それは貴方も同じなのでは?
 そう心の中でノインは呟きましたが、もちろんそれを口にする事はしませんで
した。

(第140話(後編) 完)

 2月14日のフィンちゃんの夜まででした(魔王様の部分だけ15日)。
 某所にてお聞きした、封印されている話と整合性が取れていると良いのですが。

 では、また。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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