神風・愛の劇場スレッド 第140話『贈り物』(前編)(8/20付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Mon, 20 Aug 2001 14:56:40 +0900
Organization: So-net
Lines: 417
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石崎です。

#某F氏の記事のフォロー記事がなかなか出来上がらない(汗)。

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<9kdl9n$fa3@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

 こんにちわ〜。
 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
です。そう言うのが好きな方だけに。

 長さの関係でフォロー記事+前半、後半の2分割記事にしました。
 こちらはフォロー記事+前編です。



>>> >>> >>> ★神風・愛の劇場 第134話『配慮』
>
>当面の目標はC61の頃までに本編は完結して冬休みに最後の番外編で締め。

 取り敢えず200話位までには終わせようとは思っています(笑)。

>>> >★神風・愛の劇場 第137話 『意図』
>
>非道ぃ事考えてますね。^^;

 その為の伏線ですから(笑)。

>取りあえず独占欲は無いみたいです。

 独占欲も無い代わり、一人に操を立てなかったりもして(嘘)。

>>> ★神風・愛の劇場 第138話『ついで』
>
>全くんがツグミさんに出合ってオロオロしているのはノインに会わなくて
>いいと言われた事を意識しての事なのでしょうけど、会うなと厳命されて
>いるかの様な反応が微笑ましいです。

 会うなと厳命されているからと言うのもありますが、全君自身、自分がツグミ
さんの家でしていた事に若干の罪悪感を感じていたということもあります。
 しかし、ツグミさんが全く気にしていない風でしたので、元の全君の態度に戻
ったと。

>そして全くんの素直な反応にまたしてもアタフタするツグミさん。(笑)
># 子供の相手は実はあまり得意では無いらしい。

 何と言うか、このショタカップリングを書いていると楽しくて(笑)。

>しかしながら神楽の発言はそ〜と〜鈍い人でも気付きそうなくらい
>単刀直入なのですが、弥白様にとって身近な存在であり過ぎて
>判らないのでしょうね。

 ラブコメではお約束のパターンです(笑)。

># がっかりした直後だから良く効く。(笑)
># わざとじゃ無いでしょうし、天然? ^^;;;

 実はチョコ後渡しはわざとの積もりで書いてました。
 どうせ渡すなら、喜んで欲しいじゃないですか。
 最初に渡してから次に頼み事よりは、その逆の方が相手に印象に残して貰える
かと。

>★神風・愛の劇場 第139話 『駆ける』

 最近顔の設定が出来た(謎)、桐嶋まなみちゃんのバレンタイン話ですか。
 考えないでも無かったのですが、既に聖先生が学校でチョコをてんこ盛りで貰
っている描写があったので、何となく学校で渡していたのかと想像していました。

 ノインの屋敷の周りには結界が張ってあるという描写は以前から何度かありま
したが、まなみちゃんの場合、呼んだ時だけ結界を通り抜けられるようにしてい
たのでしょうね。

#一度、留守中に訪れていた描写がありましたが、多分その時も予め呼んであっ
たのでしょう。

 あれだけ女子生徒に人気のある先生の事ですから、別に二人切りで無くとも学
校で堂々と渡しても別に良いのでしょうけど、それをしなかったのはやっぱり後
ろめたさというものが彼女にはあるのでしょう。
 今回もしっかりと描写されているように、行き着く所まで行き着いている様子
(笑)の二人ですが、まなみちゃんの様子からすると聖センセが本当に自分を愛
してくれているのかどうか、本当は不安で堪らない風に見えるのが可愛い。
 聖センセの方がどれだけ彼女を愛しているのかが謎なのですが。

 それからまなみちゃんが聖センセの家に辿り着いたのは、結界が弱まっていた
からでは無く、悪魔との肉体的接触(爆)により、まなみちゃんがより悪魔に近
い体質に変化していっているという事を現しているのでしょうか。

 では、本編に続きます。


★神風・愛の劇場 第140話『贈り物』(前編)

●桃栗町郊外 ツグミの家

「ゴメンツグミさん。今日から大会までずっと朝練なんだ」

 その日の朝、朝食も食べずに慌ただしくまろんはツグミの家を出て行きました。
 そのまま登校出来る支度を整えているのは知っていたので、わざわざ自宅に戻
る必要は無いだろうとは思いましたが、敢えて何も聞きませんでした。
 その代わり、海風の音の間から聞こえるまろんの足音がツグミの耳にすら届か
なくなってからツグミは呟きます。

「気を使う相手が多いと大変ね」

 まろんが出て行ったのは、まだ夜明け前の時刻。
 そのまま寝直そうとも思いましたが、結局そのまま起きていました。
 暫くリビングでぼんやりとしていると、外に聞き覚えのある羽根の音が聞こえ
ました。
 それに気付くと、ツグミはリビングの窓を開けました。

「おはよう、フィン」

 返事が無かったので、もう一度呼びかけました。
 今度はもう少し大きな声で。
 すると今度は返事がありました。

「やっぱりばれちゃったか。叶わないわね」

 そう言うと、フィンはツグミのいる側にふわりと降り立ちました。

「朝食、一緒に如何? ちょっと早いけど、お腹空いちゃった」
「気を使わなくて良いわよ」
「一人きりより二人の方が食事は美味しいから。それに、材料も余ってるし」

 ツグミがそう勧めると、フィンも黙って肯くのでした。



 ツグミが手際良く用意した朝食は和食でしたが、作ってからある事に気付きま
した。

「(天使ってお箸、使えるのかしら…)」

 この前も普通に食べていたから大丈夫だろう。
 そう思ってそのまま出すと、フィンは普通に箸を使って食べている様子で、ツ
グミはほっと胸を撫で下ろすのでした。

「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
「美味しかったわよ。和食は久しぶりだったし」
「口に合うのか、心配だったのだけど」
「どうして?」
「天使と和食って何となく合わない気がして」
「そんな事無いわよ。アクセスも…」
「え?」

 少し驚いた口調でツグミが聞き返すと、フィンは慌てて口を噤みました。
 稚空と行動を共にする天使アクセスの事は、何度か会った事があるのでツグミ
は知っています。
 同じ天使なのだから、知り合いでも不思議では無いとは感じましたが、フィン
が話そうとしないので、自分からも聞こうとはしないのでした。

 何事も包み隠さず話そうと誓い合ったまろん。
 しかし、フィンとの関係だけはまろんには話していませんでした。
 それがツグミとフィンとの間でかわした約束であったからです。

 不思議な事に、悪魔との戦いの事を包み隠さず話してくれている筈のまろんで
さえ、フィンの事は何故か話そうとはしませんでした。
 それらしき存在については何度か話してくれたのですが、何故かフィンの固有
名詞だけは慎重に避けているのが、事情を知ったツグミには判ります。

 フィンがまろんの事を知っているように、まろんもフィンの事を知っている筈。
 ツグミはそう確信していましたが、まろんから話してくれるまでは、こちらも
知らない振りをする事にしていたのでした。

「不思議よね」
「何が?」
「こうして天使とお茶をしているなんて」

 食事の後で、二人はリビングに移動してお茶にしました。

「普通は人間と私達天使がこうして話す事は無いでしょうね」
「でもこうして話してみると、天使ってまるで人間と変わらない気がする」
「当たり前よ。だって、私達は元々人間なのだから」
「え?」
「寿命を全うせずに、美しい心を残したまま死んだ人間のなれの果てが私達」
「それじゃあフィンも昔は人間だったのね」
「ええ。でも、人間の頃の記憶は無いのだけれど」
「じゃあ天使って、幽霊みたいなものなの?」
「違うわよ。ちゃんと実体がある。貴方も知ってるでしょう?」
「じゃあ天使の国で生まれ変わったんだ」
「そうね。それよりは『創られた』という方がより適切なのかも」
「創られた?」
「ご免なさい。ここから先は、人間の貴方には話さない方が良いと思うの」
「どうして?」
「本当は、私達の正体を人間に明かすことすらいけない事なのよ」
「判ったわ。もう聞かない」
「有り難う」

 フィンはそう言うと、残りの紅茶を一気に飲み干しました。

「あ! そうだ」

 ツグミは、肝心な事を思い出し、立ち上がりました。

「何?」
「フィンに、渡したい物があるの。待ってて」

 そう言ってダイニングに消えたツグミは、手にリボンがかけられた包みを持っ
て戻って来ました。

「はい、これ」
「私は一応これでも女なのだけど?」
「良いから、受け取って。フィンの分も用意してあったんだから」

 そう即されると、フィンは受け取りました。

「良かった。バレンタインデーを知っていて」
「知識としては天界でも知られているわ。人間界の一部でチョコを贈る事も含め
てね。それに、一部では実際に行われてもいる」
「そうなの?」
「人間としての記憶がそうさせるのかも」
「それで、フィンはどうだったの?」
「私は…」
「誰かにあげた事、ある?」
「あると言えばあるのだけど…」
「フィンにも好きな人が居るのね。…あ、天使だっけ」
「ま、まぁね」

 フィンは一度、ツグミに触れられただけで自分に好きな者が居る事を見抜かれ
た事があります。
 その時は、直後に術でツグミの記憶を消していたのですが、その記憶が蘇った
のかと思い一瞬ドキリとしたのですが、どうやらそうでは無さそうでした。

「今年はどうするの?」
「そんな事考えてる余裕、無かったな。それに…」
「そっか。ここはフィンの住む世界じゃないもんね」

 ツグミがそう言うと、その場を暫く沈黙が支配しました。
 故郷の事を思い出させてしまっただろうか。
 そう思い、フィンに謝ろうとしたツグミでしたが、その前にフィンが口を開き
ました。

「ねぇ、ツグミに頼みがあるのだけど」
「何?」
「チョコレート、余っていたら分けてくれないかな。それとキッチンも貸して欲
しいのだけど」
「え…?」
「今からじゃもう今日中には届けられないだろうけど、その…」

 ツグミからはフィンの表情は当然ながら良く判らないのですが、きっと顔を赤
らめているのだろうな。そう想像しました。

「判ったわ。でも、チョコレートの材料が無いのよね。買って来ないと」

 昨日まろんとチョコレート作りをした時に、まろんが使い過ぎたためにチョコ
レートが残っていなかったのでした。

「あ…それはツグミに悪いわ。でも困ったな。私、今お金を持っていないの」
「え? 大丈夫なの?」
「平気よ。天使は食べなくても生きていけるし、ま、ちょっと寝る場所に困るけ
ど」
「ちょっと待って。それじゃあお風呂とか、どうしてるの?」
「大丈夫。まろ…じゃなくて、公園の池で水浴びしてるから。服もちゃんと洗っ
てるし」

 まろんの名前が何故か出て来た事をツグミは聞き逃しませんでした。
 まろんを助けるために天界に来たと言い、ツグミに近づいてきたフィンですか
ら、まろんが留守の時には彼女の部屋を勝手に使っているのだろうかと一瞬想像
しましたが、追求はしない事にしました。

「公園の池? そんな所で大丈夫なの?」
「普通の人間には見えないから大丈夫よ。それに人の居ない時を見計らってる
し」

 天使が普段どういう生活をしているかについて、ツグミは深く考えた事はあり
ませんでした。しかし、フィンの言う通り天使が人間の生まれ変わりであるとす
るのならば、生きていくのに問題は無いとは言え、決して今の生活が心地よいも
のでは無い筈です。
 そうと判ったならば。

「判ったわ。材料は少しくらいなら何とかするわ。それと、お風呂を沸かすから
入って行って。残り湯で悪いのだけど」
「別にそこまでして貰わなくても良いわよ」
「でも、少し臭うわよ」
「え? そうかな?」

 思わず、腕を鼻に近づけて臭いをかぐフィンの様子に、クスリと笑うツグミで
した。



 お風呂を沸かし直し、フィンを無理矢理浴室に連れて行きました。
 一緒にお風呂に入ろうとしたツグミですが、フィンが嫌がったので、無理強い
はしませんでした。
 お風呂から出て来たフィンにリビングで休んで貰っている間に、ツグミはキッ
チンに入りチョコ作りの準備に取りかかりました。

「日下部さん…ごめん!」

 チョコの前で両手を合わせた後でツグミは包丁を手にしました。
 冷蔵庫から巨大なハート型のチョコレートを取り出したツグミは、ハート型を
壊さないようにチョコレートを縦に立て、チョコを慎重に半分ほど包丁で切りま
した。
 こんなに大きいの、一人で食べ切れる物では無いわよね。
 そう心の中で言い訳をしながら。
 まろんがツグミの為に作ったハート型チョコレートは、縦に立てられる程分厚
い代物なのでした。

 削った後のチョコは、包装し直して冷蔵庫の中にもう一度しまい、切り取った
方を小さい包丁で細かく刻みました。
 本当は一から十までフィンに作らせて上げたかったのですが、証拠隠滅のため
には仕方がありません。
 ついでに調理器具まで用意してから、フィンをキッチンに呼び入れました。

「フィンは手作りチョコレート、作った事あるの?」
「まぁ、見てなさい。あ、もうチョコ刻んであるんだ」
「ごめんなさい。余計な手出しだったよね」
「ううん。気にしないで。あ、温度計ある?」
「はい、これ。温度を読み上げてくれるのよ。それとお湯はそこのを冷まして」
「至れり尽くせりね」

 本当は手を出すつもりは無かったのですが、結局二人で作るような形になりま
した。
 まろんがツグミに渡したチョコは、どう考えても二人分はあり、削った分だけ
で一人分だけならば何とかなりそうでしたが、やはり少し物足りなく感じられま
した。
 それでフィンはツグミに謝って自分が貰ったチョコも材料に加えました。

 マニュアル通りにテンパリングしたチョコをツグミが用意した小さな型にコル
ネから流し込んで冷蔵庫に入れ、冷やし固める事15分。
 小さくかわいらしいチョコが幾つも出来上がりました。

「完成ね」
「それと…」
「ラッピングの材料なら、あるわよ」
「何から何まですまないわね」

 ラッピングまで済ませ、二人はリビングでお茶をしながら休憩しました。

「本当に今日は有り難う」
「恋する乙女の願いは断れないわ」
「…乙女じゃ無いけどね」

 小さい声でフィンが呟いたのをツグミは聞き逃しませんでした。

「え?」
「あ、気にしないで。独り言だから」
「二人に贈るんだ」
「まぁね」
「こっちが本命でこっちは義理?」
「本命は…そうね。でも、こっちが義理って訳でも無いわよ」
「こんなに小さいのに?」
「彼には、これ位で丁度良いのよ。どうせ他からも貰っているだろうし」

 フィンの思い人。小さい方の送り先は何となく想像できましたが、大きい方の
贈り先は想像も出来ませんでした。
 暫く二人は黙って紅茶を飲んでいましたが、今度はツグミの方が口を開きまし
た。

「ねぇ、フィン」
「何?」
「私の事、今日みたいにずっと見ていたの?」
「それは…」
「日下部さんが言うには、私は誰かに命を狙われているんだって」

 フィンが息を飲む様子がツグミには判りました。

「この前、全君の事を気をつけろって言ったわよね」
「確かに言ったけど、それは…」
「ひょっとしてフィンは、私の事を心配して守ってくれているの?」
「え…」
「日下部さんからも、神様と悪魔の戦いとか聞かされたけど、私には良く判らな
い。日下部さんはたった一人で戦っている訳では無いけれど、それでもきっと辛
い戦いなんだろうなって思う。出来る事なら私も日下部さんを手伝いたい。でも、
私には何の力も無い。それだけじゃないわ。私、日下部さんの弱点になっている
のでは無いかと思って…」
「そんな事無いわよ。ツグミはまろんの心の支えになっている。それで十分じゃ
ない」
「でも…」

 暫く、フィンは考え込んでいる様子でした。

「ごめんツグミ。私達の戦いに巻き込んで」
「フィンは気にしないで。お陰で私も救われた部分もあるのだから」
「お詫びにもならないけど、これをあげる。受け取って」

 そう言うと、フィンはツグミに何かを手渡しました。

「羽根? ひょっとしてフィンの?」
「そうよ。天使の力が込められているから、貴方を守ってくれる筈。お守りだと
思って」
「良いの?」
「これは今日のお礼も兼ねているから、遠慮せず受け取って」
「判ったわ」

 ツグミが肯くと、フィンは立ち上がりました。

「それじゃあ、私はそろそろ行くわ」
「もっとゆっくりして行けば良いのに」
「あら? ツグミもチョコを渡す相手が居るんじゃ無いの?」
「え…?」
「冷蔵庫の中に、包みが二つ入っていたのが見えたけど」
「あ、バレたか」
「誰に渡すの?」
「フィンが誰に渡すのか教えてくれたなら」
「…なら聞かない事にするわ」

 フィンは冷蔵庫に入れてあった包みを二つ手にすると、外に出て羽根を広げ、
空中に浮かび上がると、下のツグミに声をかけました。

「その『羽根』なのだけど、決してまろんには見せないで。ううん、ツグミ以外
の誰にも絶対に見せちゃ駄目」
「どうして?」
「それは本来、人間が持っている筈は無いものだからよ」
「そんな物をどうして私に!?」

 答は、ありませんでした。
 フィンはそのまま飛び去ってしまったらしく、聞こえてくるのは崖の下に打ち
寄せる波の音ばかりなのでした。

(第140話(前編) 完)

 では、後編へと続きます。

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